第5回ホラサス特別賞受賞者コメント:日刊ゲンダイ引用
【NEW WAVE】 2005年3月13日 掲載
ホラーサスペンス大賞特別賞・道尾秀介氏に聞く〈作品概要〉 「レエ オグロアラダ ロゴ……」。ホラー作家の道尾は、旅先の福島・白峠村の河原でこんな不気味な声を聞く。地元で起きた児童連続失踪事件との関連を疑った道尾は、東京で「霊現象探求所」を構える友人・真備を訪ねる。 その真備のもとには、すでに白峠村周辺で撮影された異様な心霊写真が届いていた。被写体の背にいずれも2つの目が写りこみ、後に彼らは全員自殺していた。道尾は真相解明のため、真備とその助手と共に再び白峠村に向かうのだが……。 ――呪いや心霊現象、超能力が絡むオカルト&ホラーものでありながら、骨格は名探偵とその脇役が活躍する本格ミステリーですね。 「もともとオカルトの世界とミステリーの世界、両方が好きだったんです。オカルトは謎が謎のまま解決できないのが面白い。ミステリーは目の前の謎を完璧に解き明かしてみせるのが醍醐味。その両方を兼ね備えた作品がありそうで、実はなかなかないこともあって、それなら自分で書いてみようと」 ――物語の背後に潜ませた天狗伝説や、神殺し伝承、そして霊視探偵ともいえる真備が語る心霊現象や憑依(ひょうい)現象の分析が実に面白い。広重の浮世絵「東海道五十三次」に隠された秘密や、金毘羅参りの本当の意味なども興味深いが、一番書きたかったことは? 「ネタばれになりますので詳しくは言えませんが、書きたかったことはいわゆる憑依現象、霊が人に憑くことの科学的な検証と、オカルトなどでフェークとそうじゃないものをきちんと見分けることで本物を見てみたい、ということですね。それを推し進めると、同時に真犯人がわかる、そういう仕掛けです」 ――日本のオカルトとミステリーの本格的な融合物としては画期的な作品。美青年で霊探求を志す主人公・真備も魅力的ですね。 「真備という男は僕自身の“男の理想像”。僕自身そうなりたい(笑い)。またオカルティックなものを完全否定する人もいますが、この世には否定も肯定もできないものがわりとたくさんある。それを自分は大事にしていきたいし、版元の編集部とはシリーズ化の話も出ています」 血液型O型の牡牛座。趣味は「歌うこと」で、新宿や十条のライブハウスでギター片手にステージに立つこともある。 「まだ20代なので、やはり30代、40代といった登場人物の心理描写が課題。10年後にはもっと人の心理を掘り下げたミステリーを書いていきたいですね」 京極夏彦らが開拓したホラー&ミステリー界のまさに期待の新星だ。 みちお・しゅうすけ 1975年、東京生まれ。玉川大学農学部林学研究室(森林学専攻)卒後、住宅保全関連会社を経て、オフィス用品総合商社の営業マン。社会人1年目からホームページで自作品を公開、本作品で第5回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞し、本格デビュー。 |

