エイミー、エイミー、エイミー!こじらせシングルライフの抜け出し方 | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

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備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。

2015年 アメリカ

ジャド・アパトー 監督

原題: Treinwrec

 

都内での上映館がほとんどないので存在をちっとも知らなかった映画ですが、たまたま別の映画の上映を調べていた時に見つけて、偶然タイミングもあったのでこういうのも出会いやね、ということで観てきました。アメリカで人気(らしい)のコメディエンヌ、エイミー・シューマー主演のいかにもアメリカらしい、下ネタ連発で少々お下品な(でも許容範囲)ドタバタ・ラブコメです。

 

幼い頃両親が離婚したエイミー(エイミー・シューマー)とキム(ブリー・ラーソン)の姉妹。離婚の理由はパパのどうしようもない浮気癖の様子。幼い娘たちを前にして「パパからもちゃんとお前たちに説明したい」と、妹キムが抱えていた人形を例えにしてトンデモ理屈を展開して聞かせるパパの姿が・・・「あほかいな」と呆れる半分、「意外とうまいこと言ってる」と苦笑しながらの感心半分(笑)。「一夫一妻制は悪だ!」と宣言するパパの姿は、その言葉の意味はよくわからずともエイミーの心に深く響いたのでした。

 

そしてパパの教えに従い?長じて、パパ顔向けの肉食女子へ成長したエイミー。超マッチョな”彼氏”がいながらも「お泊りはしない」などの不文律を掲げ、ワンナイトファックを繰り返す、自由奔放ハレンチ勝手気ままに充実した毎日。雑誌編集の仕事も、編集長のダイアナ(ティルダ・スウィントン)にも結構評価されて、近く昇進のチャンスもありそうな感じ。職場の同僚とも気が合うし、1人の相手に縛られずにリア充な自分に何の疑問もないエイミー。

 

ドクター・ストレンジ」では気高い最高位魔術師エンシェント・ワンだったティルダさんが、ゲスいゴシップ雑誌の俗世にどっぷり浸かった辣腕女編集長へと様変わり(笑)。自分本位で辛辣で勝手でワンマンな毒舌上司っぷり、なかなかでした^^。

 

破天荒なエイミーと違って妹キムは、人の良さそうな夫と夫の連れ子の礼儀正しい男の子とも実の親子のように良い関係を築き、自分自身の子供も身ごもるという平凡だけれども幸せで堅実な専業主婦。姉妹として生まれて一緒にパパの「一夫一妻制は悪」の洗礼を受けてもエイミーと真逆の人生を歩めるのだから、エイミーの暴れん坊ぶりは両親の離婚の影響というよりも、ズバリ、パパの遺伝子のなせる業というべきではないかと思われます^^;。

 

生き方も性格も正反対に育った姉妹だけれども、とっても仲良し。お互い心底愛しているし、お互いの欠点も美点も理解し尊重しあっている。多発性硬化症が進んで老人ホームへ入居したパパのこととか色々なことで衝突しあってホントの大げんかまで発展しちゃうけれども、お互い努力と許容を諦めない、素敵な姉妹愛に優しい気持ちになれます。キムの夫と連れ子も含めてとっても素敵な家族、最高の親戚♪

 

そして勿論、邦題的にも当然、予定通りにそんなエイミーも運命の出会いをしてアイデンティティが揺さぶられる事態となります。お相手は仕事の取材相手、高名なスポーツ外科医のアーロン(ビル・ヘイダー)。育ちのよいお坊ちゃま、真面目で優等生、インテリで高収入、見た目だって悪くない。それだけのスペックの好青年がなぜあんなにアッサリとエイミーに惚れてすぐにゾッコンになるのかの説得力はいまひとつありませんが、まぁ気にするところではないのでしょう。スポーツの良さがまったく解からないエイミーからしたらスポーツバカの堅物で特に面白いところのない相手だったのに、彼の優しさや人柄の良さに生まれて初めての”恋しちゃったかも”気分に。

 

思いがけず一晩を過ごしてしまった翌日、電話で2回目のデートに誘うアーロンと、彼の患者兼親友の有名なバスケット選手、レブロン・ジェームズ。どうみても本物のバスケ選手だったので、実際に本名で、有名な元MBA選手である、と後から確認しておきました(笑)。

ドキドキしながら電話するアーロンと、それを見守ったり励ましたりヤッホーと喜ぶレブロンの男の子2人の関係も、微笑ましく楽しかったです^^。

 

