新型コロナウイルスが大流行し、医療現場がひっ迫する中、日本の医療提供体制の問題点が浮かび上がり、身近な「かかりつけ医」の役割が見直されることとなった。
そもそもかかりつけ医とは、どのように定義されているのか。日本医師会によると、「健康に関することを何でも相談でき、必要な時は専門の医療機関を紹介してくれる身近にいて頼りになる医師のこと」をかかりつけ医としている。風邪をひいた時、発熱した時や体がだるい時など、体調に異変を感じた時に、すぐに相談できる医師がいることは、患者さんにとって非常に心強い。
政府は、「まずはかかりつけ医に相談を」などと呼びかけ、かかりつけ医をもち、受診することを推奨しているが、かかりつけ医には制度的な規定はなく、その意味は曖昧であるのが現状だ。何か手続きをしてかかりつけ医を申し出るわけでもないし、普段受診している病院の医師を患者側はかかりつけ医と認識していても、医師側にその認識があるとは限らない。日本は、比較的少ない費用で医療を受けることができ、医療アクセスは世界一とまで言われている。それにもかかわらず、コロナ禍では当初、感染症の専門外であることや院内感染を恐れて、発熱患者を断るケースが少なくなかった。その結果、大病院や保健所の相談所へのアクセスが集中し、病床ひっ迫・医療現場ひっ迫の事態に陥ってしまった。もはや、かかりつけ医機能は崩壊していったのだ。このようなコロナ禍の反省から、岸田首相は、今ある日本の医療提供体制を見直し、医師のかかりつけ機能が発揮される制度整備に取り組む意思を明らかにした。
かかりつけ医の機能を制度化することで、不安定な医療体制を改善し、安定化させることにつながる。医師は自分の担当する患者の健康管理に責任をもつことが求められ、経営状況やそれぞれの病院の環境などを理由に、患者を断ることはできなくなる。しかし、決まった医師が患者を継続的に診ることによって、患者の健康状態を把握するだけではなく、日頃の生活環境や病歴・アレルギーの有無、健康管理など、診断や治療の際に必要な情報を知ることができ、適時的確な医療を提供することができる。また、患者と医師の間のコミュニケーションを通して、患者それぞれのライフスタイルに合った治療目標を共有することも可能になる。
しかし、かかりつけ医機能の制度には、いくつかの問題点が存在する。医療機関に対するダメージとして、かかりつけ医として認定がもらえなかった場合、一気に患者を失い、収入を失うことになる。また、収入にあたる診療報酬体系が患者数に応じた包括払いに変更することで、収入が減る医療機関が出る可能性がある。患者への負担として、現在は、患者が自由に医療機関を選ぶ「フリーアクセス」が可能であるが、かかりつけ医以外への受診の抑制や要件を定めたりすることで、患者の自由な選択を阻害することになる。
かかりつけ医機能の普及・定着は、医療の質をさらに上げ、医療アクセス・医療コストにおいても非常に有用性が高いものである。また、高齢化が進む現在、患者を総合的・継続的に診る医師の存在は必要不可欠であるように思う。先に述べたような問題点を克服し、かかりつけ医機能を安定化させることで、充実した医療サービスを提供できるのではないか。