カピパラです。
俺は昔「ラヂオ」と呼ばれていた。
物心ついた頃から親はいないし、北との戦闘に明け暮れていた。
最初は無線係だったからラヂオと呼ばれた。
それが俺の名だ。
北とロスケは手を組んで南を滅ぼした。
北は毎日、最新兵器で攻撃してくる。
主に人造の鳥を使って、群れを成してやって来る。
鳥の群れは立体的な編隊となり、悪魔のような姿になり両手を前に出して飛んでくる。
恐ろしい形相だ。
俺たちに恐怖を与えるためにこんな演出をするのだろう。
マントがはためく姿まで細かく表現する。
この鳥の群れは、地方によって呼び方が違う。
ゴア
ガオ
カジュ
俺たちのところはヨミだ。
黄泉の国の使者から連想したそうだ。
大量に爆弾を投下して、街を破壊していく。
帰り際に「クワックワックワッ」と啼いているのか、笑っているのかわからない奇声を上げていく。
一番怖い鳥は流言飛語鳥だ。
音もたてずにホバリングして、人々の話に耳を澄ませ、流言飛語を飛ばす。
これで多くの人々が争って、自ら殺戮し、自滅していった。
俺の街はあらかた荒廃しているのだが、俺は「巡ら」というか、見回りを言い渡された。
あらかた爆撃で崩壊したビルの2階に「勾玉屋」という雑貨屋があり、そこでとても美しい少女がいつもちょこんと座って、キルティングっていうのか?そのようなものとかアクセサリを作っていた。
いったい誰が買っていくのだろう?
俺はしょっちゅう見回りと称してその女の子を見に行った。
俺は、正直言って女というものを見たことがないから、女の子があまりにもきれいなので胸が高鳴った。
しかし、話しかける勇気はなかった。
ちらっと見て帰った。
俺は軍需品のキャラメルとかドロップ、稀にはバナナという珍味まで、その子の庇護者になっているビルのオーナーの爺さんに届けた。
その爺さんは「つけ汁屋」といった。
本業は魚の干物をつけ汁につけて作る人らしい。
あの女の子は「おひちゃ」というらしい。
差し詰め屋号が「勾玉屋」だから「勾玉屋おひちゃ」だな。
可愛らしい名前だ。
「つけ汁屋」いわく
「おひちゃは、幼い頃両親を北の爆撃で亡くし、私が育ての親となっているのですよ。」
「おひちゃは、あの通りほとんどものを言いませんが、それはそれは気立ての良い、優しい子なんです。」
とまるでお辞儀するように言ったから、俺も「はあそうですか。」とお辞儀してしまってから、自分のしぐさがあまりにも間抜けで、あれま?と思ってしまった。
おひちゃは14歳だという。
俺は19歳だ。
妹がいたが俺が9歳の時、病死した。
おひちゃは、妹が生きていたら同い年だ
ある日、北がとんでもない兵器を仕掛けてきた。
人口津波発生機である。
街は津波を検知して、あっちこっちでサイレンが鳴った。
俺の街は、以前自然災害の津波でやられているのでどの家でも筏が設置してあった。
俺はおひちゃのところに飛んで行った。
おひちゃが死んだら、俺も死ぬつもりだった。
俺は筏を止めている金具を外し、準備しておひちゃを載せた。
つけ汁屋はどこかに行ってしまったから、この緊急時、仕方がない。
もう大波が迫っている。
俺はおひちゃに、
「俺はラヂオという。お前を助けに来た。俺のことを知ってるか?」
おひちゃは、
「はい。知っています。」といった。
あたりの家はみるみる沈んだ。
俺とおひちゃは急流にのまれた。
木材とかいろんな残骸が押し寄せてきた。
それらは俺たちを傷つけず、俺たち押していった。
しかし、俺たちは長く持たないだろう。
いずれそういったものにのみ込まれる。
俺とおひちゃは絡み合って抱き合ったまま、お互いの顔を見つめ合った。
俺は思わず、おひちゃの口を吸った。
おひちゃの舌が熱く、やわらかく俺の口の中で踊った。
ずっとあこがれ続けたおひちゃである。
俺は、おひちゃが好きだ。
死が迫る中、俺はおひちゃを求めた。
おひちゃも受け入れてくれた。
流される筏の上で俺たちは結ばれた。
おひちゃは子供みたいな顔をしていたが、存外に豊かだった。
おひちゃは俺の腕の中で、小鳥がピクピクして、囀るように鳴いた。
もちろんお互い初めてだ。
おひちゃは、股から血を流していた。
俺が19歳、おひちゃが14歳の新婚初夜である。