歯周病:読売新聞引用
菌を除去 進行食い止め
「歯周病は治りません」
神奈川県座間市の整体師、高橋希好絵(きよえ)さん(47)は、近所の歯科医院で4年前に言われた言葉をはっきり覚えている。
その数年前から歯肉が腫れて痛み、奥歯などがぐらぐらする状態だった。特にぐらつきのひどい奥歯を1本抜いた後、歯科医は言った。
「これから、1本ずつなくなっていきますよ」
その後も通院したが、歯周病が治る兆しはなかった。「歯はあきらめるしかないという心境でした」と高橋さんは振り返る。
ところが2年前、仕事中に歯肉の痛みに耐えかねて、たまたま飛び込んだ同県綾瀬市の武内歯科医院で、院長の武内博朗(ひろあき)さんから予想外の説明を受けた。「歯はおおむね残せます」。週1回、8か月の通院治療の結果、その言葉は証明された。
歯周病は、歯周病菌が口内で増殖して起こる。歯の表面や歯と歯肉の境目にとりつき、苦手な空気を避けるため、周囲に「バイオフィルム」というバリアを張り巡らす。これが歯垢(しこう)となり、そこから出る成分が歯肉の炎症を引き起こす。
この炎症が長引くと、歯と歯肉の間のすき間「歯周ポケット」が深くなり、歯周病菌の絶好のすみかができる。やがて、歯を支える歯槽骨(しそうこつ)などが炎症で溶ける歯周炎につながり、将来、歯を失うことになりかねない。
「歯周ポケットをきれいに掃除して、菌を減らせば歯茎はしっかりしてきますよ」と武内さんは自信を込めた。
歯科衛生士が歯周ポケットの深さを測ると、高橋さんは、場所によって6ミリ以上あった。日々の歯磨きや、歯科での定期的な歯垢、歯石除去で深さ3ミリ以内に保つことが肝心だ。
高橋さんはまず、歯のみがきにくい場所に付いた病原性の強い歯垢を、ブラシなどで徹底的に取る処置を受けた。すると、口のぬめりと歯肉からの出血は間もなく止まった。
歯周ポケットの奥から歯石や歯垢をかき出す処置も受けた。以前の歯科医院でも同じ処置を受けたが、取り残しが多く、炎症は収まらなかった。歯周病治療の基本だが、歯科医や歯科衛生士の技術差が大きい。
8か月で歯肉が引き締まってポケットは3ミリ以下になり、歯のぐらつきは止まった。「歯科医によって、歯の運命がこれほど変わるとは」と高橋さんは驚く。
成人の8割以上がかかる歯周病。適切な治療を行えば、進行を止めたり、健康な状態に近づけたりすることができる。進行度に応じた治療法を取り上げる。
