嘘八百 | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

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備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。

2017年 日本
監督: 武正晴
 
 
~ だって、役者がいいですから ~
 
WOWOWにて録画鑑賞。中井貴一さんに佐々木蔵之介さん。この魅力的なキャスティングで、心惹かれるものの劇場で観ようとは思えない邦画アルアルの微妙な手ごたえ(笑)。WOWOWだったら喜んで、ってことで(*´з`)。観ていないのですが、監督の武正晴さんは「百円の恋」で注目された監督で、オリジナル脚本だそうです。関西を舞台にしたコメディ作品をとのプロデューサーのオファーで産まれたのが”千利休ゆかりの幻の名茶碗”に関わる詐欺を巡る一発逆転ストーリー。
 
 
目利きではあるもののうだつがあがらず、一発大穴狙いでワゴンで移動しながらちまちまとした小銭稼ぎばかりしている古物商の小池則夫(中井貴一)。ある日ラジオの占いコーナーの「西に吉あり」の言葉に従ったところ由緒ありそうな蔵持ちの屋敷を発見。そこの主人(佐々木蔵之介)に断って蔵の中の先代が残したというガラクタの鑑定をさせてもらったところ、とんでもないお宝発見?!
 
それを表に出さずに蔵の中身ぜんぶまとめて100万円で買取り交渉。ほぼ、儲けなんてないんですがね、慈善事業みたいなもので・・・なテイでいったらまんまと交渉成立。目利きのできない跡継ぎでラッキー♪お陰でガッポリ大儲け。やっとあてたぜ一攫千金。で大喜びの大はしゃぎ。
 
 
・・・と思ったら、実はすっかり騙されていたのは小池の方だった。と、後からわかるのですが。そしてそんな小池の心の浮き沈みを他所に離婚した妻(堀内敬子)が親権をもつ一人娘のいまり(森川葵)は屋敷の庭先でジオラマ作りに没頭していた家主の息子(前野朋哉)と変に親しくなっちゃってたりして、息子はあからさまにいまりに一目惚れっぽくてお父さん大慌て。
 
 
そしてさらに後日、なぜだか良家揃って晩ご飯を囲んでいちゃったりするナゾ(笑)。屋敷の主人・・・ではなく、実は落ちぶれた陶芸家の野田佐輔(佐々木蔵之介)でした。家族の生活費はほとんどが奥さん(友近)のパート収入。かつては由緒ある賞もとった、才能ある陶芸家だったらしいのですが・・・。
 
 
野田の陶芸家としての腕前を見込んだ小池は、ある一攫千金の大勝負を思いつきます。今まで未発見だった千利休にゆかりの茶碗を見出した、というストーリー。野田は、忘れかけていた陶芸家魂に火をつけて寸分たがわずいかにも本物らしいと誰の目も騙せるほどの名茶碗の贋作(いや、本物が実在していないので贋作とは言わないかもしれませんが)作りに没頭します。
 
 
茶碗だけがあっても意味はありません。それが本物だという確証になるべき、利休直筆の譲り状と、年代物の本物に相応しい箱もなくてはいけません。そこでタッグを組んだのが野田の地元の飲み仲間。たまり場の飲み屋の主人(木下ほうか)は実は警察の筆跡鑑定すらも見抜けない程の達筆者で文書捏造の達人。表具屋のよっちゃん(坂田利夫)は紙に関する知識に長けていて、材木屋(宇野祥平)はどんな箱でもお手の物。ドリームチーム結成。
 
 
カモとすべきターゲットは、大店の古美術商を営む樋渡忠康(芦屋小雁)と、樋渡とつるんでいる古美術界の権威である棚橋清一郎(近藤正臣)の2人。小池はいつもこの2人組にギャフンと言わされっぱなしなためいつか鼻を明かしてやりたくてウズウズ。また、野田も陶芸家としての未来を失い人生が変わった原因にこの2人が深く関係していました。いざ、負け組チームによる一発逆転の大仕掛け!
 
その他、何の他意もない純粋な利休マニア(笑)なのに結果として小池と野田の勝負を後押ししちゃう学芸員役の塚地武雅さんなどもなかなかいいアクセント。
 
はっきりいって、筋書き自体は色々と、そりゃないだろーの不自然&都合良すぎだし、人生の逆転劇だとか、失っていた夢を取り戻すとか、親子や夫婦の絆とか、ヒューマンドラマのモチーフも一通り盛り込んでいる割にはあまり深くないというか、心にずーんと響くものはありません。二転三転の小回転も「おっとそうくるか(笑)」と楽しめますがあっと驚くほどの仕掛けはなく。でもですね、なんといっても役者がいいんですよ!
 
中井貴一さんと佐々木蔵之介さん、この2人を中心に。彼らを眺めているだけで十分最後まで楽しめるし、脚本がとか演出がとかいうよりも、彼らの演技が何よりも一番小気味いい。もしかしたら、気合の入り過ぎてない、凝り過ぎてない、深すぎない脚本は逆に役者の魅力を引き立てるためによい効果を醸し出しているのかもしれない、とも思ったり。何気に一番の食わせ物はいまりだったのね、のエピローグからのエンディングも微笑ましいというか。確かこれ、去年のお正月映画でしたか。スクリーンで観るかどうかは別として、お正月にのんびりほのぼの平和に楽しむ映画としてはほどよく小気味よい娯楽作品にまとまっているかと。
 
 

 

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