ぽち君はよくだっこされる。

母にも、父にも……。

ある日、母がだっこしていた。

母に抱かれたまま、肩に顔を乗せて彼は何かを無心に噛んでいた。

はぁむはぁむはぁむ……。

「ぽち。」

と声をかけると、ピタリと噛むのをやめた。

でも口はあいたまま。

口を開けたまま見つめ合うこと30秒。

また噛み始める。

しかし、私と目を合わせたまま。

瞬きしねーのかよ。



次の日、母の服を洗濯して干していて気がついた。

穴があいてた。

オロシタテの服の衿に、穴。

前日、ぽちが無心に噛んでいたのは母の服の衿。



ぽち、君は何がしたかったのだろう。

あいつたまに、そういうことすんだよね。



おもちゃに興味なくて、ぬいぐるみをまくらにして寝るくらいに、いたずらしない子だったけど、たまにわけわかんない事して笑わせてくれる。



いいわんこだったな。