うちやまピアノ教室には
それはそれは
勇敢なママが
いまして、
それから、
うちやまピアノ教室には
それはそれは
過保護で心配症な
センセイが
いまして。

星

とある夜、
その事件は起きました。

当時年中さんだった
けれど、
おとといから
年長さんになった
ピアノ男子の
年長くんが、
レッスンにやって来て
玄関に
入ったときのこと。

なんと、
大きな蛾も一緒に
入ってきて
しまったのです。

その
バタバタ飛び回る姿は
まるで、蝉のよう。

あまりの恐怖に
蛾を玄関ホールに
飛ばせたまま、
年中くん(当時)と
ママを
2階のレッスン室へ
誘導し、
仕事中のとーちゃんに
電話するという
あまり解決にならぬ
解決方法を
試すセンセイ。

年中くん(当時)ママは、
「私、ちょっと
行って来て、
玄関開けて追い出して
来ましょうか?」
と勇敢なセリフを
仰るのですが、
いやいや、
若い女性を 
ひとりで戦場に
送り込むなんて
想像しただけで
胸が締め付けられます。

断固として拒否し、
心にバリアを張って、
全てを忘れたふりをして
レッスンを
続けます。

年中くん(当時)も
この緊急事態に、
いつもより
若干、真面目に
ピアノを弾きます。

シールを張って
レッスン終了。

そうそう、
100枚たまったんだよね。

プレゼントも選んで、
帰り支度も完了。

とーちゃんの
帰りが間に合えば、
戦ってもらう
つもりだったのですが、
未だ、帰らず。

私たちは
階段を降り、
件の玄関ホールを
通過して
外に出なければ
なりません。

勇敢なママが
先頭に立ち、
玄関ホールを
確かめます。

静かです。

どこかに
隠れているのでしょうか。

奴を刺激しないよう、
音をたてないよう、
素早く靴を履きます。

いた!

ふたりが
靴を履いているときに
廊下に目を遣ると
床に羽を広げて休む
奴の姿が。

見なかったことにして
ふたりを見送り、
息を潜めて
ひとりで玄関の中へ
戻ります。

床にいる奴を
横目に、
命からがら
リビングへ。

その後、
とーちゃんが
帰って来て
虫取り網で
奴を仕留めるまでは、
うちやまピアノ教室
及び
内山さんちは、
緊張に包まれた
ままでした。

星

勇敢なママが
戦うことを
許さなかった
過保護で心配症な
センセイは、
果たして
正しかったのかどうか。

レッスンは
滞りなく行われたの
だから、
問題はなかった
かもしれませんが、
蛾を退治する
勇敢なママの姿を
年中くん(当時)が
見ることも、また、
記憶に残る
素晴らしいエピソードに
なったのかも…。

年中くん(当時)ママは、
ひとり残された
センセイを心配して、
帰った後、
LINEをくださいました。

勇敢な人は、
やさしい人でも
あるのです。



↑内山家秘蔵の虫取り網


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