糖尿病のインスリン注射:読売新聞引用 | なんでも日記

糖尿病のインスリン注射:読売新聞引用

注射 短期間で終わる例も


「ちょうどいい運動」と、高橋稔さんは職場から駅までの約1キロを歩く

 だるくて、熱っぽい感じが1か月以上も続いている。東京都江東区の会社員高橋稔さん(32)(仮名)は、ただの風邪ではないような気がした。一昨年暮れのことだ。

 身長173センチで94キロあった体重が、この間に78キロまで急速に減っていた。夜中に何度もトイレに起きる。

 「糖尿病では?」。親からは、糖尿病になりやすい家系だから、と注意を受けていた。もしやと思い、東京・葛飾区にある糖尿病専門の診療所加藤内科クリニックを受診した。

 血糖値は、正常値(110未満)をはるかに超える418。血糖値の平均を示すヘモグロビンA1cも「14」と異常に高い値だった。

 「糖尿病です。いつ倒れてもおかしくない。とても悪い状態です」と院長の加藤光敏さん(49)に言われ、頭の中が真っ白になった。すぐに、インスリンの自己注射の指導を受けた。

 「テレビで子供が自己注射をしているのを見たことがあります。まさか、自分がそうなるとは。このまま一生か……」と気持ちは落ち込んだ。

 そんな高橋さんに、加藤さんは説明した。「血糖値がよくなればやめられますよ。インスリンを使って、すい臓を休ませれば、また、自分のインスリンが出てくる場合がありますから」

 肥満になると、血中の糖分を筋肉に取り込むなどの働きをするインスリンの作用が低下する。そのため、すい臓は過剰なインスリンの放出を続け、ついには疲れ切って出なくなる。血糖値は上がり、蓄積された脂肪を消費し始め、体重は減少する。高橋さんはこの状態だった。

 その時に、3か月から半年程度インスリンを自己注射で補うことで、疲弊したすい臓が本来の機能を取り戻す。高橋さんはこの「短期インスリン療法」が効果を上げ、半年で自己注射をやめることができた。その後は、1日1回の飲み薬で血糖を管理している。

 「自己注射は痛くはないし、慣れましたけれど、『やめていい』と言われてうれしかった」と振り返る。

 治療を始めてからは、1日1900キロ・カロリーの食事制限もなんとか守る努力をしている。ひとり暮らしなので、ファミリーレストランの定食やコンビニエンスストアの弁当が毎日の食事。ところが、1つで800から1000キロ・カロリーあるものが多い。

 「1日2回で指示されたカロリーになってしまうので、ご飯を残し、大好きな甘いものも控えるようにしています」と言う。

 自己注射を始める、と言われれば、患者は一時、ショックを受ける。しかし、短期間だけ使う方法もある。その場合も、生活習慣のコントロールが重要だ。




 ストレスと糖尿病 糖尿病になりやすい体質や肥満に加え、ストレスが発症の引き金になることが少なくない。高橋さんも転職後に急速に悪化した。ストレスによる血糖上昇は、目、腎臓、神経などの合併症の悪化も招く。

2004年9月10日 読売新聞)