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ポコペン映画館

極々私的偏見きまぐれ映画感想


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into the wild 2007年 アメリカ  148min



監督・脚本:ショーン・ペン

原作:ジョン・クラカワー

出演:エミール・ハーシュ

  マーシャ・ゲイ・ハーディング

  ウィリアム・ハート




「ハリウッド映画」と「アメリカ映画」は違う。別モノ。

ここは結構混同されてるけど、別モノでしょ、やっぱり。



アルトマン亡き後、クリント・イーストウッドとショーン・ペンくらいしか

アメリカ映画を作っていないと思う。



演者としても一流のショーン・ペンの初監督作品『インディアン・ランナー』

を観た時、正直驚いた。

素晴しい出来栄えだった。



その後も監督作品を観てた。

どんどんナイーブな作品になっていった。



で、本作。



観終わって、疲れた。



あまりにもセンシティヴだ。

薄い、でも研ぎ澄まされたナイフの上を歩いてるような

この映画を観てたら、ものすごく疲れた。


勿論悪い意味では、ない。

それどころか、とてもいい映画だ。



何不自由なく育った青年は、大学卒業と同時に

何もかも捨ててアラスカの荒野を目指す。



「なぜ彼はアラスカを目指すのか」



そのことだけが、淡々と描かれている。



《孤独》もサブテーマなので、モノローグが多い。

普段はあまり好きではないけど、これは仕方ない。

誰もいないんだから。



極寒の地の風景とあいまって、青年の《孤独》と、アラスカへ向かおうとする気持ちが

ヒリヒリするほど、伝わってきた。

同化する、というのも違うし、共感でもないし、勿論哀れみでもない、

なんだろう・・・・。



ラストへ向かうシークエンスからは「やっぱりこうなるよな」

って判ってても、つらく切ない。



そう、切ないんだ。



「なぜ彼はアラスカを目指すのか」



その答えは、たぶん誰の中にも(男だけかな?)ある、と思う。

そしてそれは、できれば触れられたくない部分だと思う。



そこを、ショーン・ペンは静かに、そしてゆっくりと見つめ、

そっと掘り下げていく。



ストーリーの中に“逃げ場”がないんで、そのことが《どストレート》に

こっちに向かってくる。

サブストーリーも、箸休め的シークエンスもエピソードも、何もない。



だから、観終わって疲れた。



勿論、衝撃もあったし。



いやはや、ショーン・ペン。ものすごい映画を撮ったもんだ。



ところで、演者としてのショーン・ペンで忘れられないのが

『ヒューゴ・プール』。

天使の役は、なかなか印象深くて、忘れられない。

最近はどこにも置いてなくて、また観たいんだけどね。

いつか観られる日が来ますように。






ポコペン映画館-ganba





1998年  120min



監督:磯村一路
原作:敷村良子
音楽:リーチェ&ペンギンズ
出演:田中麗奈
   真野きりな
   中嶋朋子
   松尾政寿




《映画女優》って言葉はもう死語、かな。

誰も使わないし、何よりもそういう人がいない。

そもそも《女優》とか《俳優》っていう言葉も死語に近い。

最近じゃ総じて《タレント》。

昔は《銀幕》なんて言葉もあったらしいし。



ドラマだバラエティだ、ってテレビに出なきゃ売れない

って状況だから仕方ないか。

楽してごっそり設けられるんだからね。



で、田中麗奈。

わずかな例外はあるものの、基本的には映画とCFしか出ない。

映画の宣伝でバラエティにも何度か出たらしいけど。



その田中麗奈の映画初主演作品が、これ。

公開当時は「どうせアイドル映画だろ?」くらいに思ってて

見向きもしなかった。



原作の良さと、映画の良さを友人から聞き、観てみた。

アイドル映画だと舐めててすいません。

とてもいい映画でした。



舞台は瀬戸内海、松山。

時代は1980年代後半。

まだケイタイもネットもない時代。

高校生になった悦子は女子ボート部を作り

何とか人数をかき集めて、大会に出るのだが・・・・というハナシ。



大上段に構えたテーマがある訳でも、大事件が起こるわけでもなく
むしろ淡々と進んで行きます。
ある方が仰いました「悪くない映画だけど、何も起きないのよね」って。



確かに。



ある意味ゲームソフト『ぼくの夏休み』(だったっけ?)的な

故郷を想い郷愁を誘うだけの映画、ってのもわかる。



だけど、ケイタイもなくメールもない高校生活、瀬戸内海の風景、
反抗期の終わりかけ、受験、コンプレックス、淡い恋…
誰にでも思い当たる《あの頃》がきちんと描かれた秀作。



