ソフィア・コッポラの椿姫 | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。

2016年 イタリア

監督: ソフィア・コッポラ

原題: La Traviata

衣装: ヴァレンティノ・ガラヴァーニ

舞台美術: ネイサン・クロウリー

公式サイト: http://sofia-tsubaki.jp/

 

キャスト

ヴィオレッタ:フランチェスカ・ドット(ソプラノ)

アルフレード:アントニオ・ポーリ(バリトン)

ジェルモン:ロベルト・フロンターリ(バリトン)

 

ソフィア・コッポラが、ヴェルディのオペラ「椿姫」を演出!しかも衣装デザインはヴァレンティノ・ガラヴァーニ!舞台美術は「ダークナイト」などのネイサン・クロウリー!そんな豪華でスペシャルなオペラ公演が、2018年来日します!チラシを見て、これは絶対行きたい!でも髙そう・・・|д゚) ってドギマギしていたら、2016年のローマ歌劇場での公演を映画用に編集してBunkamuraル・シネマで2週間限定上映!との情報を入手して、これは何が何でも観に行かねば・・・!と、とにかく「!」だらけで鼻息荒くして上映開始を待ち構えていたのです( *´艸`)。

 

舞台美術のネイサン・クロウリーは建築の経験もあるそうです。舞台美術、衣装、演出、まさに才能の三位一体の仕掛けにこれまた才能豊かな歌手たちの共演。どうしたって期待が膨らみますが、まさに期待通りの美しさ、豪華さ、素晴らしさでした(´艸`*)。第1幕の最初の見せ場、「乾杯の歌」の大合唱が終わった瞬間、スクリーンだということを忘れて拍手しそうになりました。おっと、ライブじゃなかった・・・と危うくセーブしたものの、結局終始、毎回毎回、拍手しそうになってはハっとして手を引っ込める、の繰り返しでした(笑)。

 

どの場面も、どの瞬間もイタリア絵画のような、芸術映画のような色彩とライトニングの素晴らしい美しい舞台で見目も麗しく、かつオーソドックスで解かりやすい演出なので、オペラ初心者でも楽しめるんじゃないでしょうか。元々有名な歌劇ですし、音楽も優美で華やか、そして悲劇の恋。オペラのとっときが全部詰まった名作ですよね(´艸`*)。

 

 

とにかくどの場面も舞台美術が美しいし、ミニマムなのに華やかで奥行きがあります。第2幕のパリ郊外のヴィオレッタの田舎家↑のセットもすんばらしい(*'ω'*)。背景の景色も美しいのなんのって・・・(≧▽≦)。

 

ヒロインのヴィオレッタ役のフランチェスカ・ドット、いかにもイタリア女性らしくガッシリめの迫力美女なのですが、まだ27歳の若手らしいです|д゚)。最初はボローニャの音楽院のフルート科を卒業して2007年からエリザベッタ・タンドゥーラさんに師事して歌の勉強を開始、2012年以降コンクールのファイナリストや入賞し始めて、「椿姫」のヴィオレッタ役は2013年のヴェルディ劇場がロールデビューだったようです。丁度これから登り調子のスター候補の1人なんでしょうね^^。

 

 

最初、彼女の歌を聞いた時は何となく好きなタイプの声質ではないなぁ・・・と思ったのですが、きっとまだ声が固いということなのかも知れません。でも、低音~高音の伸びは滑らかで表現力、演技力も抜群でした。徐々に声質よりもその表現力に魅せられて、ヴァイオレッタ本人としか思えなくなりました。特に第3幕、ヴィオレッタの寝室で病が進行し死期が迫る中で愛しいアルフレードを想い待ち続けるシーンは迫真の演技で、本当に鬼気迫るものがありました。せっかくのご縁、この機会に名前をインプットしておきたいと思います♪

 

 

ヴァイオレッタの最愛の恋人アルフレード役のアントニオ・ポーリも、世界各国の舞台に出演する人気の若手歌手のご様子。11月の新国立劇場の「椿姫」にもアルフレード役で出演されていたようです。事前に知っていたら予習も兼ねて観に行きたかったです。世間知らずでウブで真面目で一途な恋する青年、アルフレード役にピッタリでした^^。

 

しかーし!ですね。主役の2人を差し置いて、最も私の心をノックしたのはアルフレードの父親役のロベルト・フロンターリの渋さ、豊潤さです!( *´艸`) もう、こなれて、こなれて、渋みと脂の乗った枯れ具合(そんな矛盾した表現が許されるのならば)のベストバランス。深くて、情感豊かな、どこまでも届く歌声に惚れ惚れ~。スクリーンで、これ?やだ、生で聴いたらどんだけ凄いことになるのでしょうか(>_<)。

 

 

メイン・キャスト3名以外でも、ヴィオレッタの友人のフロレンス、ヴィオレッタのパトロンとなるドゥフォール男爵、アルフレードの友人でヴィオレッタを紹介するガストーネ子爵、ヴィオレッタの臨終を看取るグランヴィル医師らも魅力的なキャラ付けがされていて、それぞれ素敵な登場人物でした(*^^*)。

