17歳の肖像 | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

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備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。

2009年 イギリス
監督: ロネ・シェルフィグ
原題: An Education
 
 
WOWOWにて録画鑑賞。公開当時、サンダンス映画祭で観客賞と撮影賞を受賞したり第82回アカデミー賞にも複数部門にノミネートされて結構話題になっていたのを覚えています。実は1度レンタルで観たことがあったんですがすっかり内容忘れてしまっていたので、もう一度観たくなりました。するとまぁ。いま改めてキャスティングを見ると、キャリー・マリガン、ドミニク・クーパー、ロザムンド・パイク、エマ・トンプソン、サリー・ホーキンスと超豪華&私のドストライクなメンバー!Σ(・ω・ノ)ノ
こりゃもう、内容どうあれ保存候補ですが(笑)、映像も綺麗だし内容も良かった。昔よりやはり、感じるものが多かったです。通り過ぎてみるとよく見える人生の中の揺らぎの時期。最高のキャスティング。
 
 
イギリスの人気記者リン・バーバーの自叙伝を元に映画化された17歳の少女の年上男性との恋愛とほろ苦い人生の体験を描いた映画。舞台は1961年のロンドン郊外。第二次世界大戦からの復興過程にあるイギリス。若い時期に戦争を体験し、階級社会のイギリスでの経済的な苦しさや苦労を身をもって体験している親世代と、戦争を知らない世代の子供。私の両親もギリギリ、直接的には戦争体験していませんがそれでも時代的には割と近いものがあるので、親世代・子世代の価値観や親の子への期待、子の鬱積や反発なども共感ポイントが沢山。でもそれより何より、ちょっとレトロなファッションと初々しいキャリー・マリガンがメチャクチャ可愛い( *´艸`)。
 
 
高校生のジェニー(キャリー・マリガン)は、中産階級のごく普通の高校生。経済的に苦労してきた学歴コンプレックスの父親は、自分と同じ苦労をさせたくない、自分が得られなかったものを与えてあげたいと思う一心で、薄っぺらい教育パパ化しています。どの国もどの時代も親の想いは同じ、親の心子知らずも一緒。父親の期待を裏切らず成績優秀なジェニー。チェロも習っていて管弦楽部の活動にも参加しながら(内申点アップポイント)、オックスフォード大学を目指しています。でも、成績、面接受けの点数稼ぎ、大学進学にばかり口うるさい父親(アルフレッド・モリーナ)をちょっと鬱陶しいと思うのもごく普通の女子高生。パリに憧れていてシャンソンのレコードを聴いてウットリ。
 
 
そんなジェニーが雨の日チェロを抱えて歩いていると通りすがりの車に乗った男性が声をかけてきます。最初は警戒したジェニーですが、紳士的で知性的な香りがする”大人の男性”デイヴィッド(ピーター・サースガード)と会話が弾むうちにすっかり打ち解けます。自分の倍ほども年上の、非日常の道案内人デイヴィッド。デイヴィッドは「才能ある若い人の手助けをしたい」といって、「友人達も一緒」の音楽会やディナーにジェニーを誘うようになります。
 
 
デイヴィッドの友人だと紹介されたダニー(ドミニク・クーパー)とヘレン(ロザムンド・パイク)と一緒に、オークションや高級レストラン、ナイトクラブなど煌びやかなセレブリティの世界、幻惑的な大人の世界をみせられてすっかり魅了されてしまうジェニー。うんうん、わかるわかる。今はまだ自分には開かれていなかった扉。そこに、素敵なエスコート付で同級生たちより一歩先に足を踏み入れる高揚感とちょっとした優越感。自分がすごく特別な存在で、大人の仲間入りをした気分になったことでしょう。若くて可愛くて賢いジェニーだから、勿論周囲の大人たちも喜んで歓迎し、可愛がってくれます。そりゃあ、舞い上がっちゃいます。
 
 
恐ろしく豪奢な館に山ほどの高価な美術品に囲まれて暮らすダニーとヘレンは絵に描いたようなスノッブなハイソ・カップル。自分が両親と暮らす地味で質素で面白味のない家庭となんという違い。こんな世界が存在したなんて・・・ねぇ。驚きです。彼らと親しく交際するデイヴィッドも当然同じ階級に属しているんだと信じ込むジェニー。よく考えたら、でも、集まるのはいつも外のレストランやナイトクラブかダニーの家で、一度もデイヴィッドの自宅には招かれないことには気が付かない。
 
