第1回新潮エンターテインメント新人賞受賞者コメント:日刊ゲンダイ引用
- チョ・ソヘ, 吉野 万理子
- 初恋 vol.1
- チョ・ソヘ, 吉野 万理子
- 初恋 vol.2
- チョ・ソヘ, 吉野 万理子
- 初恋 Vol.3
- 吉野 万理子
- 秋の大三角
【NEW WAVE】
2006年1月28日 掲載
第1回新潮エンターテインメント新人賞受賞 吉野万理子さんに聞く「好きな人には来世でも会いたいですね」
――わし座のアルタイル、琴座のベガ、白鳥座のデネブが夜空に形作る“大三角”に、主人公の少女・里沙が愛と死をめぐる願いを寄せる物語。幽体の絡む、里沙を探偵役にしたファンタジーミステリーでもあるが、こういう物語が生まれてきた背景は?
「作中登場する根岸線のキス魔や、みなとみらいの大観覧車で記憶喪失になった男性の話など、アイデアのパーツは私自身が体験したものがけっこう多いんです。私自身も、舞台になる学園とよく似た学校に通っていましたし、果たして神様は存在するのか、人は死んだらどうなるのか、ということもよく考えていました。結論を言うと、当時のそういう疑問に結論が出たので、今回作品化した、そういう物語なんです」
――キス魔のすでに死んでいる男がなぜ、元恋人とその妹、また主人公の里沙にアプローチするのか、その謎解きがテーマでもある。一番書きたかったことは?
「ひと言でいえば、私自身女性として、人として、永遠を信じたい、これを書きたかったんですね。以前、利根川進先生の『精神と物質』という本を読んで、魂など存在しないんだと打ちのめされた記憶があるんですが、精神的なものには永続性があってほしいんです。例えば好きな人には来世でも会いたいし、当人にも“来世って信じる?”と聞いてみたいし(笑い)」
――女子学園内の女生徒同士の恋愛がまた作品の大きな要素になっている。それもやはり実体験に基づいたもの?
「秘密の花園……ですか?(笑い) ラブレターを出したり出されたりはありましたけど、あくまで“憧れの世界”ですね。夏から秋にかけて半年間で成長する少女の物語としての部分をより楽しんでほしいですね。恋人同士向けの横浜ガイドうんちく本の部分もあるし(笑い)」
テレビドラマ脚本家としてすでにデビュー済みとあって筆力は折り紙つき。女性の恋愛小説の、新たな地平を切り開く書き手が登場したようだ。
【作品概要】
横浜・元町にあるキリスト教系の女子中高学園。里沙はその学園の中学2年生だ。ある日、里沙は、憧れの先輩で高2の真央が、電車の中で若い男とキスしている現場を目撃してしまう。しかも相手の男は、生徒たちの間で“根岸線のキス魔”と噂されていた謎の人物だった。やがてひょんなことから真央と親しくなった里沙は、キスした男は真央の姉・詩央の元恋人で交通事故で死亡しており、巻き込まれた詩央も意識不明のままであることを知る。何が起こっているのか!?
◆よしの・まりこ 1970年、神奈川県逗子市生まれ。上智大学文学部新聞学科卒後、新聞社、出版社、WEB制作会社で編集業務に携わる。02年秋「葬式新聞」で「日本テレビシナリオ登竜門2002」優秀賞受賞。03年からフリーになり、04年春、連ドラ「仔犬のワルツ」(日テレ、安倍なつみ主演)の脚本を執筆。著書に「初恋」(韓国ドラマのノベライズ3巻)など。