- 目が覚めて、初めに言われたのは“敦賀蓮”の死だった -
「宰相様は、武術を嗜んでおられたのですか?」
「そうですね。もう十年以上、剣を握っておりませんが・・・」
「やっぱり!文官でありながらその体躯はズルいなって思っていたんですよ!」
「くすっ、ズルい・・・ですか」
「ええ!その長身に、服の上からでもわかる鍛え抜かれた筋肉。笑顔でありながら否やを認めぬ気迫。一回りも二回りも上の大臣たちをいとも容易く従わせていて、私なんてもう13歳なのにまだまだチビで・・・剣の稽古も全然上達できなくて、皆、私が王子だからへこへこするけど、腹ん中ではガキ扱いしてるの知ってるんです」
「悔しいですか」
「悔しい・・・し、情けないです」
「情けない?」
「私は父の子なのに、父のようにおおらかに下の者の言葉を受け入れることもできない。父のように国を守る力も、女一人・・・自分の身一つ守れない。守られてるだけだ。早く父を安心させたいのにっ・・・」
「・・・・・・・・・」
- “久遠”として生きるように言われ、国のため、王のため、王妃のため、そして、王子の為に生きることを誓った -
「13歳はまだ子どもですよ」
「でもっ、母は13歳で王妃になりました!重臣たちが言ってました。母は父が倒れたとき、立派に国主として勤められていたって」
「・・・ご自分と誰かを比べても苦しいだけでしょう」
「っ・・・!」
「飛鷹様が頑張っておられることは皆わかっておりますよ。認めようとしない者より、認めてくれる人を裏切らぬよう努めていけば、おのずと自分を認めることができるようになるかもしれませんね」
- あれ程、傍にいたいと願っていたのに・・・今は、傍にいることが苦しい -
「それに、王様は飛鷹様が愛しくて仕方ないご様子。まだ大人になって欲しくないようですから、まだ暫くは子どもでいてあげてください」
「はぁ~っ。あの人が一番子ども扱いしてくるんだよなぁ・・・」
「くすくす。そうですね」
- 父だと名乗りたくても名乗れない。目の前にいるのに気軽に触れることもできない -
「ま。暫くは子どものふりしてやるか!」
「言葉遣いから、大人に近づきましょうね」
「ぐっ!鋭意努力中!!」
- 人の命を奪った俺に、幸せになる資格はない -