Pat Metheny Group Phase Dance
はじめまして。pmlmと申します。
私は、主に70年代のプログレッシヴ・ロックを長年聴いてきておりました。この「プログレ」というジャンル(?)は、ジャズ、ブルース、カントリーのようにジャンル自体に確固とした形式や音楽スタイルが確立されているという類の音楽ジャンルではないようです(ある種の類型は見られますが、「クリムゾン的」とか「イエス的」とか)。60年代末から70年代前半の「プログレ全盛期」においては、アーティストの数だけ音楽ジャンルが存在する。いや、各バンドのメンバーの数だけ音楽ジャンルが同居するというような様相で。そんな音楽ジャンル、というよりは、当時のロックシーンが時代に要請された、1つの大きなムーブメントの中に、後に「プログレ」と呼ばれるモノの実体があったように思います。
例えば抒情派プログレとして人気の高いCAMELやRenaissanceと、初期の電子音楽とサイケデリック精神が結びつたドイツのロック(ジャーマン・ロック)と、地中海の民族音楽性を如実に反映した所があるP.F.M、Mauro Pagani、AREAや、Aphrodite's Child『666』などが、プログレの解説本には一緒くたに「プログレ」として掲載されております。こんな「音楽ジャンル」は他にはあまり見当たらないと思います。
「プログレ」の実態が、そんな実情に至った理由としては、1970年前後のロック・シーンにおいては、他ジャンルの演奏家や、多種多様な音楽的素養を持った人たちが、「当時のロック」の枠の中で、各人の音楽的背景に実直に創作活動を行ったという点が挙げられます。その結果として、本来は一括りに出来ないはずの多種多様な作品群を、何か一括りに捉えるための便宜的な命名として、今日に至るまで「プログレ」と呼ばれてきているように思えます。
という訳で、所謂「プログレ・ファン」と呼ばれる人たちは、広く浅くの傾向ではありますが、非常に様々なジャンルの音楽に手を出している人たちが多いように思います。私もそんな多読・乱読ならぬ「何でも聴いてやる」という時期がありました。しかし、年齢を重ねると不思議に毎日聴く音楽は、似通った同傾向の音楽が多くなったなあと感じるのもまた事実です。ただ単に新しい物への好奇心が薄らいで、ものぐさになっているだけなのかも知れないですけれど。
そんな、ついつい好きな音楽だけを惰性で聴いてしまっている最近の音楽ライフですけれども、ひょんな事で今まで聴く機会がなかった音楽を聴くことによって、今までにない刺激を受ける事も少なからずあります。かつてのように「プログレッシヴ」の名のとおり「進歩的」「革新的」な音楽でなければ「プログレ」ではないという時代は、もう既に遠くに去ってしまった気がします。狭義のロックの枠の中だけには収まらない、自分の音楽ライフの盲点になっている音楽を「良い!」と思えた時の感激は、1つの音楽ジャンルだけを追求している人(勿論それは、とても尊敬すべき音楽人生です)にはなかなか味わえない一瞬だとも思います。元来が音楽ジャンルの垣根に節操のない(?)「プログレ・ファン」から始まった私の音楽ライフなので、そういう節操のなさを逆手にとりつつ、今まで聴いてきた音楽を書き綴っていければなと考えております。
ただ、そういう反面、やはり一個人が嗜好する音楽というのは、どこか似通った所もありますね。人から指摘されて初めて「自分はこういう傾向の音楽が好きなんだ」と思い知らされる事も多々あります。私は基本的には、音楽ジャンルに垣根なんかないと思っておりますが、一個人の心のなかには個人的なこだわりとしての「音楽ジャンルの垣根」のようなものが、無意識・無自覚的に存在するのではないのか? そういう自分の中の傾向を、どうにか一連の文章にしてみたいという気持ちから、当ブログを始めた次第であります。
プログレ系を語ることが多い私ですけれども、他ジャンルとされる音楽を語る時のほうが楽しいという事もしばしばです。前置きがかなり長くなりましたが、プログレ・ファンの無節操さらしく、「プログレ・愛」を基本にしつつも、無節操、いや、ある意味プログレッシヴな姿勢(苦笑)で関連音楽、関連領域、あまり関連のなさそうな音楽についても書いて行くつもりです。
そういう趣旨で始めて行きたいと思いますので、最初の一曲はプログレ・ファンにも人気があると思われる、パット・メセニー・グループの最初期の人気曲『Phase Dance』!
