たまたまなのですが、村上隆氏の新書と、村上春樹氏の本を読んで、なんとも対照的な内容でした。

「創造力なき日本 アートの現場で蘇る「覚悟」と「継続」」
村上隆

芸術家は社会のヒエラルキーの中では最下層に位置する存在である、という自覚を持つべきだという。芸術家は一般社会以上の理不尽と向き合わなければならない。

よっぽどの才能があるか、創作活動以外の事に関しては全く思考停止しているくらいの天然な人以外は、アートで生きていくにはとにかく努力して作り続けて行く「継続」が必要で、でもそれだけではダメ、ちゃんと挨拶が出来るとか、信頼されていく為の努力もしなくてはならない・・・

つまりほとんどの芸術家は才能より戦略、覚悟、人間関係がより重要だという。

普通に働く社会人、それも新社会人向けのビジネス本のよう内容。。。当たり前といえば当たり前、自分のやりたいことじゃないと言ってすぐに辞めてしまう人が多いのはアートの世界だけではないですよね?
好きな事を仕事として選んだとしても、好きな事がすぐに出来るわけではないということ。
どんな仕事であれ、共通することなんでしょうね。

なんとも体育会系な感じ。これだけアートビジネスを展開しつつ、教育者としても力を入れ、常に問題提起をしている芸術家って希有な存在のように思いました。本の内容は耳が痛い感じです。



「小澤征爾さんと、音楽について話をする」村上春樹

最初の章で、この本が出来た背景から語る所から興味がそそられました。
たまたま、小澤征爾さんと知り合いに・・・って
普通じゃないでしょ。
もちろん村上春樹さんが普通の人じゃないからなんでしょうけど、仕事と関係がなく知り合って・・・という時点で、なんだか世界が違いすぎますが、2人で音楽について語ったことを村上春樹が自身で録音し、原稿を起こして本にしていったという経緯も有名作家さんらしからぬ感じがしたし、
ただのインタビューというより、小澤征爾さんの思い出話なのですが興味深く、
所々に村上春樹が芸術論的なことにも触れているような内容、でも全く村上隆さんとは違うところで、感動出来るものでした。

村上春樹があまりにも音楽についてマニアックすぎて、熱く語っている演奏のことは素人には全くわかりませんが、それでも面白く読めるのは、村上春樹も小澤征爾もやはり天才的な人だということ。しかもその天才具合は、もともと備わった能力があってもそれ以上にインプット、アウトプットを完全にやりきる行動力が自然に備わっているということ。
のんびりしている普通の人とは違う!!


村上隆がビジネスを語るように、とにかく覚悟をもってやれと若者に訴えるのとはまったく違う方向で、
小澤征爾や村上春樹が全く努力していないで成功しているのではなくて、でもごく普通にすごい仕事をこなしてることがわかる。
例えば村上春樹は朝4時に起きて5時間くらいは毎日書いているとか。
小澤征爾が体調を崩し復帰後の公演はまたしばらくの休養を要するほどに本当に心身を疲労させるような仕事量だったとか・・・。
小澤征爾さんは音楽の仕事に本当に手を抜かない人なのだろうと。

ちなみに耳が良い人でないと良い文章も書けないのだというところがあって、
私、あんまり耳が良くないので、そうなんだ〜とガッカリというか、納得。

家にあるグレン・グールドをちゃんと聞いて、それから内田光子さんの演奏も聞いてみたい・・・と思いました。