第10回創元推理短編賞受賞者コメント:日刊ゲンダイ引用
- 加藤 実秋
- インディゴの夜
かなり面白かった。ホストが主人公であるところが、今風で、新鮮だった。
- 加藤 実秋
- トゥモロウトゥデイ
- ウォン カーウァイ, 加藤 実秋
- 天使の涙
【NEW WAVE】 2005年5月15日 掲載
第10回創元推理短編賞受賞 加藤実秋氏に聞く「リズム感を大事に。書いている最中、常に自分でリズムをとり続けてました」 「ありそうでなさそうな、でもギリギリのところでリアリティーのある物語を目指しました」と語る加藤実秋氏。最新刊「インディゴの夜」(東京創元社 1500円)は、選者の綾辻行人・有栖川有栖・加納朋子氏らが絶賛した創元推理短編賞受賞作を含む連作集。渋谷のホストクラブを舞台に、今時の若者文化、性、ドラッグにまつわる難事件が次々に展開する。 <作品概要>「クラブみたいなハコで、DJやダンサーのような男の子が接客してくれるホストクラブ」――女性ライター・高原晶のこの発案に、大手出版編集者の塩谷が乗り、美形の元ホスト・憂夜をマネジャーに渋谷にオープンしたのが「club indigo」だ。 ホスト役の男の子たちのユニークさも手伝って店は繁盛するが、VIP客の成り金女性が殺されたり、歌舞伎町の王道系ホストクラブとの確執で裏世界の犯罪に巻き込まれたり。表題作をはじめ、今時の若者文化を背景にした3編の事件を収録する。 ――登場人物に若手人気タレント連を配せば、まるで明日にも人気TVドラマになりそうな、完成度の高いシティー系ミステリーだ。 「以前、友人とテレビ番組『マネーの虎』の話をしていて、私だったらこういうオシャレなホストクラブの企画を出すな、と話していたら、友人は、あっ、いいじゃない、なんて。でも私としたら、これは小説の舞台設定としての方が使えるな、と(笑い)。主人公の晶も私と同世代、同業、私の経験してきたことも書けたし、執筆中は楽しいことも多かったですね」 ――表題作は「club indigo」の紹介とともに、性同一性障害の絡む謎のストーカー殺人が発生する。渋谷の夜を生きる若者たちの生態も相まって、不思議に読む快感を味わえる。 「こういう面白いお店がホントにあったら楽しいだろうな、と。私なら1番でなくても、2番手、3番手ぐらいの客になってもいい(笑い)。それと、ありそうでなさそうな、直接自分でなくても友人がこういう事件に巻き込まれてもおかしくない、もしかしたら、というギリギリのリアリティーのある物語を書きたかったんですね」 ――逆にいえば、こういう物語はこれまでありそうで、実はそうそうなかった。とくに留意した点は? 「リズム感ですね。文体、物語の展開、それとキャラクターの設定も。書いている最中は常に自分の中でリズムをとり続けていて、そこに同調すると読み手の方が快感を覚えるのかも」 血液型O型の天秤座、独身。物心ついたときから怪談話が大好きで、今では同好の士と某居酒屋に集い、心霊スポット探訪も楽しむとか。今後は「今はアップテンポでコミカルな作風ですが、40代、50代でも、なさそうでありそうなミステリーを書き続けたい。それとシリアスな物語も」と語る。愛すべきホスト探偵団をひっさげ、新感覚の都会派ミステリーの大型新人が登場した。 ●かとう・みあき 1966年、東京都国立市生まれ。大学在学中からフリーランスのライターを始め、週刊誌・月刊誌他、医療本ライターなどを務める。03年「インディゴの夜」で第10回創元推理短編賞を受賞。その後、同作品はシリーズ化され、本書で本格的に作家デビューする。 |