アルファ・リポ酸
【丸元淑生 短命の食事・長命の食事】

アルファ・リポ酸
アルファ・リポ酸は食べたものをエネルギーに変える代謝に不可欠の補酵素(コエンザイム)である。だからビタミンB群と同様の重要性を持っているけれども、ビタミンと呼ばれないのは、体の中で作り出されるからだ。
だが、50歳近くになるとあまり作り出されなくなり、人によって差はあるけれども、加齢とともにどんどんその量が減っていく。
アルファ・リポ酸以外にもそういう栄養素はたくさんあるので、中年になったら、それを補うような食事をしなければならない。
若いときのように体は使わないので、食事の量はあまり摂る必要がないけれども、多種類の微量栄養素が十分に摂れる食事にしていかなくてはならないのだ。
それは実は大変なことである。簡単にいうと、カロリーは少量で微量栄養素はたっぷり、という食事に変えなくてはならない。
それが出来ない人は病気のリスクが高まるし、老化が加速する。
私はそういう食事に変えるヒントをこのコラムで書いているのだが、アルファ・リポ酸だけは食事を変えても多く摂ることは不可能である。
この栄養素を最も多く含んでいる食品のほうれん草を食べるとしても、アルファ・リポ酸を100ミリグラム摂るには3キログラムも必要なのだ。
だからサプリメントで補うしかないが、補わない場合に起きてくるのは一般に、血糖値の上昇である。
アメリカの統計では70歳の人が糖尿病になる率は50歳の人の20倍と高率だが、その理由の一つは加齢によるアルファ・リポ酸の減少と考えられている。
血糖値の高い状態がつづくと糖尿病のリスクが高まるだけでなく、血液中のブドウ糖が体内のさまざまな場所で、タンパク質と結合してタンパク質の糖化をひき起こす。
それは有害な変化で、体の組織を老化させていく。皮膚や血管のコラーゲンを構成しているタンパク質が糖化すると、交差結合と呼ばれる網状結合を形成して、コラーゲン同士が網状やひも状に結合していくために肌や血管の柔軟性がなくなる。そして肌にはしわやしみが生まれるのだ。
勧められているアルファ・リポ酸の摂取量は、糖尿病になってしまった人の場合は1日200ミリグラム、そうでない人は1日100ミリグラムである。
●まるもと・よしお 1934年、大分県生まれ。東京大学文学部仏文科卒。作家、栄養学ジャーナリスト、料理研究家。
2006年2月17日 掲載
ほうれん草3キロ=サプリ100ミリグラムアルファ・リポ酸
アルファ・リポ酸は食べたものをエネルギーに変える代謝に不可欠の補酵素(コエンザイム)である。だからビタミンB群と同様の重要性を持っているけれども、ビタミンと呼ばれないのは、体の中で作り出されるからだ。
だが、50歳近くになるとあまり作り出されなくなり、人によって差はあるけれども、加齢とともにどんどんその量が減っていく。
アルファ・リポ酸以外にもそういう栄養素はたくさんあるので、中年になったら、それを補うような食事をしなければならない。
若いときのように体は使わないので、食事の量はあまり摂る必要がないけれども、多種類の微量栄養素が十分に摂れる食事にしていかなくてはならないのだ。
それは実は大変なことである。簡単にいうと、カロリーは少量で微量栄養素はたっぷり、という食事に変えなくてはならない。
それが出来ない人は病気のリスクが高まるし、老化が加速する。
私はそういう食事に変えるヒントをこのコラムで書いているのだが、アルファ・リポ酸だけは食事を変えても多く摂ることは不可能である。
この栄養素を最も多く含んでいる食品のほうれん草を食べるとしても、アルファ・リポ酸を100ミリグラム摂るには3キログラムも必要なのだ。
だからサプリメントで補うしかないが、補わない場合に起きてくるのは一般に、血糖値の上昇である。
アメリカの統計では70歳の人が糖尿病になる率は50歳の人の20倍と高率だが、その理由の一つは加齢によるアルファ・リポ酸の減少と考えられている。
血糖値の高い状態がつづくと糖尿病のリスクが高まるだけでなく、血液中のブドウ糖が体内のさまざまな場所で、タンパク質と結合してタンパク質の糖化をひき起こす。
それは有害な変化で、体の組織を老化させていく。皮膚や血管のコラーゲンを構成しているタンパク質が糖化すると、交差結合と呼ばれる網状結合を形成して、コラーゲン同士が網状やひも状に結合していくために肌や血管の柔軟性がなくなる。そして肌にはしわやしみが生まれるのだ。
勧められているアルファ・リポ酸の摂取量は、糖尿病になってしまった人の場合は1日200ミリグラム、そうでない人は1日100ミリグラムである。
●まるもと・よしお 1934年、大分県生まれ。東京大学文学部仏文科卒。作家、栄養学ジャーナリスト、料理研究家。