今日は、大事な友人たちが日々熱心に指導に関わっている、女声合唱団『シューベルト・コーア』の定期演奏会に行ってきました。

大学時代の友人、吉元貴弘さんが、オペラやバレエ、ソロの歌曲、器楽曲など本来は合唱では演奏されない楽曲を合唱曲としてアレンジし、毎年の合唱祭や音楽祭などで発表して高い評価を得ている、アマチュア女声合唱団なのです。
合唱指導のサポートにはこれまた大事な友人、みいあさんも関わっています。
頑張ってるみんなに食べてもらいたくて、私も張り切って昨日差し入れのドーナツを焼きました。

つまずいたって、起きればいいよ。
つまずいたって、起きればいいよ。

結成7年目に満を持して贈る、ファーストコンサート。 会場はすみだトリフォニーホールのなんと大ホールです。
これまで、夏の音楽祭などで何度もステージを拝見させていただいています。
思えば団の立ち上げの頃からずっと応援してるので、この日を迎えたことは私にとっても大変嬉しい事。 この演奏会の開催が決定したときから、そのステージをとても楽しみに待っておりました。

開催決定の頃の日記はこちらです。

開場時刻の少し前にホールにつきましたが、大雨のせいかすでにお客さんを入れ始めていました。
私も傘を傘立てに置いてホールに入りましたら、すでに1階席の3分の2ぐらいの席は埋まっていました。
ものすごい集客力です。開演直前に席に座って見回すと、1階はほぼ満席、2階席も見える範囲のバルコニーにはたくさんお客さんが入っていました!!

2013年10月20日(日)
13時開場 13時30分開演 
指揮・編曲 吉元貴弘
ピアノ 藤村弘子
ピアノ/キーボード 富松万里子
ソプラノ 弓田真理子
パーカッション 村松優

合唱団員の入退場時にも自然に拍手がわき起こる、温かな雰囲気。でも生温さは一切ない真剣勝負の演奏に、会場中がぐぐっと引き込まれている様子を、客席内の空気から肌で感じることが出来ました。
なんと、団代表のお話に寄りますと、50人ほどの団員さんの年齢構成はおよそ50代から80代(!!)平均年齢70.××才ということです!!
一生を捧げられる、夢中になれる何かを持って生きるって、本当に素晴らしいです。
ステージを見ていると、ほとんど暗譜で歌っているというのも凄いこと。この日を迎えるまでには色々と努力したり悩んだり、力を合わせたり様々なドラマがあったんでしょうね。。。

<第1部~ロマン派名曲へ想いを馳せて~>
1.歌曲集『白鳥の歌』よりセレナーデ(シューベルト)
2.歌曲集『ミルテの花』より献呈(シューマン)
3.アヴェ・マリア(バッハ/グノー)
4.別れの曲(ショパン)
5.歌劇『イーゴリ公』よりだったん人の踊り(ボロディン)
6.歌劇『椿姫』より乾杯の歌
・・・ここまでだけで、もう演奏会がひとつ成立しちゃいそうですよね。
シューベルト・コーア黎明期の頃からの、歌曲アレンジやピアノ曲、オペラとジャンルだけ見てもバラエティ豊か。
どの曲も初演時よりバージョンアップしていて、各パートのバランス、アーティキュレーション、ブレスのポイント、ダイナミクス、音色とどこをとっても自信にあふれた再演です。
ひとつ例を挙げると。。。
『献呈』の初演時は、お姉様方の熱ーい愛やその思いが、固まりのようにドーンと飛んできて(苦笑)ちょっと気圧されてしまった記憶があるんですね。でも今日の演奏は柔らかな音色で輝くフォルティッシモ。音色や余韻にまで心を配った素晴らしい演奏でした。

乾杯の歌は弓田真理子さんのソロが入ります。
前半は弓田さんがメインのメロディを歌い、合唱がハーモニーで支えるスタイル。突き刺さるような艶のあるソプラノソロを美しい合唱がさらに盛り上げます。そして後半は合唱がメインのメロディ、ソプラノはその上でオブリガートという何とも素敵なアレンジでした。
ピアノ、キーボード、パーカッションも加わり色彩感に富んだ演奏で、混声合唱の本来のオペラのワンシーンに負けない迫力でした。