 
有名大学への進学が一番の幸せへの近道だと信じる両親(主に父親)は、最初はジェニーが受験勉強以外のことに気をそらすのをよく思いません。ところがデイヴィッドの紳士的な物腰と巧妙な話術に贈りもの作戦ですっかり懐柔されてしまいます。おまけにオックスフォード大学の卒業生で、世界的に有名な作家の愛弟子だというじゃありませんか!こりゃもうとんだ拾い物です。娘が進むべき正しい道に転がってきた邪魔な石ころの要注意人物から、娘の理想の相手へと見事に昇格です。
 
 
親もすっかり公認でデイヴィッドとの交際が進むジェニー。夢のように楽しい日々ですが、時々ほころびが目につき始めます。デイヴィッドの美術や文学への教養は必ずしも本物ではないかもしれない。デイヴィッドが使うお金は、豊かで尽きない財産という泉のものでも、他人に自慢できるビジネスによって生み出されるものでもないらしいことを薄々感じ取るジェニー。最初に思い描いていた理想の国の紳士とは違うデイヴィッドの姿・・・。
 
でも、若干の不安や謎すらも若い世間知らずの好奇心旺盛な女の子にとってはロマンスを盛り上げるスパイスのひとつ。「そんなの気にしなくていいじゃない」というヘレンのあっけらかんとした態度、「君は普通の子みたいにつまらないことを気にするような子じゃないはずだろ」とのデイヴィッドの巧みな言い訳につい流されてしまいます。現実を突き詰めるにはまだ未熟で世間知らず過ぎるし、手を引くには魅力的過ぎる世界です。
 
 
最初はおぼこい可愛い高校生だったジェニーも、デイヴィッドのお金とヘレンの導きの賜物でどんどんヘアメイクも上手くなり綺麗に大人っぽくなっていって、いまやナイトクラブでも臆せずダニーと心からダンスを楽しめるほどに。自分の内部からあふれ出る若さと美しさをまさに謳歌!この時、ダニーと踊るジェニーをテーブル席で見つめるデイヴィッドと、その横に座ったヘレンとの微妙な空気感が絶妙( *´艸`)。
 
 
キャリー・マリガンもドミニク・クーパーもすごく若々しくてフレッシュ!ですがロザムンド・パイクは意外と変わらない(笑)。いや、よく見ると確かに今よりずっとお若いけれど。元々大人っぽい顔立ちで、年齢が段々追いついてくるタイプなんですね。彼女も大好きな女優さん。やっぱり可愛いー。美しー( *´艸`)。
 
 
制服を着崩して、地元では手に入らない外国製の煙草をふかしてすれっからしを演じてみせるジェニー。デイヴィッド、ダニー、ヘレンがいる世界を知った彼女にはなんと退屈で子供っぽい日常か。自分が同級生よりも一気に大人びて、特別な存在になったような気になって当然。周囲の友人も彼女を羨望の目でもてはやすから、学校はあっという間にジェニー旋風。ジェニーと「年上の彼氏」とのロマンス話で学校中がざわざわ。それにちょっとした優越感と心地よさを覚えるジェニーも、やっぱりまだまだ子供なんですよね。大人は、隠すということを覚えるんですけどね(苦笑)。
 
 
素行の悪さが目立ち、成績もガタ落ち、教師には反抗的な態度、さらに破廉恥な噂の的となれば当然、呼び出し(笑)。厳格な校長先生(エマ・トンプソン)の警告。昔、あなたのように将来有望だったある女生徒が在学中に大切なものを失ってその後の人生を台無しにしてしまった、彼女の二の舞にはなって欲しくないと話して聞かせるものの、完全に舞いあがてる、怖いものなし気分のジェニーにはちっとも届かない。
 
 
ジェニーの才能を認めて気に掛ける担任教師(オリヴィア・ウィリアムズ)の言葉も全く届かないどころか、やけになって反発。おまけに生意気で思いあがった言葉で先生に失礼な態度をとってしまうジェニー。あぁ、痛い、辛い・・・(>_<)。どうしてずっと後になってわかることが、それが見えているからこそ気にかけてくれる大人の言葉が、その渦中にある時には気が付けないんでしょうねぇ・・・人生って難しい。そして恥ずかしい|д゚)。苦笑。でもこのスタッブズ先生、本当に素敵なんです。終盤をお楽しみに(´ー`)。
 
