第4回このミス大賞受賞者コメント:日刊ゲンダイ引用 | なんでも日記

第4回このミス大賞受賞者コメント:日刊ゲンダイ引用

海堂 尊
チーム・バチスタの栄光

【NEW WAVE】

2006年2月25日 掲載
第4回「このミステリーがすごい!」大賞受賞 海堂尊氏に聞く

「究極の殺人トリックの舞台として心臓手術が最適でした」

 医療過誤か、殺人か!?
 現役の医師・海堂尊氏の新刊「チーム・バチスタの栄光」(宝島社 1600円)は、外科手術の花形、バチスタ手術(左心室縮小形成術)を題材にした「このミステリーがすごい!」大賞受賞作。さえない不定愁訴外来担当の医師と、型破りな厚生労働省の役人を探偵役に、ちょっと類を見ない医療ミステリーを展開する。

――大学病院内のシステム、外科臨床の実態をリアルに使い、エンターテインメント化した快作。
 日本にもようやくこういう医療ミステリーが登場したかという印象だが、意地悪く言えば医療分野の中で一番威張るのが心臓と脳外科。その中でも最難度のひとつの心臓のバチスタ手術を題材に選んだ理由は?
「手術中ならどんなジャンルにでも使えるある殺人トリックをそもそも思いついていたんです。そのトリックの唯一の弱点が、専門家が調べればすぐバレること。でも心臓手術なら、遺族感情の問題などもあって検視の解剖はとれない。その点では究極の殺人トリックになる。心臓手術でもバチスタを選んだのは、やはり一番派手だし、やっている施設が少ないので、展開の穴もバレにくいかな、と(笑い)」
――すでに映画化、ドラマ化の話も殺到しているとか。この物語で一番描きたかったものは何?
「現実の医療現場では、ここで扱うような殺人が起きたら、あくまで例えですが、おそらく闇から闇でしょう。いろいろと公表される部分も増えてきていますが、今の医療現場の監査システムに何が不足しているかをまず書きたかった。同時に、システムを維持するのは人の心。医学には非人道的なところがありますが、やはり人道的というか、医療に携わる人の心のありようの大切さみたいなものを描きたかったわけです」
――主人公の万年講師・田口、厚生労働省役人の白鳥、院長の高階と、登場人物がまたいずれも個性的で愉快。彼らが物語の奥行きを生んでいる。
「組織の物語でもあるんですが、個人が組織の圧力に追い詰められそうになったら、まず自分の上昇志向に肩透かしを食わせてはどうか、という思いもありました。自分の体験上でも、そこに縛られるのは何かと面倒臭いじゃないですか(笑い)」

【作品概要】
 東城大学医学部付属病院では、米国から桐生恭一を助教授に招聘、バチスタ手術専門チームをつくり、成功率100%の実績を積み上げていた。
 だが突如、患者の術中死が3例連続。しかも新患は海外の少年ゲリラ兵と決まる。マスコミ注目の中、高階院長はかつての教え子のひとりで、不定愁訴外来担当の窓際講師・田口に内部調査を命じる。なぜ院内の既存の調査会を使わないのか?
 型破りな厚生労働省役人・白鳥と共に、田口のシニカルでコミカルな真相究明が展開する。

◆かいどう・たける 1961年、千葉県生まれ。医学系大学院修了後、公的医療機関に入所。現在も同機関の勤務医。本作で第4回「このミステリーがすごい!」大賞受賞、作家デビューする。