麓からだいぶ離れた山奥で暮らすおじぃちゃんとおばぁちゃん。
もちろん道も整備されてなく、近くに民家もお店もない。
手作りの小さな家で2人きり。
そこで3人の娘を産み、耕しお米を作り、何年も生活してきた。
何十年もの月日が経ち、子ども達は結婚し、また2人きりの生活が始まった。
もう若い頃とは違い、体のあちこちに痛みが走る。
それでもおじぃちゃんとおばぁちゃんは毎日幸せに暮らしていた。
そんなある日、
おじぃちゃんに癌が見つかった。
山を下り、病院へ入院することになった。
おばぁちゃんは心配で心配で、眠ることさえできなかった。
「大きな病院に行って手術を受けた方がいい」
いくら周りに言われても、
おじぃちゃんの言葉は
「山に帰りたい」
それだけだった。
おじぃちゃんが入院中、子供達3人は、おじぃちゃんの為に
山の木を切り、土を掘り、必死に山を守った。
既に50代の子供たちにもそれは大変な作業だったはずである。
だけど、おじぃちゃんの笑顔の為に笑顔で頑張った。
「ただいま」
車椅子に乗っておじぃちゃんが帰ってきた。
「おじぃちゃーん」
おばぁちゃんは涙を流して喜んだ。
キレイなった山を見て、ありったけの笑顔で喜ぶおじぃちゃん。
「ここで米をつくるんじゃ・・」
本当に嬉しそうだった。
そしてまた、あの山奥で二人きりの生活が始まった。
もう自分の力で立ち上がれないおじぃちゃん。
だけど、四つんばになって草をむしった。
米を作るために。
何回も転んでは必死で起き上がり、必死に働いた。
おばぁちゃんと2人で。
時には子供たちも手伝いに来た。
みんな笑顔で。
そんなある日、
おじぃちゃんが倒れた。
病院に運ばれたが・・・・・おじぃちゃんは亡くなった。
取り残されたおばぁちゃんは痴呆になった。
「おじぃさんがいないんじゃ。どこに行ったんかのう・・。」
「早く帰ってきてよ、おじぃさん」
そして山の中で、一人大きな声で叫んだ。
「おじーーーーーーーーさーーーーーーん」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「おじーーーーーーーーさーーーーーーん」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「お・・・じーーーー・・・・さー~~~ん・・・・・・」
何度も何度も叫んだ。
「おじぃさんの声が聞こえない・・」
「早く帰ってきてよ・・・おじぃさん・・」
何十年と暮らしたおじぃちゃんとおばぁちゃんの家。
誰もいなくなった。
「山に帰りたい・・」
最期まで言い続けたおじぃちゃん。
最後まで笑顔でおじぃさんの側にいたおばぁちゃん。
おじぃちゃんおばぁちゃんの笑顔の為に、一生懸命働いた子供たち。
何も無い山の奥。
これは大自然を愛し生涯を終えたおじぃちゃんとおばぁちゃんの実話。
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