Highland Aire

 

 

 

Highland Aire

 

 

 

ここ数日、やっと、ライル・メイズのソロ・アルバムを聴いています。もう10年くらいのあいだ、ちゃんと聴いてなかった。本当は半年前に聴いておきたかったけど、、、聴けなかった。ずっと。

 

1986年にリリースされた、ライルのファースト・ソロ・アルバム『LYLE MAYS』は、1985年にニューヨークのパワー・ステイション・スタジオで録音されました。

 

アレックス・アニーニャ (ドラムス)

ビリー・ドルーズ (サックス)

マーク・ジョンソン (ベース)

ビル・フリゼール (ギター)

ナナ・ヴァスコンセロス (パーカッション)

 

ナナ以外の参加メンバーは、全てパット・メセニー・グループ人脈から外れる人選です。しかし、このアルバムは、ある意味でPMG以上にPMGらしいアルバムだと思います。日本盤のライナーに成田正が書いた一文があります。

 

 

このアルバムが発表される86年まで、パット・グループの音楽に占めるライル・メイズの位置づけは、わずかな日本公演のステージを通じて判断するしか方法がなく、大方の予想はついていたものの、果して、あの特有の音楽のどこまでがライルの手によるものなのかが、多分に疑問視されていた。が、例えば、本作の「スリンク」には、あの名曲「ファースト・サークル」の重要なモチーフが散りばめられているほか、「ハイランド・エアー」のシンセ・パートや、「アラスカン・スウィート」のSEサウンドなど、パット・グループの音楽の骨格となる成分が、ここで彼等との諸作以上に、雄大に個性的に鳴り響いていたのである。

 

 

PMGのステージを実際に体験した人は、すでに当時からPMGにおけるライルの音楽性が、PMGにとって相当に重要なものである事は「実感」として体感できていたようですね。私はPMGのコンサートは3回だけ体験する事ができました。(最後になってしまった『ザ・ウェイ・アップ』来日公演は、四月にインフルエンザに罹って鑑賞を断念しました。悔やんでも悔やみきれなかった・・・)

 

PMGのコンサートのイメージを、いま思い出すだけでも、とにかく自由奔放にギターを弾きまくる、パットの背後に鳴り響いている「音楽」は、ライルによって作り出された音楽であった事は、容易に思い出せます。

 

このライルのファースト・ソロ・アルバムが、頭の中にあらかじめ「インプット」されているから、特にそう思うのでしょうかね。まだライルがソロ・アルバムをリリースする以前なら、PMGの音楽の大半はパット1人によって作り出されたというイメージもあったのでしょう。

 

 

このアルバムは制作に約1年を要したと記されています。もちろんレコーディングが1年間かかったという事ではなく、企画、作編曲、リハーサル、プログラミングなども含めて、レコーディングが完成するまでの期間が約1年という事です。ライルのセカンド・ソロ・アルバムの『ストリート・ドリームス』(1988年)が、わずか2週間で制作された事を考えると、かなり大きな違いと言えるでしょう。

 

 

改めてじっくりと聴いていると、最初のソロ・アルバムに賭けたライルの只ならぬ思いが伝わってきます。細部まで徹底的に「ライルによる、もう一つのPMG」の再現を意図していたと思えるほどに。やはりライルは、「PMGの音楽は自分の音楽がかなりの比率を占めている」という事を、世にアピールしたかったんじゃないかなと思いますね。上掲の「ハイランド・エアー」は特にそう感じます。まあ、全6曲全部大好きなんですが。

 

私は1992年の2月頃にこのアルバムを毎日聴いていました。人生において重要な出来事があると、その時に聴いていた音楽も同時に鮮明に憶えているものです。年だけではなく、月も憶えています。(たまに日付も鮮明に憶えている曲もありますね)

 

ライル・メイズのソロと、ジェントル・ジァイアント『フリー・ハンド』と、スーパー・トランプ『クライム・オブ・ザ・センチュリー』のカセットテープをカバンに入れて、ウォークマンで交互に聴きながら図書館に毎日通っていた、寒い寒い2月でした。ライルのファースト・ソロ・アルバムは真冬に似合う音楽だったと、つくづく思い出しますね。今年の8月の末が、特に暑いから・・・

 

セカンド・ソロの『ストリート・ドリームス』は、真夏!という作風でもなかったけど、真冬!の音楽ではなかったなあ。「八月」というタイトルの曲もありました。

 

August

 

 

 

 

 

「八月」に聴こえますかね? 今の日本列島の猛暑を連想する曲ではない気はします。陽春と初秋が微妙に入った、アメリカ大陸のどこかの「八月」かな。アメリカ大陸に行った事がないので、「どこ」とは言えませんけれど、、

 

 

どちらも、ビル・フリゼールのギターが素晴らしいアルバムでした。フリゼールとライルが本格的にグループを組んでも面白いなと思うほどに。ただ、ライルのソロ・アルバムでのフリゼールのギターって、パットが「あのパットのトーン」で演奏しても、ライルの音楽にぴったり合っていた気がします。そう感じる事自体が、ライルこそがPMGサウンドの要である事を遠回しに証明しているような気もするのですが、どうでしょうか?

 

 

To be continued