第2回幻冬舎アウトロー大賞特別賞受賞者コメント:日刊ゲンダイ引用 | なんでも日記

第2回幻冬舎アウトロー大賞特別賞受賞者コメント:日刊ゲンダイ引用

藤沢 さとみ
ハーフラバーズ
藤沢 さとみ
たったひとつのプレゼント

【NEW WAVE】

2005年6月12日 掲載
第2回幻冬舎アウトロー大賞特別賞受賞 藤沢さとみ氏に聞く

「自分たちとは違う“個性”をもつ人たちの言葉に耳を傾けてほしい」

「性同一性障害であることのつらさ、悩み、そして本来の女性に戻る決心まで、私の生々しい体験を皆さんに知ってほしかった」と語る藤沢さとみさん。最新刊「たったひとつのプレゼント」(幻冬舎 1400円)は、幻冬舎アウトロー大賞特別賞受賞作。男性の体のまま、女性性を抱える著者の切実な叫びを、赤裸々につづった異色の自伝的恋愛小説だ。

《作品概要》麻衣は32歳のOL。だが彼女は幼少時から性同一性障害に悩む男性だった。唯一の理解者だった母を亡くし、孤独に苦しむ麻衣はようやく同僚の恵子と、麻衣を慕う青年ノリという理解者を得る。だが麻衣は普通の恋愛を望み、出会い系で知り合った男との性行為に及ぶが、「気味悪い」と罵倒され深く傷つく。
 失意の中、麻衣は博多の男性とメールでの交際を始め、やがて彼は障害を理解した上で麻衣を愛し始める。そして性転換手術。麻衣は彼との新しい人生を夢見るが……。

――幼少時から思春期、大人になっても、周囲の人々への告白と逡巡(しゅんじゅん)の中で揺れ動く。最後は本当の女として男を愛したいと手術を受ける。切ない物語だが、一番書きたかったことは?
「社会には常識的な性の枠に当てはまらない人たちが存在します。彼女、彼たちが結婚したいと思っても、世の中にはそれを阻む大きな壁がある。私もそういう一人ですが、やはり普通に愛したいし、愛されたい。そういうごく普通の気持ち、思いを、皆さんに知ってほしかったんです」
――自伝的恋愛小説とうたってありますが、自分のプライバシーをさらすことに抵抗はなかった?
「半分ノンフィクション、後はフィクションという感覚ですけど、やっぱりかなり書きにくいシーンもありました。例えばオペのシーンです。思い出しながら文章にすることに、どうしても抵抗があって、担当編集の方に励まされながら書きました。でも読んだ方がどう感じて下さるか、どう咀嚼(そしゃく)してくれるんだろうかと想像しながら書くことは、ある意味、楽しかったですね」
――昨今、性同一性障害を抱える人の存在はよく知られるようになったが、やはり自分の身の周りに存在すると、拒否する人も多いようだが?
「たぶん普通の会社の中ではそう多く見かけないと思います。でも既成概念の社会の中では、独りで苦しみ、救いを求めている人は大勢います。私もそうでしたが、中には障害を隠し会社の中で黙々と仕事に励んでいる人もいます。この本を手にした方には、自分たちと違うこういう“個性”をもつ人たちの存在、言葉に耳を傾けていただけたら、と思っています」
 血液型B型の牡羊座。趣味のゴルフは歴6年、ハーフ40~50。料理教室修了でパン作り講師の資格も持ち、和洋中とこなす料理上手でもある。
 ちなみに現在の彼とは「付き合って半年」とか。今後は「死を前提とした生を貫くことの意味、つらさ、悲しさ、喜びすべてを書いてみたい。できれば世界平和や、人類が一つになれるのでは、といった作品も」とも語る。
 日本国内のマイノリティーとして、果敢に世間の常識の枠に挑む新人の登場である。

ふじさわ・さとみ 1959年、福岡県生まれ。山口大学経済学部卒後、福岡県内の貿易会社勤務を経て、フリーのコンピュータープログラマーに。
 25歳で通常の結婚をし子をもうけたが、幼少時からの性同一性障害に悩み抜き、00年秋、離婚。女性として生きるため翌01年、性転換手術を受けた。著書に日記エッセー「ハーフラバーズ」。本作品で第2回幻冬舎アウトロー大賞特別賞を受賞。