夜空 | やるせない読書日記

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何本か自主映画用の脚本(というほどのものではないが)

を書いたのだけれど。どう考えても素人では映画にできない

コンテが何本かある。

せっかく書いたのでブログにでも載せて完結させてしまおう。


【夜空】

シーン1

午後8時頃の東京郊外の夜空。多磨丘陵あたりの

マンションが立ち並ぶ光景。初夏の雨上がりの美し

い夜空。空を横切って飛ぶ、飛行船。

飛行船は不気味な感じで撮る。


シーン2

高層マンション遠景。遠景から高層階の一室をアップ。


シーン3(室内)

予定調和な、陳腐な定型的な映画的文法で撮られる室内。

リビングのソファーに寛ぐA氏。(38歳)リビングの床で遊ぶ

男の子。来年幼稚園。キッチンで夕食の後片付けをする妻

(27歳)。

妻は美しいことが一番の条件。背がたかくほっそりとしていて

色が白い。


A氏はぼんやりと窓外に広がる初夏の夜空を眺めている。

遠い遠い昔の記憶に意識の触手が伸びていく。


シーン4

夜空の遠景。どこかの町で始まった盆踊りの音がかすか

に聞こえる。


シーン5(室内)

息子がA氏の膝に乗ってくる。こどもの匂い。

手には絵本を持っていてA氏に読んでくれとせがむ。


絵本を開いて、驚くA氏。A氏が幼稚園の頃

読んだ絵本と同じ絵本。


シーン6(30年以上前の幼稚園)


小さな汚い幼稚園で緑の園服を着た幼稚園の先生が

園児にこの絵本を読み聞かせている。

オールドミスで口紅の色が真っ赤。美人ではない先生。

先生が開いてる本の場面と子供にA氏が見せている

場面が同じ。


シーン7

絵本、夜空を飛んでいるコッペパンの絵。


シーン8

高層マンション遠景。夜空。盆踊りの音


シーン9

子供を抱いているA氏。ふいに記憶が蘇る。


シーン10(過去)

A氏(A氏の子供)は二階の部屋の窓から暗い夜空

を眺めている。まだ暗かった夜。彼方から盆踊りの

太鼓の音が大きく聞こえてくる。

初めてのもの音に怯えるA氏。


シーン11

昔の夜。盆踊りの音。


シーン12

病院。一人で母親を見舞いに

来るA氏

見舞いを終えて帰るA氏に仲の悪い弟が

話しかける。

「俺にお袋を押し付けて結婚して出て行って
 遠巻きにして親が死ぬのを待っている。」
憮然とするA氏。


シーン13

昔の夜。盆踊りの音。


シーン14

「盆踊りの太鼓の音よ。怖くないのよ。」

A氏の母親。A氏の妻とは別人にすること。

美人ではないほうがいい。ただし母性的。

「ごんおどり」A氏はつぶやく。


シーン15

暗がり寝室。妻が微笑んでいる。

暗がりの中の妻の裸身。

シーン16

リビングの一室。息子は妻のほうへ行く。

妻と息子はベランダへ。

不気味な飛行船の揺曳を空に見つけ。

妻にしがみつく。妻は優しく抱きしめる。


シーン17字幕

人はいつまでも神話の中にはいられない。