『社会人大学人見知り学部 卒業見込』 若林正恭 著 | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

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備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。

 

 

そろそろ”ベテラン”の域に達するであろうお笑いコンビ

「オードリー」の「ピンクの男」でない方、若林さんのエッセイ。

雑誌『ダ・ヴィンチ』に連載されていたものに、文庫版用の

書き下ろし100ページ強が追加されています。

長い下積み時期の後、M-1で2位獲得して一躍時の人と

なり日常がガラっと変わった、「社会人2年目」くらいから連載

が開始されており、次々と舞い込む仕事に無我夢中だった

1年目を振り返ったり、当時の若林さんに新鮮に映ったこと、

新しい世界への戸惑い、違和感など”社会と自分”を俯瞰

して綴られるエッセイ。

 

私はオードリーが結構好きです^^。特に若林さん。

最初は春日さんの方は苦手でしたがあるバラエティ番組で、

相方の若林さんが「ヤ」の人たちに誘拐されて、身代金300万

円(当時の春日さんの貯金額)を要求されたらどうする?という

ドッキリを仕掛けるという企画を偶然みたことがあって。

この本にも書かれていますが、M-1フィーバー後のやたらと

春日さんの自宅や生活の様子がネタとなり、春日=お金にケチ

というのが浸透していた頃です。相方の為に虎の子300万を

差し出すのか?という趣旨で、隠しカメラで春日さんに密着

して行動をモニタリングするものでしたが・・・それを見て、また

若林さんや仲間の芸人さん達がトークなどで春日さんの

パーソナリティについて語られるのを聞く機会が増えるうちに、

ちょっと好きになりました^^。

 

本書でも、1本だけ、真正面から相方さんのことを語った章

があります。若林さんの、春日さんへの愛情と尊敬と憧れと

感謝が滲み出ていて、素敵です。いいなぁ、相方って・・・^^。

本書に登場する個人でいうと、「人間関係不得意」というネタ

で計3回、ツチヤタカユキという人が登場します(フルネームが

出てくるのは最初の1回だけであとは「T君」となっていますが)。

オードリーのラジオの大喜利募集コーナーに、毎回30本の

ネタを送り続けた「伝説のハガキ職人」で、若林さんに誘われて

上京し放送作家を目指すけれど、結局辞めて地元へ戻って

しまうのですがとにかくすごいインパクト。お笑いに傾ける

情熱のエネルギー値が半端なく、一般社会では通用しなくて

も、ある種の天才なんだろうなぁと否応なく興味をひかれました。

 

なんと、そのツチヤタカユキさんが『笑いのカイブツ』という本

を来月出版!PCが使えなくて企画書を作るのがしんどいから

放送作家の道を諦めて地元に戻った彼でしたが、その後PCを

習得したのかWebサイトで掲載されていた文章が反響を呼び、

書籍化されることになったようです。思わず予約ポチしちゃいまし

た(笑)。自分にない細胞を保持した人の作品、ちょっと気に

なったもの、何かのきっかけで出会ったものはどんどん試して

みようと思う2017年です。

 

しょっぱなから脱線しかしていませんが・・・面白かったです。

若林さんがテレビで話しているのを見ていても、その場に

応じた言葉の選び方や、早いレスポンス、周囲とのバランスの

取り方が上手い上にちゃんと自分のカラーが出せていて感心

していたのでエッセイも期待できるだろうと思ってはいましたが。

さすが、売れない時期からずーっと漫才のネタを書き続けてきた

だけあって、まとめ方がすごくお上手。ひとつひとつ、きちんと

言葉を選んでいるし、読みやすいように、というのと自分らしさ

の配合が絶妙。それに、ご本人も自覚していますが、常に俯瞰

する習慣が身についているので、自分の悩みもキャラクターも

きちんと冷静的に観察して分析していて、エッセイ連載中にも

新しい気づきや、成長があってホクホクします。

 

そんな風な考え方があるんだ!と新鮮な部分もあれば、あー、

私もあったあった、そういうの!と共感する部分もあり。

自分自身、激しい人見知りだった昔を面はゆく思い出しまし

た(笑)。そういえば、私は自分のことをよくアマノジャクの

ヒネクレモノな傾向があると理解していて、このBlogでも何度か

言及したような気がしますが、この本を読んでいて気が付き

ました。・・・それもすべて、根っこは過剰な自己意識かもね・・・。

子供の頃の引っ込み思案や人見知りが、笑っちゃうほどの

自意識過剰の裏返しだったことは自分でも理解し、あー恥ず

かしい、もったいない子供時代だった!と思っていたのですが、

未だにその後遺症が残っていたのか・・・とハタと気が付き

愕然となりました。キャー恥ずかしーっΣ(・ω・ノ)ノ!。

 

私は今頃気が付いて多少改善されたなぁとやっと思っている

ことを、若林さんはもっとずっと若いうちから、モラトリアムが

長かったにも関わらず気が付けていたんだから、やっぱり

賢い子やなぁ・・・としみじみ感心しました。

エッセイのひとつひとつ、楽しくてニコニコ(時にニヤニヤ)

しながら読ませていただきました。文庫版で追加されたうちの

ひとつ(と思われる)の、最後の「社会人大学卒業論文」は、

非常に清々しかったです。さらに巻末の著者あとがきは仄か

な感動を与えてくれます。

 

私がぼんやり感じたことはあっても上手く言葉や文章に

転化できなかったことを若林さんは沢山上手にこなして

みせてくれました。

その中のひとつ、性格とは形状記憶合金のようなもので

元々の形は変わらない、というのは成程ねー、形状記憶

合金ね!と感心してストンと腑落ちしました。上手いこと

いうなぁ。わかる、わかる。ほんとだ、形状記憶合金だ!

あと、激しく共感した箇所。

 

Q:

悩むって体力がいる。
だから若い時にしかできない。

:UQ

 

まったくねー!(笑)

なんか、年を取って丸くなったなぁとか、大らかになった。

若い頃はなんて小さなことであんなにも悩んでいたのか・・・

とよく思いますが、経験を積んで人間が成長したっていうより

単純に悩むエネルギーを維持する体力がなくなった=衰えた

ってことだったりして^^;。ま、よしんばそうだとしてもよし。

だって十分楽しいですから、毎日♪

 

この本読んだら、なんだか若林さんと飲みに行きたくなります。

当人にとっちゃとんだ迷惑でしょうけれど(苦笑)。

いいお嫁さんが見つかるといいなぁ、などと昭和の親戚のオバ

チャンみたいなことを考えながら一人晩酌で読み終えました(笑)。