二時間の映画の中で二年半の時間が流れる。
あとで考えると「二年半か」って感じるけど、全く違和感はない。


ひとつには各ショットの長さと引きの画が全体をゆったり
見せているのではないか。



更に脚本が敢えて一歩引いたところで抑えてあるので
観る側が考えながら観てるからかもしれない。
そのゆったり感がなんとも心地いい。



そして何より瀬戸内海の風景は絶品。
見事なカメラ。
波のない水面を彼女たちの乗ったボートが走って行く。
引きの画では、茜色の水面にボート…たまらなくいい画。



ひとつ気になったのは中嶋朋子演ずるコーチ役。
何だか他のキャラから浮いているような…。
原作を読んでみて納得。
原作のコーチは初老の夫婦なんですね。


演技力不足というよりは、事前にあまり掘り下げられてなくて
キャラがキックリしてこなかったのでしょうか。
あえて注文をつけるならここ。

それ以外は文句なし。


リーチェの曲もとても心地いい。
DVDにはPVが入ってて、リピートで何度も聴いた。



初めて「がんばって、いきま、っしょい!」「しょい!」の唱和を

聞いた時の悦子の顔と、翌年迷わず「しょい!」と唱和する悦子の顔。


アップがあまりない映画だから、こういう時のアップが
とても効果的。



田中麗奈は、ちょっと方向を見失いかけてるように感じる。

もうちょっと出演作品を吟味して欲しい、かな。

いい映画に出てもらって、またいい演技を見せてもらいたい。

そんな風に思わせる、数少ない《映画女優》です。






2006年   120min


監督:荻生田宏治

原作:さそうあきら

出演:成海璃子

   松山ケンイチ

   串田和美

   手塚理美


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言葉を喋るより先に楽譜が読め、“神童”ともてはやされ

周囲の期待に押しつぶされそうになりかけていた中学生の少女・うたは

おちこぼれ音大生・ワオと出会い・・・・・・というハナシ。



タイトルの『神童』から、そう呼ばれることの葛藤とか苦しみ

みたいなものをもっと前面に押し出した映画かと思った。



少女・うたのキャラ設定として“神童”って使ってるだけ、

って感じて、ちょっと不満・・・・かな。



音楽、中でもクラシック音楽をモチーフに使った作品は多い。

ちょっと前だけどドラマ『のだめカンタービレ』は、原作と共に

見事な出来栄えだった。



この映画の原作は未読だけど、もうちょっと違うテイストなのかもしれないね。

でなきゃ、この『神童』ってタイトルがそぐわないからね。



・・・・・そう、この映画、タイトルに対して観る前からヘンな先入観が

あったみたいで、観てる間中ずっと違和感があった。

ちょっと損した気分。



で、肝心の映画の中身は、特に文句はない、かな。

満足感もないけど・・・・・。



成海璃子は相変わらずいい。

安定してるね。

結構雑なシナリオや演出だけど、演技はそこをある意味

カバーしてる・・・・・って言うと言い過ぎかな。

でも、そのくらいいい。



松山ケンイチもいい。

こっちも雑なシナリオと演出なのにね。



そう、この映画、シナリオと演出が雑。

ただ、個人的に音楽モノには評価が甘いのと

成海、松山のふたりがいいので

なんとか、ってところかな。



掘り下げもなければ、鋭い洞察力もなく

セリフも結構ヒドい。



主役のふたりがいなければ、どうでもいい映画に

なってたかもね。





PARIS, JE T'AIME  2006年 フランス他 120min



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監督 : ブリュノ・ポダリデス グリンダ・チャーダ ガス・ヴァン・サント
     ジョエル&イーサン・コーエン ウォルター・サレス ダニエラ・トマス
     クリストファー・ドイル イザベル・コイシェ 諏訪敦彦 シルヴァン・ショメ
     アルフォンソ・キュアロン オリヴィエ・アサイヤス オリヴァー・シュミッツ
     リチャード・ラグラヴェネーズ ヴィンチェンゾ・ナタリ ウェス・クレイヴン
     トム・ティクヴァ フレデリック・オービュルタン ジェラール・ドパルデュー
     アレクサンダー・ペイン
出演 : スティーヴ・ブシェミ レオノール・ワトリング ニック・ノルティ
     ファニー・アルダン ボブ・ホスキンス マリアンヌ・フェイスフル
     ナタリー・ポートマン ジーナ・ローランズ ジェラール・ドパルデュー


・・・クレジット打つだけで疲れた(苦笑



全18話。18名の監督とそのビッグネームの数々。
いやはやすごく贅沢な作品ですね。




パリの街角の小さな出会い。
出だしはパリの夜景。一番いい画。



一話5分ほどかな。すごく短いから、作る側は何もできないかな、

って思ってると、さにあらず。
さすがプロ。全部とは言わないけど、ちゃんと世界を作ってる。




T・ティクヴァが一番手が込んでたかな。職人でもあり芸術家でもある。
この人らしい作りこみ方ですね。
5分の作品なのに、あそこまで作り込むとはね。
観応えありました。




