グリム童話集 1 金田鬼一訳 | やるせない読書日記

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 まず、グリム童話集とは何だろう。

 

 グリムの「児童および家庭お伽噺」は、

いずれ劣らぬ二兄弟のドイツの大学者、

ヤーコップ・ルードヴィヒ・グリム(1785

ー1863)とウィヘルム・カール・グリム

(1786ー1859)とが、「ドイツのもの」に

対する徹底的の愛着心から、ドイツの民間

に口から耳へと生きている古い「おはなし」

を、その散逸または変形するに先だって

あまねく集録したもので、筆者は山村市井の

老媼などの口から聞いたままを、内容はも

とより形式においても極めて忠実に書き下す

ことを心がけた。     

     グリム童話集序 金田鬼一

 

 アンデルセンのような全くの創作童話、ペロ

ーが行ったオリジナルの童話に文学的装飾を加え

る事なく、原型のまま伝承された童話を収集して

いることになる。異論もありますが。また、十八

世紀後半から十九世紀にかけてのナショナリズム

の高揚もグリム兄弟の童話収集の背景にある。

 一巻だけで四十二編あり全四巻で二百以上の話

が集録されており、バージョンが異なる話も掲載

されている。

 僕はアンデルセンのような教訓的童話が好きで

はない。グリム童話の狐やウサギはおろか箒が話

し出す、無茶苦茶でナンセンスなところが、好きだ。

 そして、キリスト教に完全制圧されたはずのヨー

ロッパが、心象では多神教的な世界を形成している。

登場人物は王さまや王子さま魔法使いで、三巻あたり

まで読んだ限りではキリスト教につきものの悪魔は

二三篇にしか出てこない。

 正直言って、グリム童話を読むのはかなり、きつか

った。話が荒唐無稽で非論理的、平たく言えば馬鹿馬

鹿しい。子供が読みやすいように、難しい漢字では

なく、平仮名を多用しているが、これを4巻読破す

る子供いないんじゃないかと思うが。

 簡単な辞書を引けば童話は子供のための話とある。

だから現実は余り認識されず、死んだ人間が生き返

ったり蛙に少女が結婚を迫られたりする。こんな話

を幾つも読んでると辟易としてくる。

 二三冊、グリム童話に関する本を読んだので、追々

感想を書こうと思いますが、この第一巻で面白かった

一篇の感想など。

 第一巻には、野ヂシャ、ヘンゼルとグレーテル、シ

ンデレラとして有名になった灰かぶりなど有名な童話

が収録されているが、一番、面白かったのは「子供た

ちが、屠殺ごっこをした話」というとても短い話だ。

 

 (二)第二話

 

あるとき、おとうさんが豚を屠殺するところを

子供たちが見ました。お昼過ぎになって、子供

たちが遊戯をしたくなると、ひとりが小さい

子どもに、「おまえ、豚におなり。ぼくはぶた

をつぶす人になる」と言って、ナイフを手にと

るなり、弟の喉をぐさりとつきました。

おかあさんは、うえのお部屋で、赤ちゃんを

たらいに入れて、お湯をつかわせていました

が子どもの悲鳴を聞いて、かけおりました。

そしてこのできごとを見ると、子供ののど

からナイフをぬきとるが早いか、腹立ちま

ぎれに、それを、豚のつぶしてであった

もうひとりの子の心臓に突き立てました。

 その間に、赤ちゃんはお湯のなかでお

ぼれ死んでいました。

 おかあさんはやぶれかぶれになり首を

くくって死んでしまいました。

 おとうさんが畑から帰ってきました。

このありさまを見ると、すっかり陰気に

なって、それから間もなくおとうさんも

死んでしまいました。

 自動筆記で書いたような話だ。そう言えば

子供の愚鈍な頭の中には、こんな想念が発酵

しているようだ。なんの教訓もなくナンセンス

であるが、面白い。