 
つまらない大人たちに耳痛い茶々を入れられれば入れられるほど、反発し享楽の世界へ、楽な方へと突き進むジェニー。憧れのパリ旅行も決行!「17歳までは守」り続けたバージンも誕生日と同時に捨て去ります。オードリー風のファッションに身を包んでセーヌ川やエッフェル塔を観光するジェニーとデイヴィッドは最高のカップル。気分。パリの風景やジェニーのファッションが観ている側には大変目の保養です(´ー`)。
 
 
あどけなさの残る優等生だったジェニーが、もうすっかり大人の女性なりきり。いつの間にか自然にこんな媚態もこなすうように・・・。お手軽なキラキラに楽に幻惑されたい気持ちも、まだ挫折を知らず怖いもの知らずの感覚も、根拠のない自信も、大人になったつもりの気分も、その時代を通り過ぎた人間としてよく解かります。
 
 
そして、通り過ぎたからこそ、人生でラクして手に入ることなんてないんだよ、ということも、急がなくても今特別に感じてまやかされているあれこれはいずれ自分の力で手に入れることも可能だし決して遅すぎないことも、今は地味で辛くても大切にすべきものや高価な装飾品やメイクでは決して手に入れられないかけがえのないもっと素晴らしい美しさと輝きがあるんだということも、ついついジェニーに気が付いて欲しくなっちゃいます。よけいなお世話^^;。
 
 
そして、何やら焦ったようなデイヴィッドのプロポーズ。退屈な日常から安易にオサラバしたいジェニーは快諾。あんなに進学、進学と五月蠅かった父親までノリノリなのにはムカつくものの、学校ではさらに話題と羨望の的だし、いい気分。当然、学校としては大問題、またまた呼び出し(笑)。
 
 
娘を愛して大切に思うがゆえの、親の愚かさが、これまた中々ほろ苦くて切ないんですよねぇ。デイヴィッドと結婚するならもう無理にオックスフォードに進学する必要もないとはしゃぐ父親にムカっとして「あんなに勉強しろと言っといて?!だったら学校じゃなくてナイトクラブに通わせればもっと手っ取り早かったのに!」とつい口走っちゃうジェニーに、「私には教育という手段しか思いつかなかったんだよ・・・」と寂しそうに哀しそうにつぶやく大きなガタイのパパの小さな背中・・・。
 
それはそうと、キャストたちのファッションも素敵ですがレトロな雰囲気の漂う、ジェニーの家の家具調度やイギリスらしいカラーリングや食料品棚の品揃え(笑)なども目を楽しませてくれます。ダニーの家のような豪華さはないけれども、暖かくて気持ちが落ち着きます。可愛くて素敵で羨ましい( *´艸`)。
 
 
調子に乗って、売り言葉に買い言葉で学校も辞めて、いざセレブ結婚と舞い上がってる絶頂である事実が判明し、一瞬で転落。すべて自分が選んでしまったこととはいえ、何もかもがもう手遅れ。でも絶望からのジェニーの巻き返しは、清々しくて逞しい!やっぱりジェニーは、まだ若すぎたし世間知らずだったけれど、根っこは強く賢い女の子だったんですね。最後のエピローグのジェニーのナレーション(特に後のBFとのことの部分)は、清々しくて頼もしい( *´艸`)、共犯者的なふくふくとした余韻を与えてくれます。フフフ。いいぞ、ジェニー♪
 
普段以上に画像貼りまくってダラダラ綴った文章。皆様とうにお気づきかと思いますが、キャストと映像が、もうドハマリした映画でした!若くて可愛い女の子が年上の男性との恋愛で失敗して人生の苦みを覚えると同時に成長する、というのはプロットとしては目新しさは特にないのですが、キャスティングと脚本が絶品。細かい部分の演出やラストへ向かう展開などに、奇をてらったところはないのにありきたりではなくセンチメンタルな良質ドラマに仕上がっています。人それぞれの好みの問題ですが、私は大好きになりました^^。
 
キャリー・マリガンがでら可愛いので、それだけでも一見の価値はあるかと思います♪あれ、そういえばサリー・ホーキンスは・・・?最後の方にちょっとだけですが登場しますよー。ほんの短い出番なのに沢山のものを感じさせる演技力は流石です。彼女のレトロなヘアスタイルとファッションもナチュラルでシンプルながら可愛かったです^^。