インドシナ | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

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備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。


1992年 フランス
レジス・ヴァルニエ 監督
原題: Indochina
 
公開当時、劇場で観たときはその壮大さと美しさに酔いしれて
これはフランス版の大・大河浪漫作品だぁ・・・と圧倒されたのを
思い出します。今回、久しぶりに観ました。もう四半世紀になる
んですねぇ。早い・・・。
 
仏領インドシナの裕福な家に生まれ育った令嬢エリアーヌ(カト
リーヌ・ドヌーヴ)が、飛行機事故で死んだ親友夫妻の遺児、
安南(今のベトナムの北部から中部エリア)皇女のカミーユ(
リン・ダン・ファン)を養子に引き取り、彼女の両親から受け継い
だ広大なゴム園を女だてらに切り盛りしながらカミーユを愛しみ
育てていました。
 
若き海軍将校ジャン=バティスト(ヴァンサン・ペレーズ)との、
血のつながらない母娘二代に渡る激しい恋愛と葛藤と確執、
父親のエリアーヌへの執着、一族の取り決めたカミーユと
フランス留学帰りのインテリの従兄妹タンとの結婚、奴隷売買、
共産主義、、、やがてある事件で海軍将校を射殺してしまった
カミーユは犯罪者として追われる立場になり、その場に居合わ
せたジャン=バティストと共に逃亡しアロン湾を彷徨います。
 
共産主義者の地下組織に匿われ、一時平和な時を過ごした
ジャン=バティストとカミーユは男児をもうけますが、やがて
激しい独立運動の渦中へと巻き込まれ、ジャン=バティストと
カミーユの物語は広くインドネシアに広がり伝説となり、
カミーユは独立戦争のジャンヌ・ダルクと呼ばれ次第に共産
主義運動の象徴としてあがめられるようになり、二人の物語
は戯曲となり国中で上演されます。
 
安南の王族として生まれ、特権階級として裕福な暮らしと
教養を享受しながらもそれを全て投げ捨て激しい恋に生き、
動乱の世の中を駆け抜けるように波乱万丈な人生を生きる
ことになったカミーユ。やがて、1954年のジュネーブ会談に
おける南北ベトナムの成立によって独立戦争が終結するまで
を、エリアーヌの回想で語られる映画です。
 
とにかく、美しく壮大なる抒情詩。失われし優雅な時代の仏領
インドシナの特権階級たちの暮らし、美しいドレスや建築物や
調度品、世界遺産になっているハロン湾はじめ美しい景観、
美しいキャストたち。目に贅沢な映画です^^。
 

いくつの時もそれぞれに美しいドヌーヴ。ウットリ。
 
ですが、当時はドヌーブ様も大分老けたなぁ・・・と思っていました。
勿論、ただならぬ美しさではあるんですが、20歳そこそこと思わ
れる若者との恋愛なんて無理があるんじゃ?と子供の私には
感じられたのですが、四半世紀過ぎて振り返ると、まだまだ若く
輝くばかりの美貌。年下美男子との恋も全然アリですね。
 
孫バカと鼻で笑って聞き流して頂ければと存じますが、私の祖母
(ちびっこ時代の私と時代劇や『スター・トレック』その他海外ドラマ
を見ていた^^)の(当時より)少し若い頃と、この映画のドヌーヴ
の雰囲気がとてもよく似ていることにも当時驚いて、なんだか
よくわからない親近感も覚えてよけいに強く印象に残っています。
改めて観ても、勿論違いますけれども^^;、でもやっぱり、すこぉー
し、祖母と面影が被ります。それこそ銀幕の女優さんのように
美しい祖母でした・・・。
 

エリアーヌとカミーユの母娘とも虜にしてしまうジャン=バティスト
を演じたヴァンサン・ペレーズはこの映画で一気に有名に
なりましたねー。アラン・ドロンの再来とか言われてませんで
したっけ。(別の人と混同しているかもしれませんが)
 

数々の美しいドレスや日常着を着こなすドヌーヴ。どの衣装も、
今見てもとびきりスタイリッシュでうっとりします。
ジャンとエリアーヌがゴム園で再会する場面で着ている、素材も
仕立ても高級で着心地のよさそうなブルーのシャツは、ドヌーヴ
自身が気に入って選んだ衣装だと、当時買ったパンフレットに
書いてあった気がします。(あのパンフレット、残しておけばよかった)
 
衣装以外にも、見どころが沢山。ロケも、セットも、小物にいたる
までほんのちょっとの妥協もなく贅沢にこだわって作られています。
 

エリアーヌが彼女にずっと想いを寄せつづける警察署長のガイ
(ジャン・ヤンヌ)との待ち合わせでいつも使っていた、由緒ある
5つ星(当時)ホテル・コンチネンタル・サイゴン。
 
この映画を観た数年後、偶然ですが私もこのホテルに泊まり
ました♪(そして部屋荒らしに遭いました・・・被害はナシ)。
当時はまだ直行便もなくて一般人でベトナムに旅行する人もほと
んどいなくて、現地で日本人に遭遇することもほぼなく。
ホテルも古く格式のあるホテルはかつてコンチネンタルと、レックス、
マジェスティックの3つが有名で、あとは新しめのホテルはニッコー
ホテルくらい、コンチネンタルの対面にパークハイアットが建築中、
という状況でした。その数年後、綺麗な高級ホテルもどんどん建築
されて飛行場も立派になり観光客も増えておしゃれなベトナム雑貨
の店なんかも増殖してまったく違う景色になりましたが、その前の
貴重なホーチミンを観ることができてラッキーでした^^。
 
サイゴン(ホーチミン)市外にあるエリアーヌのパパンが所有する、
エリアーヌが子供時代を過ごした邸宅もとっても素敵なんですが、
今回何気に眺めていたら気になるものが沢山・・・!
 

ネットで画像が拾えなかったので、自宅のテレビ画面写メで失礼
します。そして、よりによってこんな場面^^;(手切れ金を渡すから
娘と別れろと居丈高に言ってきたパパンにジャンがブチ切れて
いる場面)で恐縮ですが、この壁紙・・・!
 
去年Bunkamuraのトワル・ド・ジュイ展で展示されていた、マリー・
アントワネットをモデルにした「お城の庭」という図案の壁紙じゃあ
ないですかっ。さらに、パパの背中にある墨絵・・・。
 

全体が映っていないのですが、伊藤若冲の葡萄の絵のような
気がするのです。反対側の壁にも、同様に見覚えのある虎の絵が・・・。
 
他にも、調度品の数々に目を向けてみたら、気になるもの、
どっかで目にしたようなものが色々と・・・もっと教養ある目利きの
人がみたらいろんなお宝が(撮影用のファイクにしても)散りばめら
れていて、また楽しいんだろうなぁと思いました。
 

そして、幻想的なハロン湾に浮かぶ島々や、インドシナの大陸や
ゴム園その他の美しいロケーションも、見どころのひとつ。
 
そして、さすがおフランス。台詞の数々も、色恋がらみのものは
特に、洒落ています。冒頭のエリアーヌの回想によるナレーション
の始まりも早速エスプリばりばりです。
 
Q:
世の中には離れられないものがある
男と女 山と平野 人間と神々
インドシナとフランス
:UQ
 
そして、エリアーヌと、カミーユの叔母(婚約者タンの母親)との
会話の数々も。
 
-フランス人の恋は理解できないわ 狂気と激情と苦悩の恋よ

-男を忘れる方法は知っているわね
-ええ  無関心になること
 
四半世紀たっても色あせない、むしろさらに情緒が深まるフレンチ
シックな大河ドラマ、時々また観たくなる映画です。
 
 
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