クリストファー・ドイルは・・・う~ん、どうでしょう。
あの行きっぷりはぶっ飛んでて個性的とも言えますが・・・。




久しぶりに見たニック・ノルティ。老けましたねぇ。
『ニューヨーク・ストーリー』の彼を思わず懐かしく思い出しました。




コーエン兄弟は、出だしから笑えた。コーエン兄弟の映画を真似してる
かのごとく始まるその画。ブシェーミのカメラを覗き込むようなアップ。
笑えました。




「お祭り広場」はよかった。
アイディアはそれなりなんだけど、なんだろうね、結構気に入った。
新人の救急隊員。彼女に一目ぼれする異邦人。
彼は彼女の前で死んでいく。
残された彼女の震える手に残るふたつのコーヒーカップ。




「16区から遠く離れて」もよかった。
子守唄を歌う彼女の心情が、あの短い時間にきちんと描写されてた。




ヴィンチェンゾ・ナタリは自分の役目をよく理解してますね。
茶目っ気に笑っちゃいました。




何よりもよかったのはF・アルダンとB・ホスキンス。
そしてG・ローランズとB・ギャザラ。拍手です。
すごくいいですね。
短い時間でも、ちゃんと存在感がある。観応えがある。
素晴らしい。




そして最後の「14区」。
パリの、そしてそこにいる人を見事に描いてる。
片言のフランス語で語られる心象風景は、まさにこの映画の集大成。
思わず引き込まれました。




パリはずっとそこにあって、いろんな顔があって、
住んでる人もいれば、通り過ぎる人もいる。
来る人もいれば、去る人もいる。
出会いもあれば別れもある。
そんなパリの空下、人々と出来事。いい映画でした。
同じコンセプトで東京を描いて欲しいなぁ、なんて思うのはワタシだけでしょうか?






away from her 2006年  カナダ   110min





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監督・脚本:サラ・ポーリー

原作:アリス・マンロー

出演:ジュリー・クリスティーヌ

  ゴードン・ピンセント

  オリンピア・デュカキス




以前はあまり詳しく知らなくて「不思議な立ち位置にいる女優さんだな」

ってサラ・ポーリーのことを思ってた。



どう見ても実力があるのに、妙なアメリカ映画に出たり、地味な

カナダ映画に出たり。

ディズニーを怒らせたことや、政治的発言なんかを一切知らなかった。



『スィート・ヒア・アフター』をDVDで手に入れてから、彼女のことを

もう少し詳しく知るようになった。

そしてますます興味が湧いた。



劇場公開時に見逃したことを公開しつつ、やっとDVDで観た。

で、27歳でこの映画の監督と脚本。

しかも原作がアリス・マンロー。

扱うテーマは認知症。



映画の出来栄えは、見事と言うしかない。

このテーマに27歳でこの想像力と洞察力。

恐れ入りました。



44年間連れ添ってきた夫婦の妻に認知症に。

ふたりはそのことに戸惑いつつ悩みつつ、静かに葛藤し

静かに互いを思いやる。



アリス・マンローという優れた小説家の、優れたこの短編小説、

若い人が読んでも、ピンとこない人が多いかもしれない。



ポーリーはこれを、とても静かにゆっくり丁寧に深く深く

掘り下げていく。

認知症の症状を見せ始める妻を見つめる夫の視線や表情、

不安と決意と愛情がないまぜになった気持ちで、施設に向かう

妻。

ふたりの演者が、体の隅々まで気持ちを入れた演技。

それを支える衣装や美術や証明、カメラなどのスタッフ。

全てが絶妙にかみあって、見事な映画に仕上がっている。



「いい人生だった、って最後に言うのは大抵男。あなたの奥さんはそうじゃ

ないと思うわ」



こんなセリフ、言われた男はたまんない。

なんせズバリその通りだから。



でも、この映画には《愛》が満ち溢れてる。

それも一方的で自己満足的なものではなく

静かに相手を思いやるものだ。



たとえ自分を犠牲にしてでも、っていうと、時としてそれは

押し付けがましく、傲慢になりがちだけど

この映画に出てくる人物たちは、そうはならない。



それは何よりも作る側のポーリーのスタンスによるものだと思う。



映画は、最後にちょっとしたドンデン返しを用意している。

「認知症が一時的に回復しただけ? それとも・・・・・・」

って考えてしまう。



う~~~~~ん、唸ってしまった。

「参りました」

こりゃすごいや。



途中のプロセスも見事だけど、この最後も見事。

ますますサラ・ポーリーという人の存在が、自分の中で大きくなった。

たぶんまた次の映画も撮ると思うけど、楽しみですね。




「映画館には行かない。ゴミみたいなアメリカ映画ばっかりだから」


ってのは、サラ・ポーリーの言葉なんだろうなぁ。

ちょっと笑った。