![]() | ウィニー・ザ・プー (新潮文庫) 497円 Amazon |
可愛いクマのイラストのカバーと、阿川佐和子さんの翻訳
ということで鼻息荒く衝動買いしました(笑)。
私にとってくまのプーさんは、ディズニーアニメのキャラクター
ではなく、岩波書店の、石井桃子さん翻訳の、シェパードさん
が描くプーさんなんです。絵本のプーさんと、パディントンが
私のクマさんトップツーでした。
ディズニーアニメの方はあまり見た記憶がないんですよね。
まったく見てないってことはないと思うのですが。ディスニー
キャラの絵本とかグッズは見慣れてたけれど、アニメーション
で動いているプーさんはあまり記憶に残っていなくて。
なので、物心ついてだいぶたってから、あのおっさん声に衝撃
を受けました(笑)。
実は私は、近年の新訳ブームを残念に思っています。
古い海外文学の名作を久しぶりに読んでみようかな、と思ったら
どれもこれも新訳で出版されていて妙に現代語になってしま
っていて、、、理屈ではわかるのです。もう21世紀になってもう
すぐ20年も過ぎようかという時代。今の若い人たちが受け入れ
やすいように翻訳を直す必要は確かにあるでしょう。でないと
そのうち、専門家以外は読めない古文書のようになってしまい
ますもん。せっかくの名作が若い人たちに読まれなくなるのは
よほどもったいないです。でも、自分で読むのは、やはり、古式
ゆかしいちょっと古臭いけれど端正な日本語で読みたいと思う
のです。新約はいいけど、旧約のものも残しておいて欲しい、
と思ってしまいます。我々古い人間のために。あぁ、そのために
古書店があるのかな・・・。
で、す、が。このウィニー・ザ・プーに関しては新約歓迎!阿川
さんですから、間違いありません。それに石井桃子さんバージョン
も、まだまだ手に入りますし。シェパードさんの挿絵がないのは
ちょっと寂しい気がしましたが、100% ORANGEさんのイラストも
とてもいいですし、文章メインになったおかげである意味、より
いっそう、プーさんの物語が際立って味わい深くなったような
気もします。昔読んだプーさん、細かいところは正直覚えて
ないので、比較してどうこうというひっかかりもないし、あぁそう
だったそうだった、プーさんの冒険の数々が甦りつつ、阿川さん
というフィルターの新鮮味もあってとても楽しめました。
プーさんたちって、こんなにイキイキと活動的で、おっちょこちょい
でおかしくて時々妙に哲学的でしょっとシニカルで詩人だった
んだ、って新しい発見をした気分も味わえました。
阿川さん翻訳で私がウマい!と特にププっとなってしまったところ。
プーが、ウサギの小屋ではちみつ食べ過ぎて入口にお腹がつっか
えて出られなくなってしまったお話でのラビットのセリフ。
「言いたかないけど、僕たちふたりのうちのひとりは確実に
食べ過ぎていたと思うよ。それが僕じゃないってことは明らかだ。」
あと、ゾオォ(象)を捕まえる罠を作って餌においたハチミツのツボ
に舞い戻ったプー、「ハチミツ熱烈歓迎体勢に入りました。」
もぉ、本当におばかなクマちん!
本の帯に記載された、阿川さんによるあとがきからの抜粋。
Q:
ほとんど何の教訓もない。
なのにたまらなく愛おしい。
「バカなクマちん」
私は訳しながら何度呟いたことだろう。
:Q
私も、読みながら何度も「バカなクマちん!」と微笑みました。
新しいプーさん、こんにちは。おかえりなさい。会えて嬉しかった。
最後に蛇足ですが、阿川さんのあとがきにあった、本家石井桃子
さんがプーさんの翻訳本の出版を決心したエピソードが素敵すぎ
たので忘れないよう、記録しておきます。たまたま、友人の家で
『Winnie the Pooh』の原書を読んだ石井さんが、後日病身の別の友人
を見舞ったときに可愛いクマの本を読んだのよ、とその内容を
話したところお友達も気に入り、もうすぐ自分が死んだら三途の川
の側で遊んでいる子供たち(賽の河原の子供たちですよね)のため
の幼稚園を作ろうと思う、でもその時に日本語になっていないと
そのクマのお話をしてあげられないからあなた(石井さん)、翻訳を
してよ、と言われたのがきっかけだそうです。
『指輪物語』も『ピーター・ラビット』も『ハリー・ポッター』も『くまのプー
さん』も『ナルニア国物語』も皆、身近な子供のために愛情込めて
作られたお話で、さらにそれを大切な誰かに伝えたい、と出版し
購入し読み聞かせ、翻訳し、世界中に愛される名作が広がっていった
と思うと、なんだか胸がいっぱいになります。
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