新宿奥地で友人と入った喫茶店で、隣に居合わせたのは40半ばの広告代理店勤務風サラリーマンとデザイナー風の男性。
「ねぇ、その薬なに?」
代理店風がデザイナー風に聞いた。
「これ痩せ薬だよ。」
「あ、言ってたやつね。」
「やっぱこれが一番効くね~。」
「どのくらい痩せた?」
「夏からで23キロくらいかな。」
「やっぱ病院から出るやつはすごいね。」
ぽっちーと友人はその二人の会話が気になってしまい、にやけ顔で目を合わせながら喋り続けた。
しかし、自分たちの会話はうわの空のためチグハグしてしまう。
我々は必死に目を細めて、なるべくさりげない素振りで机に置かれた薬のゴミを食い入るようにして見ていた。
しばらくしてサラリーマン二人組は席を立った。
二人が喫茶店を出たのを確かめた瞬間…
ウェイターが片付けるトレイを覗き込んだ。
「なんて書いてあった!?」
「見えなかった…。」
「ぽっちーも…。」
「でもものすごく怪しかったよね。」
「うん…。」
こうしてその怪しい薬は謎に包まれたままウェイターの手によって処分された。