ビタミンE:日刊現代引用
【丸元淑生 短命の食事・長命の食事】

アルツハイマー病になるのは65歳過ぎの人がほとんどである。しかし、まれに40代、50代で発病する人もいる。アメリカの統計ではアルツハイマー病患者の数は400万人余りだが、2020年には1000万人になると予想されている。
今後増え続けることが確実視されている病気なのだ。
この病気の根底にあるのは酸化による脳のダメージで、アルツハイマー病患者の脳組織内の過酸化脂質の量は、アルツハイマーにかかっていない同年齢の人に比べて多いことがわかっている。
われわれの脳は50%が脂質だが、酸化すると有害な過酸化脂質になりやすい。脂質は活性酸素などのフリーラジカルと呼ばれる不安定な分子の攻撃に弱く、それを迎え撃って無害化する抗酸化栄養素が足りないと、過酸化脂質が生み出されるのだ。
脂質をフリーラジカルの攻撃から守るうえで主要な働きをしているのは、脂溶性の抗酸化栄養素のビタミンEで、動物実験の結果はビタミンEがアルツハイマーを予防することを強く示している。
また、ビタミンEを同じ脂溶性の抗酸化物質であるコエンザイムQ10と一緒に動物に投与した実験では、脳組織内の過酸化脂質の量が顕著に減少している。
中年からの健康にはサプリメントでビタミンEをとることがいかに大事かわかるが、最近行われた臨床研究でも明確な結果が出ている。
症状が軽いアルツハイマー病の初期患者341人を対象に行われたもので、4グループに分けて第1のグループにはアルツハイマー病治療薬が、第2のグループにはビタミンE2000IUが、第3のグループには治療薬とビタミンEが、第4のグループにはニセ薬が毎日2年間投与された。
そして、病気の進行を最も遅らせることが出来たのはどのグループかが確かめられた。 その結果、深刻な症状になった人の数が最も少なかったのがビタミンE単独投与のグループだったのだ。
投与量が2000IUと大量なのは治療目的だからで、健常者にサプリメントとして摂取がすすめられているビタミンEの量は1日に200~400IUである。
●まるもと・よしお 1934年、大分県生まれ。東京大学文学部仏文科卒。作家、栄養学ジャーナリスト、料理研究家。
2006年5月18日 掲載
脳の酸化=アルツハイマー病を防ぐビタミンEアルツハイマー病になるのは65歳過ぎの人がほとんどである。しかし、まれに40代、50代で発病する人もいる。アメリカの統計ではアルツハイマー病患者の数は400万人余りだが、2020年には1000万人になると予想されている。
今後増え続けることが確実視されている病気なのだ。
この病気の根底にあるのは酸化による脳のダメージで、アルツハイマー病患者の脳組織内の過酸化脂質の量は、アルツハイマーにかかっていない同年齢の人に比べて多いことがわかっている。
われわれの脳は50%が脂質だが、酸化すると有害な過酸化脂質になりやすい。脂質は活性酸素などのフリーラジカルと呼ばれる不安定な分子の攻撃に弱く、それを迎え撃って無害化する抗酸化栄養素が足りないと、過酸化脂質が生み出されるのだ。
脂質をフリーラジカルの攻撃から守るうえで主要な働きをしているのは、脂溶性の抗酸化栄養素のビタミンEで、動物実験の結果はビタミンEがアルツハイマーを予防することを強く示している。
また、ビタミンEを同じ脂溶性の抗酸化物質であるコエンザイムQ10と一緒に動物に投与した実験では、脳組織内の過酸化脂質の量が顕著に減少している。
中年からの健康にはサプリメントでビタミンEをとることがいかに大事かわかるが、最近行われた臨床研究でも明確な結果が出ている。
症状が軽いアルツハイマー病の初期患者341人を対象に行われたもので、4グループに分けて第1のグループにはアルツハイマー病治療薬が、第2のグループにはビタミンE2000IUが、第3のグループには治療薬とビタミンEが、第4のグループにはニセ薬が毎日2年間投与された。
そして、病気の進行を最も遅らせることが出来たのはどのグループかが確かめられた。 その結果、深刻な症状になった人の数が最も少なかったのがビタミンE単独投与のグループだったのだ。
投与量が2000IUと大量なのは治療目的だからで、健常者にサプリメントとして摂取がすすめられているビタミンEの量は1日に200~400IUである。
●まるもと・よしお 1934年、大分県生まれ。東京大学文学部仏文科卒。作家、栄養学ジャーナリスト、料理研究家。