郵政問題の真実:日刊ゲンダイから引用
【NEWSがわかる本】

元特定郵便局長の郵政民営化批判
小泉首相執念の郵政改革がいよいよヤマ場を迎えている。政権末期、スキャンダル続出の中で果たして改革はどうなるのか。
「郵政」 世川行介著(現代書館 2000円)
郵政族の拠点である特定郵便局長制度は明治時代から続く「世襲制度」。著者は島根県で4代続いた特定局長だったが、わけあって職を辞し、歌舞伎町を放浪するルポライターになったという異色の人物。その彼が小泉流の郵政民営化を厳しく批判する。
首相のいう改革は全特(全国特定郵便局長会)を利権の温床にした田中派の流れを汲む経世会の支配を粉砕しただけで、肝心の郵政官僚による行政支配システムは素通りしたままだからだ。
他方、著者は返す刀で全特をはじめ、労組の旧全逓や郵政ファミリー企業にも批判の矛先を向ける。「(財)ポスタルサービスセンター」「日本ダイレクト・メール協会」など大口顧客の民間企業との利権がらみで創設され、現在まで続く天下り先も珍しくない。
特定局長制度に愛憎を抱く著者は、かつて庶民の味方として徹底して地元に尽力した特定局長たちの歴史にしばしば言及しながら、ちっぽけな権力にしがみつく官僚と取り巻きに対して執念の批判を向ける。郵政改革賛成派・反対派の別を超えた異色の傑作だ。
「郵政攻防」 山脇岳志著(朝日新聞社 1300円)
小泉首相はなぜ郵政改革にこだわるのか。その原点は72年、田中角栄と福田赳夫が自民党総裁の座を争った「角福戦争」にさかのぼるという。この戦いで全特(全国特定郵便局長会)を巨大な集票マシンに使った田中の金権術に人一倍嫌悪を示したのが福田学校の小泉だったのだ。小泉と彼が起用した竹中平蔵、初代郵政公社総裁に就任した生田正治、対小泉の戦いに敗れて引退した野中広務、そして昨年の総選挙で小泉に敗れた民主党・岡田克也……。多様な人物にそれぞれ焦点を当て、劇的な攻防のいきさつを描いている。
「郵便局」 日本経済新聞社編(日本経済新聞社 1400円)
郵政民営化が成功した後に起こり得る最も危険な可能性は未曽有の巨大企業が誕生し新たな利権が生まれることだ。今後誕生する民営化企業に対しては厳しい監視が必要。が、官邸や竹中総務相の関心は収益に向いている。民営化委員会の監視があるため2017年までは民間と同じサービスはできないが、それ以後も持ち株会社の株式保有が続けば金融サービスの業務拡大は進まない。郵便局の未来図はあまりに不透明だ。
2006年3月14日 掲載
正念場の郵政改革元特定郵便局長の郵政民営化批判
「郵政」 世川行介著(現代書館 2000円)
郵政族の拠点である特定郵便局長制度は明治時代から続く「世襲制度」。著者は島根県で4代続いた特定局長だったが、わけあって職を辞し、歌舞伎町を放浪するルポライターになったという異色の人物。その彼が小泉流の郵政民営化を厳しく批判する。
首相のいう改革は全特(全国特定郵便局長会)を利権の温床にした田中派の流れを汲む経世会の支配を粉砕しただけで、肝心の郵政官僚による行政支配システムは素通りしたままだからだ。
他方、著者は返す刀で全特をはじめ、労組の旧全逓や郵政ファミリー企業にも批判の矛先を向ける。「(財)ポスタルサービスセンター」「日本ダイレクト・メール協会」など大口顧客の民間企業との利権がらみで創設され、現在まで続く天下り先も珍しくない。
特定局長制度に愛憎を抱く著者は、かつて庶民の味方として徹底して地元に尽力した特定局長たちの歴史にしばしば言及しながら、ちっぽけな権力にしがみつく官僚と取り巻きに対して執念の批判を向ける。郵政改革賛成派・反対派の別を超えた異色の傑作だ。
「郵政攻防」 山脇岳志著(朝日新聞社 1300円)
小泉首相はなぜ郵政改革にこだわるのか。その原点は72年、田中角栄と福田赳夫が自民党総裁の座を争った「角福戦争」にさかのぼるという。この戦いで全特(全国特定郵便局長会)を巨大な集票マシンに使った田中の金権術に人一倍嫌悪を示したのが福田学校の小泉だったのだ。小泉と彼が起用した竹中平蔵、初代郵政公社総裁に就任した生田正治、対小泉の戦いに敗れて引退した野中広務、そして昨年の総選挙で小泉に敗れた民主党・岡田克也……。多様な人物にそれぞれ焦点を当て、劇的な攻防のいきさつを描いている。
「郵便局」 日本経済新聞社編(日本経済新聞社 1400円)
郵政民営化が成功した後に起こり得る最も危険な可能性は未曽有の巨大企業が誕生し新たな利権が生まれることだ。今後誕生する民営化企業に対しては厳しい監視が必要。が、官邸や竹中総務相の関心は収益に向いている。民営化委員会の監視があるため2017年までは民間と同じサービスはできないが、それ以後も持ち株会社の株式保有が続けば金融サービスの業務拡大は進まない。郵便局の未来図はあまりに不透明だ。
- 世川 行介
- 郵政―何が問われたのか
- 山脇 岳志
- 郵政攻防
- 八木沢 徹
- ジャパンポスト―郵政民営化 40万組織の攻防
- 別冊宝島編集部
- 郵便局があぶない
- 日本経済新聞社, 日経=, 日本経済新聞=
- 郵便局―民営化の未来図を読む