携帯電話の影響について:日刊現代引用 | なんでも日記

携帯電話の影響について:日刊現代引用

確かに(((( ;°Д°))))え~ん。

φ(.. ) メモメモ。


【日垣隆のどこへ行くのかニッポン!】

2006年9月7日 掲載
携帯電話がもたらした未体験ゾーンとは?


 親王のご誕生も、秋篠宮から直接陛下に携帯電話で知らされたそうだ。
 宮内庁の高級官吏が取り次ぐのか、そのあたりの詳しい事情はわからない。
 皇室ジャーナリストと名乗る人々が想像以上にたくさんいて驚く日々だが、彼らも高貴な方々から直接携帯電話をいただける仲でもないのだろう。しかし確かに、皇室ジャーナリストには、私などにはありえない上品らしき雰囲気が備わっている。話を聞いていてイライラするのは、宮内庁ジャーナリストの枠から出ていないのではと疑われる点だが、それは今回のテーマではない。
 ほんの10年ほど前まで欧州では、リゾートでくつろぐ本当の富豪は「電話が取り次がれない別格のホテルに泊まる」と言われていた。
 ケータイが普及した今でもそうなのだろうか。私ごときが持っているケータイでも、「海外158カ国で通話可能」ということになっている。実際のところ、これをもって10カ国ほどに行ったら、空港や市街地以外そのほとんどでロクに通じなかった。同じ東京都内といっても八丈島や三宅島や小笠原では、少しでも奥に入るとケータイが通じなくなる。先日もそのような宿に泊まっていたのだが、ただ不便としか思わなかった。貧乏性だからだろう。せっかくリゾート地に来ているのに、電波の通じる市街地にまでわざわざ出て来てメールを送受信しているうちに、ばからしくなってきた。
 海外の田舎の小さな宿で、独り寂しく藤沢周平の時代小説を読んでいたら、ケータイが通じるの通じないのと実に瑣末なことに気をめぐらしている自分が情けなくなった。赤穂浪士がみな携帯をもっていたら、あんなことにはならなかったろうと思う。
 そもそも、1995年頃までに書かれた現代推理小説には、ケータイをもっていたら「成立しえない」話で満ち溢れている。恋愛ドラマも、見ていてイライラするほどの「すれ違い」で進行していくのが常であったが、これらの「ケータイさえあれば連絡がついてしまう」はずのすれ違いは設定できなくなってしまった。
 私が小中高生のころ、同級の女の子に電話をするにも「相手の父親が出てしまう可能性」というものを絶対に排除できなかった。せめて母親が出てくれますように、と祈っていたものだ。
 今では、長く付き合っているのに相手の両親の声も聞いたことがない、というカップルが大量に出現している。
 同居する子どもが誰と交際しているのかまったくわからない、というのは、人類史上初めて突入したゾーンなのである。
 別居してからも、重大事につき親は子からどう報告を受けるか。なかなか悩ましい問題である。

▼日垣隆(ひがき・たかし) 1958年生まれ。東北大法卒。コピーライターなどを経て、ジャーナリスト、作家活動に。「そして殺人者は野に放たれる」「現代日本の問題集」など著書多数。最新刊は「どっからでもかかって来い!売文生活日記」(WAC)、「刺さる言葉」(角川oneテーマ21)。