美女と野獣 | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

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備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。

2017年 アメリカ

ビル・コンドン 監督

原題: Beaty and the Beast

 

 

楽しいで楽しみで仕方がなかった、実写版「美女と野獣」!やっと時間作って観てきました。しかも4Dで( *´艸`)。エマ・ワトソンがベル役だなんて、ハマリ役とかってレベル以上の完璧キャスティングではないかと、もうその点だけで100%の信頼と期待を寄せていた程ですが、予想をはるかに超えた完成度で感動しました。エマは完璧ですが、他のキャスティングも全て手抜き無しのパーフェクト・マッチ。音楽も最高、特殊メイクも最高、SFXも最高、衣装も最高、ダメなところが見つかりません(≧▽≦)。

 

そういえば、ディズニー・アニメの「美女と野獣」が公開された時も空前のヒット作になったなぁ、と思い出しました。あの作品が、アニメーション映画で初めてアカデミー賞にノミネートされたんでしたね。元々は民族伝承だったお話が18世紀フランスで小説として発表され、それ以降100年どころか200年以上語り継がれ愛され続けてきた物語。ディズニー・アニメ以前にも、子供の頃から絵本や子供向け小説、アニメ、映画、ドラマ、お芝居etcで何度も体験していたし大好きなお話のひとつですが、美しく繊細なミュージカル仕立てのディズニー・アニメ版は20世紀の「美女と野獣」のスタンダードとして強い印象を残すことに成功したと思います。

 

「美女と野獣」といえば、あのディズニー・アニメ版が初めて、あれで好きになったという世代ももう大分増えましたし、私のようにそれ以前から慣れ親しんだ世代にも鮮烈な印象を残したと思います。「美女と野獣」と聞けば真っ先に、あの主題歌が頭に浮かぶし、黄色いドレスのベルと青い衣装の野獣のダンスシーンが思い浮かびます。音楽の力って偉大。そして21世紀の「美女と野獣」はテクノロジーの進化とエマ・ワトソンの登場で、ついに実写化!お城の舞踏会で美しいアリアを歌い上げるディーバに黒人女性を選んだり、ゲイのキャラクターを作ったりと、人種問題やLGBTにも配慮しないといけない時代で大変だなぁと思う一方で、素晴らしいアニメ版の音楽を全部続投の上にさらに新曲を3つも提供するという大盤振る舞い。どこをとっても、ディズニーの本気とやる気がみなぎっています。

 

お城に呪いがかけられるエピローグの後、ベル(エマ・ワトソン)たちの「現代」に移ってベルの住む村の様子やベルの性格が紹介されるお馴染のオープニング曲「朝の風景」で、もう早速ガガーっと盛り上がります^^。ちなみに監督のビル・コンドンは、私の大好きなミュージカル映画「シカゴ」の脚本、「ドリーム・ガールズ」では脚本と監督も担当しています^^。

 

発明家で芸術家のパパ、モーリス(ケビン・クライン)とベルの相思相愛親子^^。ケビンさん演じるパパが、とっても素敵で、こんなパパの娘になりたい・・・っと思ってしまいます。(*‘∀‘)

 

元々ベルと言えば、古いタイプのお姫様たちとは違って、行動力があって利発でちゃんと自分の自己主張がある自立したところが魅力なわけですが、さらに21世紀的にアップデート。本が好きで空想力に飛んでいるだけではなく、パパ譲りの発明家的側面も。愛馬の力と樽を利用した自動洗濯機のようなものを使って涼しい顔で本を読みながらお洗濯時間を過ごしたり、小さい女の子に文字を教えたり、自ら畑仕事もするし鞍のついていない馬にも乗っちゃう。

 

野獣(ダン・スティーヴンス)の方も、我が儘で子供っぽい乱暴者から、粗野な高倉健+エレガンスに(笑)。「自分、不器用ですから・・・上手く言葉をかけることができません。レディ・エスコートとかチャラい口説き文句とか存じぬし無理でござる」。ベルに上手に接することができず、そのもどかしさや恥ずかしさをついバーンっとモノに当たっちゃうけれど、元々は美しいものが大好きで繊細で教養人。ベルがシェイクスピアで一番「ロミオとジュリエット」が好き、と言った時のやり取りや、「アーサー王」についての会話のシーンなどお気に入りです。アップになる時の目の表情も、獰猛な感じよりも、哀しそうな人間らしい表情ばかり。

 

