平積みをつい買ってしまう私、新聞の新刊広告も見てるうちほしくなってしまう。

でも、アタリもあればハズレもある・・・。


村上 春樹
東京奇譚集

この本はハズレではなかったけれど、期待を超えるほどではなく、読んでいる間はそこそこ楽しめる本だったと思う。

でももう内容は忘れかけていた。


今日は遅めの昼食をとり、仕事部屋に戻った。

いつもならドアは開放しているのだが、たまたまドアストッパーを付けそこなって、ドアがバタンと閉まった。

その直後、ドアをノックする音が・・・。


ハテ?今日は上司もいないはずなのに・・・とドアを開けると、そこには若い女性の研究員が立っていた。

彼女とは廊下で挨拶する程度の顔見知り、私に何の用だろう。

すると

「外階段のところにある、赤いバケツはどなたのですか?」と・・・。

彼女についていくと、なんとなく見覚えのある赤いバケツ、

「ひょっとして、うちの物かもしれませんが、あれがどうかしましたか?」と私が聞きかえすと、

「あのバケツ、毎日ちょっとずつ置き場所が変わっているので、どなたか使っているのかと思って」


バケツごときに、どうしたんだろうと不思議になった私は、使いたいんですか?と尋ねると、

「あのバケツじゃないんだけど、私の部屋のベランダにある植木鉢の受け皿が、時々場所を変えるんです」と。


確かにそのバケツのある場所は、誰かが入っていくような場所ではないし、それに場所をちょっとずつ変える必要もないように思える。

彼女のベランダも、出入りが自由とはいえ、わざわざ受け皿を動かすのは意味がないような・・・。


そこでハッと気づいた。というか思い出した。

「村上春樹の東京奇譚集を読んだことありますか?」

「はぁ?」

「その中に、ある医師の机にある腎臓の形をした石が、毎日移動するって話があってね・・・」

「・・・」


また動いたら教えてねと私が言い、彼女は研究室に戻っていった。

不思議な春の午後の出来事。