ハッスル、ハッスル、大フィーバー:日刊ゲンダイ引用 | なんでも日記

ハッスル、ハッスル、大フィーバー:日刊ゲンダイ引用

【著者インタビュー】
2006年3月9日 掲載
「ハッスル、ハッスル、大フィーバー!!」斎藤綾子氏

「この小説は“家”というシステムへの決別宣言です」

斎藤 綾子
ハッスル、ハッスル、大フィーバー!!
「私もこれまで独身を通す中で、いわゆる家のシステムから完全に逃れえたと思っていたんですが、世間はそう簡単に見逃してはくれないんですね。死んだらどのお墓に入るのか、という問題がありました。自然葬や散骨で済まそうと甘っちょろく考えていた私に、いやが上にも墓の問題を考えさせる係累もおりまして(笑い)。いまだに憤怒ではらわたが煮えくり返る思いがするんですが、それが自力で生前墓を購入する原動力になりました。再びの“家というシステムへの決別宣言”でもあるんです」
 圧倒的で破壊的ともいえるポテンシャルで、バイセクシュアルやゲイ、レズの世界を描き続ける著者の最新作である。
 前著「欠陥住宅物語」では、自身の住宅購入にまつわる裁判沙汰を妖しくも官能的な物語に仕上げた著者が、今回は生前墓購入にいたる顛末を、官能小説家・宮井涼子を主人公に描いてみせる。
「下手をしたら男の思惑でどうにでもなりかねない独り者の女の危うさと、彼女がおぼれるパチンコの魔力、そして官能を堪能していただけたら、という思いも込めた物語です」
 主人公・涼子は37歳、独身、平均月収15万円の官能作家である。家賃を払えばかつかつの生活だが、ハマリにハマる銀座のパチンコホールでの稼ぎで、なんとか不足分を補う修羅の日々を送る。
 その彼女が、“夫の墓には絶対入らない”と宣言する母、無職の夫との離婚でもめる妹、新婚生活も会社も投げ出す幼馴染みのセックスフレンドらが引き起こす騒動に巻き込まれる。
 揚げ句、父方の叔父に“うちの墓におまえを入れる余裕はない。嫁に行け”と諭され、ぶち切れてしまう。
 身勝手な身内・係累、セックスフレンドに翻弄されながらも、涼子が正気を保てるのはただただパチンコ台の前だけだ。やがて涼子は矢継ぎ早にまとまった単行本の印税と、妹が縁切り代わりに返してきた二百数十万円を元手に、文芸家協会斡旋の生前墓を購入する。朝から身を清め、パチンコ台に向かう彼女はどこへ行くのか……。
「パチンコホールには自分の優しさを素直に表せない女がいっぱいいます。ベッドまで行けるかどうかは別に、男性の方はたまには声をかけられてはどうでしょう(笑い)」
(幻冬舎 1400円)

◆さいとう・あやこ 1958年、東京都生まれ。大学在学中に「宝島」に投稿した短編をきっかけに、若い女性のセックスライフを描いた連載「性生活体験時代」でデビュー。以後、レズ、ホモ、バイセクシュアルなど、なんでもありのポルノグラフィー作家として活躍。主な著書に「フォーチュンクッキー」「良いセックス 悪いセックス」「スタミナ!」等多数。



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