歯周病の治療;読売新聞引用 | なんでも日記

歯周病の治療;読売新聞引用

歯周病菌 薬で退治

マウスピース装着 毎日5分ずつ1週間

 富山県に住む40歳代のA子さんは、歯茎が腫れるなどの歯周病に悩んでいた。食べる時に出血し、痛みもある。近くの歯科医院では良くならず、2002年、東京都千代田区の日本歯科大学病院で、歯周病菌を薬で退治する「3DS(デンタル・ドラッグ・デリバリー・システム=歯科薬剤到達システム)」と呼ばれる治療法を試した。

歯周病読売

 歯型に合わせた樹脂製マウスピースの内側に薬を塗り、1日5分間、歯にかぶせる。自宅で1週間続けたところ、歯周病菌が激減し、今も腫れや出血がない状態を保っている。(佐藤光展)

 歯周病にかかると、歯茎の腫れ、出血を伴う歯肉炎や、歯を支える骨などの組織が破壊される歯周炎が起こり、悪化すると歯を失う。歯の表面や歯茎のすき間で増殖する歯周病菌が原因で、成人の8割に症状があるとされる。

 最近の研究では、歯周病菌は血管に入り込んで体内を巡り、糖尿病の悪化要因や、心筋梗塞(こうそく)の引き金になる可能性があることも分かってきた。

 やっかいなのは、歯周病菌が増殖すると、日常的な歯磨きでは除去できないことだ。歯周病菌は本来、酸素に触れると死滅する弱い菌だが、それゆえ身を守るすべを心得ている。糖類などでできた無色のネバネバした膜(バイオフィルム)を張り巡らし、その中で増殖するのだ。

 バイオフィルムは歯ブラシでは取れないため、歯科での専門的な治療が欠かせない。細菌の死骸(しがい)などが固まった歯石を除去した後、専用の器具で研磨剤を塗った歯の表面を磨き、バイオフィルムを除去する。この研磨の操作は「PMTC(歯面清掃)」と呼ばれる。

 しかし、それでも取りきれないしつこい歯周病菌もある。この場合に行われるのが、3DSだ。

 マウスピースの内側に、うがい薬にも使うヨードを含んだ薬剤を塗る。1日5分、歯にかぶせ、1週間続けると、PMTCで破損したバイオフィルムの間から薬が染み込み、歯周病菌を退治できる。

 抗菌剤を使う場合もあるが、日本歯科大学名誉教授の鴨井久一さんは「副作用の恐れがないヨードで、十分な効果が得られる」と話す。

 薬を歯と密着させて、効果を引き出すこの方法は、虫歯菌の除菌を目的に考案されたが、3年前から歯周病治療にも用いられ始めた。鴨井さんは「8割の患者で、歯周病菌が健康的なレベルまで低下する」と話す。

 様々な種類がある歯周病菌のうち、歯周病と密接に関係するのは4種類ある。抗菌剤を使っても菌を完全になくすことはできないが、鴨井さんらの調査で、これらの歯周病菌が、口内の総菌数のそれぞれ0・1~0・2%程度であれば、歯の健康を保てることが分かってきた。

 A子さんの場合、そのうち1種類の菌が初診時に6%あったが、PMTCで4%に低下。続けて3DSを行い、健康的なレベルに下がった。

 治療後は丁寧な歯磨きを心がけ、数か月ごとに通院して磨き残し部分の清掃などを行うことで、歯周病菌の増殖を抑えることができる。

 これらの治療は、事前に唾液(だえき)検査を行い、歯周病菌の数などを見極めた上で行うことが肝心だ。PMTCと3DSは自費診療で、費用は医療機関によって異なるが、数万円だ。



3DSを行う主な医療機関
協和歯科(東京都新宿区) (電)03・3267・1474
武内歯科医院(神奈川県綾瀬市) (電)0467・78・3020
つげ歯科医院(岐阜県恵那市) (電)0573・23・2112
こんどう歯科医院(神戸市垂水区) (電)078・707・4378

2005年12月19日 読売新聞)