「神経症の時代」とセンセーショナルな題名がついているが、森田正馬の人なりの紹介と
森田療法主義者、岩井寛について、そして巻頭では倉田百三という大正期の作家の「神経症」
克服について書かれている。
読み物(読んですぐ忘れる)としては面白かったが、神経症の知識の摂取としてはあまり役立った
読書ではなかった。第一章で倉田百三(1891年2月23日 - 1943年2月12日)という大正、昭和期の
作家(「出家とその弟子」などの著者)が三十四歳の時、神経症に罹患して様々な苦難をへて悟り
に辿り着く過程が描かれているが、どうも納得いかなかったのが倉田百三が神経症に陥る理由が
はっきりしない。
私の知っている人は少年期、父親に虐待を受けて神経症を発症してしまい、その為に職場を辞めて
しまった。親から受ける幼少期の暴力は人間にとんでもない負の要因を与えるようであるし、今日でも
神経質的性格、遺伝的体質、脳内生化学物質の変化などが理由としてあげられるが、ここで著者が
あげている倉田の発症には特に原因がない。書きあげてると疲れるのでしないが、三回読んだが、ど
うもにも確固とした原因がよく分からず、神経症になってしまう。どうも父親の死が原因の一つのよう
だが、それについて著者は重きをおいていない。
倉田は不眠症、耳鳴り、視界の全てのものが動き始める症状、常に二つのものを見ないと気がおさ
まらない症状、頭の中に「いろはにほへとちりぬるを」と文言がずっと続く症状などに悩まされる。読者
は面白ささえ倉田の症状を読んで感じてしまう。そして「あるがままに」という森田療法によりどうにか
治癒の手がかりを見つけるのである。この時代、治療には薬物はいっさい使用していない。
その他、森田療法の創始者、森田正馬も神経質で完璧主義であるゆえに神経症に罹患した。
でも私のような完璧主義ではなくてぐうたらな人間でもこの頃、精神的におかしいので全ての人間
にあてはまることではないような気もする。
森田正馬についての感想も書こうとしたが興味がなくなってしまったが、「ありのままのことを逃げず
に全て受け入れる」というのが神経症に対する森田療法の基本理念であると理解した。