『鬼平犯科帳 (11)』 池波正太郎 著 | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

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備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。

 

 

2017年も鬼平スゴロク、継続です^^。

もう11巻・・・なのにマンネリを感じさせず相変わらず

どんどん読めてしまう。間に数冊づつ他の本を入れて

飛び石で読んでいるからというのもあるかもしれませんが、

やっぱりすごいな、池波正太郎先生!と思う次第です。


《目 次》
男色一本饂飩
土蜘蛛の金五郎

泣き味噌屋
密 告

雨隠れの鶴吉

 

タイトルからも想像つくように、1本目「男色一本饂飩」

ではなんと、いつもお調子者の和みキャラ担当の

ウサチュウこと忠吾が、いかつい男色の侍に誘拐され

てしまうという、驚きの展開!身体が大きく、髭も濃くて

ごっつい、おっさん臭さムンムンのお侍さんに、大好きな

一本饂飩を食べているところにススス、と寄りつかれて

オシリをサワサワ・・・ビックリ仰天の忠吾。色白むっちり

の忠吾は、そういう性癖の人間からみたら、そりゃあさぞ

かし美味しそうに見えただろうなぁ・・・と想像つくだけに、

何だか妙にリアリティが(苦笑)。

 

誘拐されたものの、命も身体もすぐに奪われるでもなく、

何を思ってか数日はじっと幽閉されっぱなし。3日役宅へ

戻らぬ忠吾をさすがに平蔵以下、火盗改めの面々も心配

して捜索に掛かるけれども一向に手がかりが見つからず。

平蔵の勘ばたらきで、一本饂飩の店で数日前に忠吾が

来たことがわかり、その時一瞬同席した「妙なお侍」の

存在まで判明するものの、それでも何の決めても得られ

ず難航するばかり。

 

実はこの誘拐犯、名の知れた盗賊で大きな盗み働きの

直前でした。結果的に、忠吾が誘拐されたお陰で、

盗みも未然に防げて、盗賊一味もあらかた拿捕できて、

忠呉も見つかって一件落着。平蔵たちのお陰で、忠吾

も間一髪、男の操を守ることができました。でも、

役宅中にあることないこと噂が充満し・・・すっかり落ち

込み元気をなくす忠吾がさすがに可哀想で気の毒になり

ますが、さすが平蔵、親方は忠吾の無事をちゃんと知って

いたとわかってようやく救われる思いの忠吾でした。

次のエピソードからはまたいつもの調子が戻ります(笑)。

 

ところで年末にどこの局だったか、中村吉右衛門さん主演

の鬼平犯科帳11話をスペシャル放送していたので大喜び

で録画したのですが、その2話目だったかな?見たばかり

のエピソードがこの巻3本目の「穴」でした。おぉ!

ドラマを反芻しながら原作を読む楽しさ。どちらもより面白さ

が際立ちました。今は足を洗った元錠前作りの大物盗賊

のおじいさんが、つい昔の盗人心がざわめいて、腕試し

気分でお隣の蔵から大金を盗んでしまいます。自分の腕が

落ちていないことに満足して後日お金は戻すのですが、

しっかり平蔵に正体を見破られて釘を刺されてしまいます。

今度こそ本当に改心し、後々平蔵の仕事を助けることになります。

 

「泣き味噌屋」は哀しいお話でした・・・。火盗改めの勘定方

の川村弥助は、武芸の腕も乏しく弱虫で気の弱い男だけれ

ども数字や書類仕事には明るく、会計係りとしてはずば抜けて

有能だと平蔵も高く買っている同心。その彼が年若い妻を

めとって、もうラブラブメロメロのあまーい新婚生活にウットリ

の幸せな日々。ところがある日突然、悲劇に見舞われます。

なんと若妻は買い物に出た際にゴロツキどもにさらわれ、集団

レイプの上殺されて捨て置かれるのです。ゆるせんー。

 

妻がそんな目にあって絶望の淵で生きる気力をなくす弥助

ですが、平蔵の取り計らいもあって、死ぬ覚悟で犯人にたち

向かい、見事に敵討ちを果たします。その犯人グループが、

結構いいとこの家のろくでなし息子とその一党だったりして、

それなりの立場にいる親たちが事後、火消しに遁走して

なんとか平蔵にワイロを握らせようとしたり(もちろん、断固

却下)。なんだか・・・有名大学の学生グループやら有力者

の子供とその取り巻きたちやらが、暴力事件や集団レイプ

事件を起こしたりっていうのは現代も時々ニュースになります

が・・・江戸の時代から、そういう魂は受け継がれてきている

のだなぁ・・・と思うとなんだかガッカリしますが、少なくとも

江戸には鬼平が居てくれて、よかったです。

 

「毒」は、封建社会のヒエラルキーのもっとずっと上の方で

暗躍する何かの気配の一端を、たまたま鬼平が目撃し

ある程度の物証と推理を手繰り寄せますが、全ては上の方で

謎のまま処理されてしまいます。江戸を震撼させるほどの

存在感の平蔵でも、とうてい及ばない奥深い世界がどこまで

も広がる、江戸幕府。鬼平はため息と共に、初代将軍家康

の時代の幕府は、江戸城は、どんなものであったろうか

(もっと大らかでシンプルな世界だったはず)と思いを馳せます。

 

最後の「雨隠れの鶴吉」は、後味の小気味よい鬼平らしい

人情味あふれるエピソードで、ほっ^^。

5巻「乞食坊主」で登場した、平蔵と佐馬之介の昔の剣術仲間

録之助が再び登場です。彼らが本所を鳴らしていた若い頃、

近所の茶問屋の妾腹の子供で本妻にいびられていた男の子

が紆余曲折あって、「雨隠れの鶴吉」と名乗る盗賊に。女賊

のお民と夫婦でおつとめの合間の骨休めに、久々に江戸見物

に立ち寄ったところ、録之助や実の父親と再会して、何だかんだ

と流れで父親の家(茶問屋)にしばらく滞留することになります

が、なんとそこに潜入中だった引き込み役の盗賊を発見

します。自分が盗賊だということは知られないまま江戸を出たい

鶴吉とお民。といって、盗みのターゲットにされている実家を

そのまま見捨てることもできず、かといってまさか自分達が

密告するわけにもいかず・・・夫婦二人の機転と決断、録之助

の覚悟、平蔵の采配に胸がすっとなります。

 

さて、次の巻に進むまでの間、今度は何を読もうかな~♪