第1回日本ラブストーリー大賞:日刊ゲンダイ引用
- 原田 マハ
- カフーを待ちわびて
| 【NEW WAVE】 2006年4月8日 掲載
第1回日本ラブストーリー大賞受賞 原田マハ氏に聞く「大人が楽しめるラブストーリーを書きたかった」 原田マハ氏の最新刊「カフーを待ちわびて」(宝島社 1400円)は、新設された第1回日本ラブストーリー大賞受賞作。マハ氏は作家・原田宗典氏の実妹で、いわば満を持しての作家デビューだ。絵馬に書かれた“嫁に来ないか”という言葉が、沖縄の離島にてんやわんやの大騒ぎを引き起こす。 ――手に軽い障害をもち何かと引っ込み思案、それまで決断という言葉とは無縁だった三十男、明青(あきお)の恋物語。そこに嫁志望の幸が押しかけ、島のリゾート開発問題で信じていた仲間との間に亀裂が入り、すべてに解決を迫られる。ラブストーリーの枠に収まりきらないテーマも抱えているが、今なぜ恋物語を? 「これまでキュレーター(美術展・博覧会などの企画者)や、環境問題をテーマにライターの仕事をしてきた私のキャリアから生まれてきた物語、といえると思います。それと、若い人の書く流行のラブストーリーではなく、私もそんなに若くないし(笑い)、大人じゃないと描けないラブストーリーを書いてみたかったこともありますね」 ――読んでいるうちに、どうもこの島は実在しているのではないか、こういう島んちゅたちが今日も泡盛で宴会をやっているのではないか、という気にさせられるが? 「そうですね、舞台になった島にはモデルがありますし、作中、海中に潜ってハリセンボンをくわえてくる黒犬カフーのモデルも実在します。カフーが島言葉で“幸せ”を意味することを教わったときには、もうこれは後は書くしかないなと。目標は激情や官能はちょっぴりでも、人の純愛の原点、でした。男性にとっても女性にとってもファンタジーであり得る恋、ですね」 ――先輩作家としての原田宗典氏に影響を受けたりしたことは? 「それはもうまったくないですね。ただ、いざ自分が書いてみるとプロの兄とちがって、これがなかなか完結しない(笑い)。意外に身近なところに幸せはある、ということも隠れテーマのひとつなんですが、最後は本当に(いい作品になるよう)カフーよ来てくれ、この作品を手にするすべての人に来てくれ、と祈りを込めて仕上げました」 【作品概要】 沖縄の離島・与那喜島で細々と雑貨店を営む35歳の明青。彼は仲間内で北陸に旅したとき、遊び心で神社の絵馬に“嫁に来ないか”と書く。そしてある日、幸という女性から“もし絵馬の言葉が本当なら、私をあなたのお嫁さんにしてください”という手紙が届き、実際に幸が島に現れ大騒ぎに。 島はリゾート開発問題に揺れ、明青はユタ婆の不思議な予言、失踪した母の思い出、そして愛犬カフーと海辺で戯れる幸の存在に振り回される。成就すべき愛はどこにあるのか!? ▼はらだ・まは 1962年生まれ、東京都出身。関西学院大学文学部日本文学科卒、早稲田大学第二文学部美術史科卒。大手商社や大手都市開発企業の美術館開設室、地方都市の美術館開設準備、ニューヨーク近代美術館(MoMA)などのキュレーターを務め、02年独立、フリーに。本作品で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞、作家デビューする。 |