 

スクリーン・ビューイングならではの、ローマ歌劇場の豪華な様子やソフィア・コッポラ、ヴァレンティノ・カラヴァーニらの幕間のショットやアンコールでの登場も観られるのもちょっと嬉しい^^。2週間だけの限定上映だなんて、残念すぎる(>_<)。できる事なら2回でも3回でもリピートしたいです。2018年の来日公演前に、DVD化しないかな・・・と期待しております。そして・・・やっぱり、来日公演観に行きたいなぁ・・・まだ日程だけでチケット代が発表になっていないので殊更ドキドキですが・・・|д゚)。どうしよう。何を節約すればいいのかな・・・2018年の課題!(苦笑)

 

小説も映画もバレエも絵画も能もミュージカルもアレモコレモ好きですが、やっぱりオペラも好きっ!Bunkamuraでの鑑賞の前後一週間くらい、頭の中は「乾杯の歌」でいっぱい。気が付くと、一番好きな歌詞の部分がエンドレス・リピートしています(笑)。

 

Libiamo, amore, amor fra i calici 

più caldi baci avrà...

 

Bunkamuraル・シネマ以外でも全国各地で順次公開予定です。ご興味があればお近くの劇場でぜひ^^。まずは予告編で雰囲気をお試しください♪文末に、オペラ「椿姫」のザックリあらすじも載せておきます。

 

 

 

 

歌劇「椿姫」あらすじ:

〈第一幕〉

高級娼婦で社交界の華、若く美しいヴィオレッタの屋敷で華やかなパーティが開かれています。ヴィオレッタがホストとして忙しく来客たちをもてなして回っていると、 ガストーネ子爵が友人だといって青年アルフレードを紹介します。乾杯の際に何か詞を披露するよう周囲から勧められたアルフレードが情感込めて歌い出すと「乾杯の歌」の大合唱に。ダンスホールへと皆が移動する中、ヴィオレッタは目眩を起こしてソファーに残って休憩していると心配したアルフレードがやってきて、1年前からヴィオレッタに恋をしていたと告白し、こんな生活はやめて自分と生きて欲しいと申し込みます。

 

驚いたヴィオレッタは最初は軽くあしらうものの、アフルレードの真摯な愛情に心動かされ、椿の花を一輪渡し「この花が萎んだ頃に」再会すると約束します。アルフレードが立ち去った後、暫く彼が自分に見せた情熱の余韻に浸りながら物思いにふけりますが、ふと娼婦の身分である自分の現実を思い出し、愛を夢見るなんて馬鹿なこと、享楽の人生を楽しむべきだわと言い聞かせるように「花から花へ」を独唱し、理想の愛情と現実との間で揺れ動きます。

 

〈第二幕〉

出会ってから数か月後、結局ヴィオレッタはパトロンたちと縁を切り郊外の田舎家へ引っ込みアルフレードと幸せな同棲生活を送っています。愛することだけに夢中で世間知らずで経済力のないアルフレードとの生活を支える為に、ヴィオレッタは自分の財産を一切合切売却して生活費に変えていました。そのことを知ったアルフレードが男として恥じ入り、パリへ向かったのと入れ違いに彼の父親が突然訪ねてきます。彼は紳士でしたがヴィオレッタが娼婦であるという偏見から息子が悪い女性に誘惑されていると思い込み、アフルレードの妹の縁談が破談になりかけていることを訴え、息子と別れるよう申し入れます。

 

ヴィオレッタへの誤解を知り無礼を詫びながらも子を持つ親としてどうしても2人の仲は認められない、と訴える父親とついにアルフレードと別れると誓ってしまうヴィオレッタ。アルフレードに、嘘の手紙を残してドゥフォール男爵の元へ戻ります。パリに戻ったヴィオレッタは友人フロレンスの屋敷の仮面舞踏会に男爵と招かれますが、そこに裏切られたと信じ切っているアフルレードが嫉妬と怒りに我を忘れて乗り込んできて、全員の前でヴィオレッタを激しく侮辱してしまいます。ヴィオレッタはショックの余り失神し、男爵はアルフレードに決闘を申込みます。

 

〈第三幕〉

ヴィオレッタの寝室。病床の彼女の元にアルフレードの父親から手紙が届きます。決闘はアルフレードが勝ったこと、考えを改め2人の結婚を認めること、これまでの非礼のお詫びがしたためられており、アルフレードと共にそちらへ向かうとありました。が、すでにヴィオレッタの死期は近づいており、医者も匙を投げている状態。全ては遅すぎる、と絶望するヴィオレッタ。遠くでカーニバルの歓声が聞こえる中、駆けつけたアルフレードの腕に抱かれながらヴィオレッタはアルフレードに自分の肖像画の入ったペンダントを託し遺言しつつ、ついに息を引き取ります。