64 -ロクヨン- 前編 | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。

2016年 日本
瀬々敬久 監督


横山秀夫さんの原作を読んで面白かったし、映画のキャスティングも豪華だったので観るのが楽しみだった作品です。期待を裏切りませんでした^^。昭和天皇崩御によりたった7日間で終わった昭和64年。その7日間の間に発生した翔子ちゃん誘拐事件は、身代金2,000万年は強奪されながら被害者の翔子ちゃんは遺体で見つかり、犯人逮捕も叶わず。通称「ロクヨン」と呼ばれるこの事件は、わずかな専従班が継続捜査するものの未解決のまま時効まであと1年を迎えていました。

舞台となる地方県警は、原作ではD県警とされていましたが映画では前橋市のある群馬県警という設定になっているようです。あくまでも「県警」とだけで地名は語られませんけれど。主人公の三上(佐藤浩市)は、ロクヨン発生当時の捜査にも加わっていましたが刑事部から今は広報へ異動となり、不本意ながらもどうせならやれることをやろうと、「開かれた県警」の窓となるべく一癖も二癖もある記者クラブの面々と時に衝突しながらも信頼関係を築きつつありましたが、県内で発生したひき逃げ事故の加害者の実名を巡って記者クラブと県警上層部との板挟みに追い込まれます。


広報室の部下の面々。三上の右腕的存在の諏訪係長(綾野剛)、真面目で地味なおっとり系の蔵前(金井勇太)、紅一点の美雲(榮倉奈々)。最初は三上は刑事部に戻りたがっていて、広報官の仕事はほんの一時しのぎじゃないかと穿っていた彼らですが、次第に三上の人柄に惹かれ「開かれた広報」の実現を目指す三上を尊敬し信頼を寄せるようになっていきます。


一方プライベートでは高校生の1人娘あゆみ(芳根京子)が家出し、同じ年恰好の身元不明の死亡者の遺体確認に行ったり、無言電話があると、娘からだと思い込み元婦警の妻 美耶子は電話から片時も目を離せず神経をすり減らす毎日。

原作では県警で有名な美女と野獣のカップルで、とにかく厳つくて醜い父親とそっくりな自分の容姿にコンプレックスを抱いて思春期になると父親に反発し、整形手術をしたいとさわぐあゆみ役が、芳根京子ちゃんだと普通に可愛すぎてあまりにも説得力ないんじゃないかと思ったのですが、そこは上手く演出されていて、あゆみの登場シーンでは常にボサボサの髪が顔にかかっているか、後ろ向きかで、芳根京子ちゃんだと分らないというか、全然顔が見えなかったです(苦笑)。台詞的にも父親とそっくりの醜い顔が嫌、という言い方は排除し、美耶子に関しても元県警イチのマドンナ美女という説明は何も触れられないので、美女と野獣カップル感は映画だけでは伝わらず、思春期らしい父親への反発と嫌悪感という雰囲気にしてあったのは巧いなと感じました。そもそも佐藤浩市さんに顔が似て我慢できないってのが成り立ちませんよね^^;。


キャストに合わせた上手なアレンジは、記者クラブの面々にも。記者クラブ会長の秋山(瑛太)は、もっとブヨっとした脂ぎった体型で、美雲にやたらとちょっかいを出すいやらしさも持った”ヤリ手”ですが、瑛太さんが演じることで脂ぎったいやらしさは排除され、野心と信念に溢れた直球の若いやり手記者に。秋山を慕う手嶋記者(坂口健太郎)も爽やかで一途な若手記者に^^。


ロクヨンの被害者、翔子ちゃんを失った父親、雨宮(永瀬正敏)は数年前に妻にも先立たれ、孤独で無為な生活を送っていました。ロクヨンの時効まで1年にあたって、警察庁長官が視察に来庁することがきまり、三上は遺族慰問の打診をしに雨宮に会いに行きますが、すげなく断わられます。

雨宮を説得する材料を探し、自分が離れた後のロクヨンの継続捜査の経緯を調べるうちに三上は、「幸田メモ」と呼ばれるタブーの存在と、何故か反発しあってきた同期の二渡警視(仲村トオル)が「幸田メモ」について調べているらしいことを知り、不審に思います。「幸田メモ」の幸田とは、ロクヨン当時自宅班にいた幸田刑事(吉岡秀隆)ではないかと思われけれど、彼は事件の半年後に退官して現在は行方がわからなくなっていること、NTTから科捜研へ転職し当時犯人からの通話を録音する担当だった日吉(窪田正孝)が事件以来引きこもっていることなど次々と不信な事実が判明し、尊敬するかつての上司捜査一課長の松岡(三浦友和)に思い切って当たってみるものの、かわされてしまします。


二渡が幸田メモを調べる本意も不明の中、自分自身の本庁からの評価と進退だけを気にする警務部長の赤間(滝藤賢一)には一方的に記者クラブの不満の鎮圧と、雨宮家への長官視察の合意を性急にとりるけるよう迫られ、実名問題が過熱した記者クラブは長官視察のボイコットを宣言し、八方ふさがりで進退窮まる状況に陥っていく三上。

そんな中、三上はついに行方不明だった幸田を見つけ出し、幸田メモの真相、長官視察の真の狙いを手繰り寄せます。内心に抱える疑問や葛藤は膨らむ一方で記者クラブとも一時的和解に漕ぎ着け、頑なに長官視察を断っていた雨宮も突然受入れを示し、差し当たっての苦境を乗り切れそうになったところで、思いもよらない新たな騒動が巻き起こります。長官視察を巡って三上を裏切り者と断定した刑事部の一同が突然姿を消します。彼らの立てこもり場所をつきとめた三上は、そこに捜査本部が設営されていることを知ります。新たな誘拐事件が発生し、長官視察は凍結。愉快事件の情報をめぐって、和解に向かっていた記者クラブとは再び衝突することに。そして、後編へ。

内容的にはほぼ原作通り忠実に再現しつつ、キャストに合わせて映画ならではの世界観も上手く構築されています。前後編でわけるならどのへんだろう、と想像していた通りの場所で全編終了でした。この後、ラストまでの展開も楽しみです。