ファング一家の奇想天外な秘密 | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

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備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。

 

 

2016年 アメリカ

ジェイソン・ベイトマン 監督

原題: The Family Fang

 

ニコール・キッドマンと、ちょっとアクの強い役をやらせた

らピカ一のベテラン怪優クリストファー・ウォーケンが共演

のコメディ作品、ということで観てみたのですが・・・。

コメ、ディ・・・?うぅーん?笑うポイントのツボがよくわかり

ませんでした^^;。むしろ、ヒューマンドラマとか、家族の

物語とか、子供が親の呪縛から逃れて人間的に自立し

成長する物語とか・・・なのかなぁ・・・????

なんともつかみどころのない、私にはいまひとつよく

わからない不思議な映画でした。

 

姉のアニー・ファング(ニコール・キッドマン)は落ち目で

アルコール依存症気味の女優、弟のバクスター(ジェイソン・

ベイトマン)は小説家だけれども傑作だった1作目の後に

出した本人曰く「意欲作」の2作目は駄作と評され、3冊目

の筆が進まないまま長いスランプ状態にありました。

・・・ん?このバクスター役、妙に色男だしなんだか一人で

いいところ取りの良い役だなぁと思ったら監督本人ですか(笑)。

 

二人の両親、ケイレブ(クリストファー・フォーケン)とカミーユ

(メアリーアン・ブランケット)は前衛的な芸術家で、絵画や

写真、彫刻などの静止のものは芸術とは認めず、芸術とは

ひとつの形にとどまらず常に動くもの、意図せず湧き上がる

もの、との信念に基づき、ゲリラ的に即興劇を繰り広げ、その

場の様子をビデオ撮影して発表していました。

アニーとバクスターも子供A・Bとして役割を与えられ、子供の

頃は面白がって両親の活動に参加していましたが、思春期

の頃のある出来事をきっかけに、それまで感じていなかった

疑念や躊躇を感じるようになり「物事は全て複雑になり」、

もはや両親の言うことを鵜呑みにすることも自ら参加すること

もしたくなくなり、大学入学を口実にまずアニーから家を離れて

両親との交流を経ちます。

 

同じく、両親の支配から逃れて遠ざかりながらも人生にもがいて

いたバクスターですが、悪ふざけで怪我をして救急搬送された

ために両親へ連絡が行ってしまい、助けを求めたアニーと共に

久しぶりに家族再会をします。相変わらず自分たちの芸術活動

を押し進めようとする両親でしたが、子供たちが離れて夫婦

二人になってからは、彼らの芸術性を肯定していた人々からも

精彩を欠くようになったと評されており、彼らは彼らでなんとか

起死回生しようと必死になっていました。

 

奇妙な両親と奇異な子供時代のことをひた隠しにして、関係の

ない世界で自分の世界を築いて普通の人たちの社会で自立

しようとあがいてきたアニーですが、その一方でずっと両親の

存在、特に父親の言葉にがんじがらめになったまま、精神的に

一歩も外の世界に踏み出せていないままだったので、再会して

自分達をまたパフォーマンスに巻き込もうとする両親に精一杯

反抗して抵抗していました。

 

ところが、そんなある日、両親がハイウェイに車と血痕だけを

残して行方不明に。同じ手口で誘拐殺人が連続しており、ケイレブ

とカミーユは4組目の被害者かもしれないと警察から言われても

アニーは「どうせパフォーマンスにすぎない」と信じず、ネタばらし

をしてどこかで隠れている両親を探し出そうとして色々と調べ

始めます。本当に事件に巻き込まれたのかもしれない、と半信

半疑のバクスターも姉と一緒に協力し、少しづつ二人が知らな

かった事実を知っていきながら、ずっと離れて暮らしていた姉弟

の絆を取り戻してゆくのですが・・・。

 

待っていた事実は、ある意味想定内、ある意味では予想外の

衝撃でした。そして、その「事実」をアニーとバクスターは、それ

ぞれどう受け止めて昇華し、答えを出すのか。

 

元々、前衛芸術とかモダンアートといった類のものが苦手と

いうか、よくわからないせいか、劇中でケイレブとカミーユが

行う芸術活動や語る芸術論も、一切共感できず腑落ちせず。

突然明らかになる、母カミーユの絵画の才能と作品も、

これみよがしにチラつかせておきながら何の伏線にもなって

いなかったりで色々と消化不良・・・最初から最後まで「?」だ

らけのままの映画でした・・・。私には思想が難しすぎて理解

できないのか、あるいは単純に”合わない”のかもしれません。

 

でも、好きな人はきっと好きなんだろうなぁ、と思います。

”合う”人にはきっとたまらないツボが沢山散りばめられていて、

ジワジワとうま味が沁み渡ってクセになるような種類の作品

なんじゃないかと想像します。そんな情感溢れた自由なイマジ

ネーションとアーティスト的または哲学の才能を持つ人が少し

羨ましいな、と思いました。この映画を観た他の人たちが

自分と違うどんな感想を持って、どんな解釈をするのか、興味

あります。ご覧になった方いらっしゃったらご一報を(笑)。