最近の父の口ぐせ。 | 少~し酔ってます。

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縦歩きのカニの日常

 

最初は聞き違いじゃないかと耳を疑った。

 

ベッドから出ていつもの体操を済ませ、スーツに着替えて6時ごろに階下へ降りていくと、早朝からテレビを見ていた父が振り返った。

「おはよう」

「ああ、おはよう。あんた、もう起きたの」

「ああ」

そのあとの一言は、僕に言ったのか、独り言だったのか分からないような呟きだった。

「早っ」

 

念のため書くが、「そうっ」と言ったのではない。

「はやっ」である。

今さら若者言葉と言うつもりはないし、子供から僕を含めておじさん、おばさんも使ってはいる言い方だが、84歳の老人が「はやっ」と言うのは初めて聞いた。

最初は聞き違いかとも思ったのだが、その後も父は折々に似たような言葉を吐いた。

新聞を取って外から戻って、「さむっ」。

数独に挑戦して、「むずっ」。

キムチを口にして、「からっ」。

 

一日見ているテレビの影響だろうか。

「教育上悪い」とPTA団体に抗議してもらうにも、「スッキリ」なのか「徹子の部屋」か、それとも「ミヤネ屋」か「プレバト」か、相手が分からない。

とにかくテレビの前に座ってる時間が、「ながっ」なのだ。

 

聞かされる方はなんとなく抵抗があるが、本人が気に入って使っているんだろうから、まあいいにしておく。

多分、意識もせずに自然に口にしているんだろうけれど。

 

まさか「早い」の「い」が思い出せなくて、絶句してるわけじゃないだろうね。

 

 

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