また、これまでの作品にはなかった要素、野獣の子供時代のエピソード(なぜ物事の表面しかみない、我満な人間に育ったのかが推しはかられる)と、ベルの抱える影(母親の喪失)も加えられたことで、より一層物語に奥行きが出ました。演出も、「サウンド・オブ・ミュージック」や「雨に唄えば」をオマージュしたシーンがあったりして、オマケ的な嬉しい楽しみもありました。当然と言えば当然だけれども、ミュージカルを、映画を愛してやまない人たちが楽しみながら全力で作った作品なんだなぁという雰囲気がそこかしこから伝わってきます。

 

ガストン(ルーク・エヴァンス)とその子分ル・フウ(ジョシュ・ギャッド)のコンビも最高です。いやいや、「インモータルズ -神々の戦い-」ではゼウスだし「三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」ではアラミスですよ?!確かにガストンは設定では村一番のハンサムでモテモテということにはなっているけれど、脳みそまで筋肉の嫌われ役ガストンには正統にハンサム過ぎて勿体なくないか・・・?( ゚Д゚) と思ったのも最初だけ。

 

アニメのガストンよろしく眉毛ピクピクの顔芸も完璧、酒場でル・フウにヨイショされて上機嫌の「強いぞ、ガストン」のシーンなんか可笑しすぎて楽しいことこの上なし。ははぁ・・・ルークさん、これ絶対、心からガストン役を楽しんでらっしゃるな!と 。相方ジョシュとのコンビネーションも完璧だし。どんどん、ガストンらしくバカなだけじゃなく自己顕示欲が強まって暴走して見事な悪役っぷりになればなるほど、なんだか愛しさすら覚えてしまう矛盾(笑)。あんまりルークが楽しそうに演じてみせるので、もし男に生まれ変わって、役者になって、舞台でも映画でもドラマでも「美女と野獣」に出演するチャンスに恵まれたら絶対自分もガストンやりたい!と思ってしまいそうでした(´_ゝ`)。

 


実写+SFXによるお城の使用人たちも、可愛かったー♪
事前にそれぞれのキャスティングを知らないままで観たので、人間に戻った時のサプライズも嬉しいオマケ(*^▽^*)。代表して左から置時計のコグスワース(イアン・マッケラン)、ポット夫人(エマ・トンプソン)、燭台のルミエール(ユアン・マクレガー)、箒のプリュメット(ググ・バサ=ロー)。豪華、豪華!コグスワースとルミエールのコンビも良かったし、ポット夫人と息子のチップも可愛かった。ルミエールがベルにディナーをもてなすシーンも楽しかった。

ダンスシーンは、まさにアニメ版の再現!実写の強みを生かして、ベルのドレスはさらにゴージャスで美しく♪とっても美しくて優雅でうっとりするシーンですが・・・演じる方は大変だったろうなぁ・・・役者さんってすごいな(*'ω'*)。

新曲たちも良かったです!えらいもんで、「あ、これ新曲だ!」てちゃんと解かるもんですね(笑)。ディズニー・アニメの浸透力、恐るべし。
お城の住人たちがかつての幸せな日々を思い出しながら歌う「ダイズ・イン・ザ・サン~日差しをあびて~」は、郷愁も感じて切なくなりそうにもなるけれど、彼らが主人である野獣の良さを知っていて愛していて、幸せな日々が戻ってくるという希望を捨てていない前向きな力強さと明るさが感じられます。

ベルと心が通いだして、あともうちょっとで愛してもらえるかも・・・!というところで、ベルが父親を心配する気持ちを慮って自ら彼女を自由にしてあげる選択をした野獣が、遠ざかっていくベルを想いながら歌い上げるバラード「ひそやかな夢」は、もう切なすぎて胸がキュウキュウしっぱなしです(>_<)。劇中でモーリスが歌ったりベルが歌ったりする「時は永遠に」は、エンドクレジットではセリーヌ・デュオンが歌っています。


そして、素晴らしい衣装の数々を生み出したのが、ジャクリーヌ・デュラン。「アンナ・カレーニナ」でオスカー受賞した衣装デザイナーです。他にも「ターナー、光に愛を求めて」やキーラ・ナイトレイの映画「高慢と偏見」、「つぐない」など。どれも映像の光と衣装の調和が美しく印象的な映画ばかりで、納得。

吹替え版キャストも、本格的なミュージカル俳優たちがキャスティングされていますが、特に野獣を山崎育三郎さんが担当ということで、機会があれば吹替え版も堪能してみたいです。