『Phase Dance』が収録されているのは「パット・メセニー・グループ」名義としては1stアルバムです。アルバム・タイトルもズバリ『Pat Metheny Group』!
1978年リリースです。
まあ、パットとライルが出会って最初に共作した『Watercolors』(1977年)が実質的な「パット・メセニー・グループ」のデビュー・アルバムだという見方もありますかね。
私は1990年頃に彼らの音楽の虜になったので、初めて行った来日コンサートは1996年の『We Live Here』ツアーでした。パットは初期のメセニー・グループの作品に対しては、後に「大学生のバンドのような拙さがあって、もう演奏するのが恥ずかしい」という趣旨の発言をしています。だからなのか、この『Phase Dance』は私の大好きな曲なのに、一度もライヴで観た事はないんです。
上に掲載した動画はアルバム・リリース直後のフレッシュな演奏ですが、ライヴ・アルバム『Travels』(1983年)に収録されたバージョンが、一番好きですね。あのライヴ・テイクのギター・ソロは、私にとってパットのギター・ソロの中でも大好きなソロです。シンコー・ミュージック刊行の「スーパー・ギタリスト パット・メセニー」の楽譜をコピーした思い出があります。いまだに完コピできておりませんけれど・・・
イントロの変則チューニング「ナッシュビル・チューニング」の心地良さは、実際に弾いてみると延々と弾いていられる美しい響きがあります。アンドリュー・ヨークの『サンバースト』(この曲も変則チューニング!)の中間部分にも、似た部分がありますね。ヨーク本人もパットからの影響をほのめかすような発言を読んだ記憶があります。
そしてバットのギター・ソロもライルのピアノ・ソロも、「パット・メセニー・グループ」としてのソロ演奏の原点とも言えるソロ・パートだと思います。『想い出のサン・ロレンツォ - "San Lorenzo"』の方は(この曲でのライルのピアノ・ソロがまた良い!)、パットはソロを取っていないので、『Phase Dance』は形式面でも、その後のメセニー・グループの楽曲スタイルの一つの雛形になった気もしますね。コンサート・ツアーを精力的に続けるうちに、『Phase Dance』は楽曲の構成・アレンジ自体はあまり変化はして行きませんでしたが、パットとライルのソロ・パートは大きく変化し、成長して行ったような気がします。
「初期の曲は拙い」というパットの意向(?)には反してか、私は最近はそんな最初期のパットとライルの共作曲ばかり好んで聴いております。この頃からパットの音楽の「本質」自体はあまり変わっていないと思うんだけどなあ。1990年頃からはジャズ・ギタリストとしては求道者のような「名手・名人」になって行ったパットですが、この頃の「素朴さ」「ひたむきさ」に何故か惹かれる、今日この頃です。
こちらは、ギタリストとしても、音楽家としても円熟期を迎えつつあった頃の『Phase Dance』
こちらも、もちろん素晴らしいです!
Pat Metheny Group - Phase Dance - 1989
初期の演奏や、『Travels』でのバージョンに比べると、本人たちが「拙い」と感じていた部分を、より発展・改良しようという意図が聴き取れるような演奏になっている気がします。しかしどの時期でもいいから、『Phase Dance』を生演奏で観たかったなあ・・・
パットの音楽、特にメセニー・グループのいくつかの作品を聴いていると、プログレッシヴ・ロックのアーティストとの共通点を感じる事が多いです。それは私がプログレを聴いてから音楽を、より深く・広く聴くようになったから、そう感じるだけなのでしょうか。パットもライルもビートルズは大好きだと公言しているし。パットは特にジミ・ヘンドリックスに大きく感化されたとも言っていますが、プログレ系のアーティスト、例えば最も世界的に有名なピンク・フロイドや、作風が結構被ると思う、マイク・オールドフィールド、イエス、ジェネシスあたりに対する、パットの言及は目にした事がないですね。ほぼ同世代人として、絶対に少しは意識してると思うんだけどなあ・・・。どうなんでしょうか?