<第2部~チェコへの郷愁~>

1.交響詩『我が祖国』よりモルダウ全曲(スメタナ)
2.スラヴ舞曲第10番(ドヴォルザーク)
3.我が母の教え給いし歌(ドヴォルザーク)
4,歌劇『ルサルカ』より月に寄せる歌
  ☆2~4は弓田真理子さん(ソプラノ)&藤村弘子さん(ピアノ)

指揮の吉元さんから、最初に演奏される『モルダウ』の解説がありました。
チェコがまだ独立した国家ではなかった時代に、スメタナが故郷への想いを音楽で綴った連作交響詩『我が祖国』。
その第2曲は、モルダウ川の流れを源流から大河エルベ川に注ぐまでを描いた名曲中の名曲であります。
山間の源流から涌き出した小さな小さな水の流れを描写するフルートの細かなパッセージをピアノで弾き始め、雄大なモルダウ川のテーマ、農民の結婚、月の光と水の妖精、大オーケストラで奏でる聖ヨハネの急流、そしてラストの古城を臨む広々とした流れの描写まで、合唱とピアノお二方の渾身の演奏が繰り広げられていきます。
最後の最後、川が遠くへ消え去った後の二つの和音、決まりましたね!二つ目の和音を長めにしたのとその余韻にもじわっと感動しました。

ここからは弓田さんのソロのコーナー。
スラヴ舞曲は、合唱で聴いたことがあって吉元アレンジ版大好きなんですけど、今回はソプラノソロで。
こういうかたちでスラヴを聴くのも、なかなか新鮮です。歌詞も切なくて秋にぴったりです。
もともと器楽曲だったとは思えないほど『歌』に満ちあふれた音楽なのですね。
そして、さすがソプラノ歌手さま!メロディがちゃんと上のbに上がっていて、気持ちよく聴けました。素敵!
ルサルカも大好きな曲で、このアリアもホントいい曲ですよね~。
特筆すべきは、ここの団の演奏会ですからアリアも『日本語の歌詞』なのです。
これは声楽のリサイタルでもなかなか聴ける物ではありませんよ。
弓田さんの声はホントにルサルカにぴったりで、しかもきっちりと日本語の詩を歌い上げて下さるのが素晴らしいです。涙腺を刺激される高音、ですよね。
それにしても今日のお客様はけっこうレアな経験が出来ているんだなぁと感心してしまいました。

もうひとつ、ここのコーナーでは藤村さんのピアノもキラキラと光っていました。
歌い手の呼吸にふわっと寄り添うピアノ、心に残ります。


<第3部~見果てぬ愛の夢~>

合唱組曲『白鳥の湖』
1.序奏  2.白鳥の娘たちの踊り  3.四羽の白鳥の踊り  4.出逢い  5.王子とオデットの愛の歌
6.情景  7,黒鳥の囁き  8.小さな白鳥たちの嘆き  9.終曲

言わずと知れたバレエ音楽『白鳥の湖』を、なんと女声合唱とソプラノソロのために編曲した吉元さん。
初演のときの驚きと感動を再び、と期待十分に聴かせていただきました。
オーケストラの雰囲気を存分に表現するための要は、合唱とキーボード富松さんのダイナミクスの付け方に寄るところが大きいのではないかと思います。
ピアノやパーカッションの減衰する音が作り出す表現ももちろん重要。
しかし、それらの楽器では出せない、弦楽器や管楽器を彷彿とさせる響きがホールに満ちているのは・・・合唱のメロディパートじゃない部分の人が、伸ばす音型でハーモニーを奏でていたり、オーボエやファゴットなどの表現を極めたダイナミクスやアーティキュレーションでキーボードが演奏されているからこそのことです。
そうなると、王子とオデットのパ・ド・ドゥで奏でられるピアノのアルペジオは、もうハープにしか聴こえなくなるわけです。

それぞれの曲にふさわしい表現を、合唱はもちろんのこと全員で作り上げていく。丁寧な楽曲検証、共通理解。
たくさんの要素を積み上げて、ひとつの世界が出来上がっているんですね。本当に凄いことだと思います。
最後の最後まで、大きなうねりを作り上げながら「終曲」が終わると、割れんばかりの拍手、拍手、拍手!!  

満員の会場で、渾身の演奏を終えたみなさんの顔は、遠くの座席から見ていた私にもキラキラと輝いて見えました。

今日で、終わりじゃないから。
また、合唱の新しいカタチを私たちに見せて下さい、聴かせて下さい。

団員のみなさま
指揮の吉元さん
合唱サポートのみいあさん
指導チームのみなさま

本日は素晴らしい演奏をありがとうございました。