ヘミングウェイの小説中や実生活での酒との関わりを書いた本。カクテルの薀蓄が豊富で
バーなどでさらりとモヒートのエピソードなどを話すとヘーっと言われること請け合いである。
ま、こんな具合。
ヘミングウェイって1940年から20年間、キューバに暮していたんだけど彼のお陰で有名になった
カクテルが二つあってさ、一つはフローズン・ダイキリでもう一つはモヒート。ホワイト・ラムベース
でライム果汁と砂糖を加えてステア。それにソーダを加えて、ミントの小枝を飾るんだよ。昔、海賊
のキャプテン・ドレークが作ったという説もあるんだぜ。云々。
それだけの他愛も無い本。すぐ読めて楽しい。
パパ・ヘミングウェイは朝からハイボールかトム・コリンズを飲んで結局一日中酒を飲んでいた。
挙句の果ては五十歳で医者から禁酒を言い渡された。まあただのアル中。息子たちにも十歳から
酒を飲ませていて、一番下の息子はアル中で死んでしまった。
僕は酒がどうの食い物がどうのなどが小説の本分だとは思わない。谷崎潤一郎や川端康成や三島
由紀夫に食い物がどーしたこーしたのエッセィなんて無い。もっとましな事を文学は扱うものだ。
それはともかくカクテルの成立の話などは小粋で楽しい。まあそれでいいのだ。
思うにキューバのカクテルが有名になったのはヘミングウェィの力が大きい。個人的には小説家として
のヘミングウェイなんて全然、興味がないが。
幾ら名声のある小説家でも朝からのべったら酒ばかり飲んでいるのは馬鹿じゃないかとも思う。
この本で興味深かったのは
ヘミングウェイはハイボールが好きで、特にペリエで割るのが好きだった。うまそうなので今度
家で飲んでみよう。
ヘミングウェィの考案したウィスキーのカクテルでスコッチとライムを半々ずつカクテルするものが
ある。アーネスト・スペシャルという、これ美味いかもしれない。
も一つ「午後の死」というすごいカクテルを考案した。
レシピはアブサンをシャンパンで割るだけという実にシンプルなもの。まず細長いフルート型の
シャンパングラスを用意し、アブサン(なければペルノ)を注ぐ。ここへ冷やしたシャンパンをゆっく
りと注ぎ足す。すると萌黄色のアブサンが乳白色に変わる。これで出来上がりである。
ひぇー。どんな味なんですたい。なんでも三杯飲むとぶっ倒れてしまうらしい。
しかし、これ美味いのか?
ノーベル賞作家、アーネスト・ヘミングウェイではない我々は財布と体のことを考え、朝からハイボール
などというヤクザなことはせずつつましやかに仕事の終わった夕暮にちょこっと酒を飲むのが分相応
つうものだ。
パリの高級ホテル・リッツのバーがホームだったパパ・へミングウェイと場末のヤキトン屋が行きつけ
の我々とは違うのだ。でもまあ同じように酔っぱらうけどね。