大好きな妹に対しても、誠意をもって接してくれていたアーロンにも、取り返しのつかないひどいことをして失望させてしまい、大ピンチで落ち込み悩むエイミーは、これまでの自分の殻をやぶって成長し、見事に幸せをつかめるかどうか。

 

ネタバレする気はありませんが、どう考えたってこの手の映画はちゃんとハッピー・エンドに決まっているので、ご安心ください(笑)。エイミーがキムとアーロン、それぞれに対してのお詫びの為にとった行動はよかったです。特にアーロンへみせた頑張りは、キュートで思い切り声援を送りたくなりました。最初のうちは、いかにもアメリカン・コメディなエイミーの品の無さに「あぁ、このノリね・・・」と若干辟易した部分はありましたが、いつの間にかそんな下ネタの数々のことは忘れていました。それ以外のサブネタの数々が楽しすぎて^^。

 

エイミー本人も、決して可愛くないとは思わないまでも、美人というわけでもないし、そんなに若くもないしちょいポチャだし年齢の割に品はないしで、なぜそこまで次から次へとモテモテなのか、「たまんねーぜ!」とボディを絶賛されるのか、アメリカ人の感覚はちょっと不思議だよなぁと思って見ていたのですが、終わるころにはエイミーがめっちゃキュートで愛おしくなっていました。きっと主演エイミー本人の魅力と演技力によるところも大きいのでしょうね。彼女、自分も女優として演じることもありますが、脚本書いたり、プロデュースしたり何だかんだとマルチに活躍しているそうです。何となく納得。

 

ノリ的には、アメリカ版ブリジット・ジョーンズな感じ。ちなみに原題の「Trainwreck」、"wreck"で"壊れる、破壊する、滅茶苦茶な"という意味なので"Train wreck"は酷い交通事故という意味なりますが、それが転じたスラング"Trainwreck"は"大惨事、大失敗、めちゃめちゃな状態・酷い状態の人や物"を表すそうです。今回初めて知りました。つまりエイミー自身が、そういうしっちゃかめっちゃかな人間である、という意味と同時にわざわざ自分から大参事につっこんでいくまたは招く台風の目のような存在ということを表しているのでしょうねー。なるほど、そのままのニュアンスを日本語に置き換えるのは確かに難しい・・・で、このタイトルかぁ・・・。

 

最初は「うぅ~ん・・・」と思いましたが、でもこの手のノリの映画のタイトルとしては実際分りやすいし、どんな内容なのか正しく伝わりやすいか~、と納得。センスはないしダサいですけどね・・・(苦笑)。

 

ちなみに、この映画、上述のレブロン・ジェームズ以外にも映画界テレビ界スポーツ界から思いがけない有名人が大勢ゲスト出演しているのもウリ。私はエイミーレベルでスポーツは無知だし、一番あからさまに分りやすかったダニエル・ラドクリフ以外はすぐに名前と顔が一致しなかったのですが(あ~、あの人みたことある・・・とか、きっとこの人は有名人なんだろうなというのは何となくわかったレベル)、わかる人はそういう面でも楽しめると思います。

 

公式サイトによると例えば”少年は残酷な弓を射る』(2011)で主人公を演じた妖艶の美青年”とか”『いとこのビニー』(1992)で、アカデミー賞助演女優賞を受賞したオスカー女優””『ウォー・ゲーム』(1983)主演の高校生を演じた俳優”や”クリス・エバート(元プロテニス選手)、トニー・ロモ(アメフトNFL・ダラスカウボーイズ所属選手)”など。他にも何名かサプライズ・ゲストがいるようです。

 

いつの間にかおっさんに近づいたラドクリフ君は、エイミーが映画序盤での本命彼氏のマッチョ男(有名なプロレスラーらしい)と観に行く映画の主演俳優として登場。カンヌだったかで大評判だったらしい名作だよ、というフリでタイトルが『Dog Walker』、犬を散歩させる人(笑)。モノクロ映像で、「あのハリーポッター1作目の頃の可愛い男の子がなぜこうなった・・・(苦笑)」と観る者の心に去来させるところまで含めて、なんともシュールな時間。美味しいトコいただいたラドクリフ君(笑)。

 

最近ちょっとテーマの重めな映画や、人が死んでしまう話が続いたので気分転換にあっけらかんと馬鹿っぽくありつつもハッピーな気分になれる映画で気分転換できてよかったです^^。(あ・・・この映画でも、死によるお別れは一応出てくるんですけれど)