悶々ホルモン       佐藤和歌子 | やるせない読書日記

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書評を中心に映画・音楽評・散歩などの身辺雑記
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つくづく「下町酒場巡礼」という本は大した本だと思う。1998年に三人のライターによって書かれた


今まで見過ごされてきた下町の酒場の探訪記であるが、「人が酔うのは、酒場ばかりではない」と


いうコピーどおりにその頃から衰退しつつあった、下町酒場の風情ともつ焼きに代表される食文化に


スポットをあてている。優れた「東京本」の一冊で「悶々ホルモン」に紹介されている「秋田屋」「埼玉屋」と


「新潟屋」「うち多」も「下町酒場巡礼」でルポされている。


多分、この本がなかったら「悶々ホルモン」の企画もあがらなかっただろう。


「下町酒場巡礼」は店の住所も電話番号も記載されておらず、自分で探し当ててみなさいというコンセプト


で僕もこの本を片手に「埼玉屋」を探して薄暮の東十条を歩き回った記憶がある。「埼玉屋」は評価の高い


店だが、店の大将が強気系の人でどうも軟弱者には肌が合わなかった。勿論、モツはうまいが。


ここより良く通ったのは「埼玉屋」からさほど離れていない「新潟屋」だ。


池袋あたりで本を買ってから、埼京線に乗って十条で降りて、踏み切りを渡って道の狭い商店街に出る。


典型的な下町の商店街で大衆演劇の篠崎演芸場がある。十分ほどあるくと四辻に出て真っ直ぐの道は


陸橋になり暮色の中にいつも寂しげな東十条の駅。駅の前あたりから道は坂になってくる。右手には池袋


の高層ビルが見える。この坂を下りると下町の風情になる。坂を降りきると四つ角で右は「埼玉屋」で左は


「新潟屋」。五時頃でようやく座れるほど人気がある。家族でやっている店で客も地元の常連がほとんど。


ここのハイボールがホワイトの炭酸割りを大きなグラスについでくれてシロをコブクロの塩で飲むとうまい。


一杯、中生、二杯・三杯がハイボールを飲んで外に出るとほどよく酔っぱらっている。


安いしうまい、モツ焼きは庶民の味方である。


と自分のことばかり書いても仕方がない。ホルモン焼きは好きなので、食べ歩く時の情報にこの手の


本を購入している。今週の新潮の書評で福田和也が褒めていたので(何故、取上げたか最後のほうで


分った)購入。ライターとしてホルモンヌとして若い女性の身空でこきたないオヤジのあつまるホルモン


屋の紹介をするのだが、単なるホルモン焼き屋紹介では文章が続かないのでライターとしての身の回り


のことも書いてある。でまあお店紹介とライターとしての自分の記述が混合した不思議な出来合いにな


っている。本の中頃までは二十代後半でしょっちゅう酒びたりで一枚四千円の原稿を書くまっとうな仕事


にはついておらず、服装も地味でホルモン焼きが大好きときてなんとなく「クワバタオハラ」の眼鏡をかけ


ている方のような相貌が眼に浮かんだ。いい女ってこんなに飲まないだろフツー。


ライターという稼業にしても多少自虐的なので、まあライターのお定まりの三流大学卒とかそんなもん


かなと思って著者紹介を読むと慶応大学卒でしかも在学中に本まで出している人なのだ。考えてみ


れば連載が「モーニング」で単行本が新潮社というのはよっぽど優秀でなくてはできないではないか。


しかも番外でダーフク先生、福田和也が登場する。学生時代の恩師ではないか。


そう思って見れば友達のOL嬢はなんかきれいっぽいし、会社を辞めてしまった男友達はDVD、CDを発売


するし、モツ焼きの帰りにバー飲み直したりで結構、おしゃれである。


するとご本人も眉目秀麗な才媛なのかしら。少なくとも「クワバタオハラ」ではないだろう。


いいお店の情報を得るという本来の読書の目的であるが。


浅草の「喜美松」という店が絶賛されていた。今度行って見よう。


追記 コメントで佐藤嬢の出演している番組を教えてもらいました。


   http://jp.youtube.com/watch?v=lYqwb02A30A