受動喫煙の害:読売新聞引用 | なんでも日記

受動喫煙の害:読売新聞引用

煙吸うだけで歯茎黒く 


たばこの歯への影響について学生に説明する愛知学院大の稲垣助教授(中央)(同大歯学部付属病院で)

 愛知学院大歯学部(名古屋市千種区)の稲垣幸司助教授(48)(歯周病学)が、歯並びの矯正治療などで付属病院を訪れる子供たちの中に、時々「歯茎が黒ずんでいる子」がいるのを不思議に思ったのは、1999年ごろのことだった。

 間もなく、他人のたばこの煙を吸い込む「受動喫煙」が続くと、歯周病になる危険性が高くなるという研究結果が、海外で発表された。さらに、「子供の歯茎の黒ずみは、受動喫煙によってメラニン色素が沈着して起こる」という報告が出た。

  

 そこで、数年間をかけて、同学部などで5歳から26歳の53人を対象に調査したところ、同居家族に喫煙者がいる場合、吸う人がいない子供と比べ、色素沈着が多く見られることが判明した。また、沈着が起きる割合は、受動喫煙が原因で発症するぜんそくやアレルギー疾患の割合より高かった。

 これらの結果は先月、松山市で開かれた日本禁煙学会でも報告され、注目を集めた。稲垣助教授は「たばこを吸わない子供にまで、大きな影響を及ぼすことを痛感した」と話す。

 喫煙そのものも、口腔(こうくう)内の健康を大きく損ねる。例えば、喫煙者が虫歯になる率は吸わない人の2倍、歯周病になる率は2~8倍にも上るとされる。

  

 理由は、喫煙直後に唾液(だえき)腺や歯茎が貧血状態になり、唾液が出なくなるためだ。カルシウムやミネラルといった歯を保護する成分を含む唾液が減れば、歯がもろくなったり、歯茎の免疫力が衰えたりし、歯周病などの危険性が増すのだ。

 こうしたことから、歯科医の間でも、患者に対する禁煙指導の動きが広がり始めている。

 愛知県歯科医師会では、会員の歯科医が一貫した禁煙指導をできるように、指針を作成中だ。禁煙支援の手順、色素沈着や歯周病などの具体的な症例説明、禁煙方法の紹介、たばこやニコチンの依存度チェック表などで構成されており、4月にも配布する予定だ。

 指針作成を担当する同会理事で加藤歯科医院(同市昭和区)の加藤友久院長(51)は「歯科医は、患者の歯を一目見ただけで喫煙の有無が分かる。『吸っているね』と言える立場だからこそ、患者の健康のためにできる限りのことをすべきと考えた」と話す。

  

 たばこが原因の色素沈着や歯周病などは、禁煙することで症状は改善される。しかし、受動喫煙による色素沈着はなかなか回復しない例もあり、一度受けた打撃は深刻だ。

 稲垣助教授は「妊婦や乳幼児健診の際に、受動喫煙の状況を聞き取りし、家族全体に禁煙指導を行うといった取り組みが急務だ」と指摘する。

2006年3月23日 読売新聞)
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