去年の秋は、台風やら前線やら、とにかく、雨がたくさん降りました。
そんな中、長岡と千葉を何度往復したことか。

身体を動かしづらくなり、声が出なくなり、そんな父に音楽療法と称して、歌を歌わせようとしたり、ジャンケンを促したり出来たのは、春頃まで。

元気な母には、ピアノを弾いてもらおうと、楽譜を用意して、練習を促して。
けれど、こちらも、父の入院、介護に忙しくなり、やはり、春頃まで。

週末は実家に行っていましたが、週半ばの平日、父は亡くなりました。
離れて住む息子と娘の喪服も車に詰め込んで、関越道に乗ったのは、去年の今日のこと。

秋には、発表会があったり、ジュニアミュージカルの小さな本番があったり。

父の枕元で、そんな話をしていたから、父は、上手に、そこに影響がないように配慮してくれたようです。

自宅で最後を迎えた父のベッドは、ピアノの音が届く場所にありました。

だから、リクエストされた「北上夜曲」も、リクエストにはないけれど、学生時代を過ごした仙台の情景が出てくるだろう「青葉城恋唄」も、子供の頃に歌ったはずの唱歌も、私が子供の頃に練習していて耳にしたはずのピアノ曲も、実はさほど音楽には興味のない父の知らないたくさんの曲も、何でも聴かせることが出来ました。

妻に、子供に、孫に、兄に、兄嫁に、姪に、狭い家は大賑わいで、どれだけ、楽しい時間だったことでしょう。

繰り返すピアノの音を聴いて、嬉しかったのか、煩かったのか、既に息を引き取っている父が泣いているのを見つけたのは、父の兄でした。

やがて、葬儀場からお迎えが来て、最後の音楽療法も、おしまい。




車に、小さな小さなでんでんむしむしかたつむり。君は、長岡からついてきたの?千葉にいたの?

今日の長岡は、冷たい雨です。
ここで、静かに、手を合わせます。