異世界転生したら最弱ステータスの無装備の冒険者だった件について -3ページ目

俺は原付で軽自動車にはねられ、異世界に転生した。

転生というが、赤ん坊からのやりなおしではなく、少し若返った程度だ。

見た目はまだ確認していないのでわからないが、あまりにブ男でないことを祈ろう。

こういう転生では超絶イケメンで、超絶強いのがお約束なのだが、

どうやら俺はものすごいハズレを引いてしまったらしい。

ステータス開示で服や身に着けているものをすべて失った俺は、

全裸で近くの集落へ向かっている。

 

集落まであと500mくらいのところまできた。

一本道なので入り口はもう見えているが、

俺の前にはいま変な生き物が立ちふさがっている。

「おまえは…なんだ?」

二本足で歩く、俺の背丈の半分ぐらいのレオパ…ヒョウモントカゲモドキがこちらをじっと見つめていた。

転生する前は爬虫類も飼育していたので扱いは心得ているが、

さすがにこんなに大きいヤツは初めてだ。

「おい、レオパ。俺のペットにしてやるから一緒に来い。コオロギも食わせてやる。」

異世界転生なので俺は調子に乗っていた。言葉が通じると思っていたし、襲ってこないだろうと思っていた。

しかしすぐに後悔することになる。

「おい!やめろ!なんだってんだよ!」

急にレオパが俺の上にのしかかってきた。

襲い掛かってきたのかと思ったが、俺は思い直した。

こんなにかわいい爬虫類が俺を襲うわけがない。

きっとじゃれているのだ。かわいいやつだなあ。

次の瞬間。

レオパが大きな口を開け、俺の方にかじりついた。

よくわからないがそんなに痛くない。

しかし血は出ている。

もしかしてこいつはただの大きいレオパではなく、異世界のモンスターなのでは!?

そう考えているうちに、レオパはもう一度俺にむかってこようとする。

「そっちがその気なら、俺もやってやる!」

しかし周囲に武器になりそうなものはない。

しかもステータス上は俺は装備ができないことになっている。

「どおでもいい!えーい、これでもくらえー!」

俺は目の前のかわいい大きいレオパを殴りつけた。拳で。

「いってえ~!」

俺は、あまり固くないレオパの殴り心地とは裏腹に、拳に受けた衝撃の強さに驚いた。

HPは減っていないようだ。俺の声に少しレオパがひるんでいる。

この隙に一気に畳みかけよう。

「おりゃ!」「どらあー!」「しねえ!」

叫びながら拳を打ち込む。

目の前のレオパは大きい声に怯え、あまり動かない。

俺はなぜ、こいつを無視して集落に直行しなかったのか。

決着がついたのは、俺がレオパを殴り始めてから3時間後だった。

 

「はあ…はあ…」

やっと。終わった…。

俺はまるで、ラスボスを倒した勇者のような思いで草原に倒れていた。

まさかあんな雑魚そうなレオパを倒すのに、こんなに時間がかかるとは思ってもみなかった。

3時間まるまる、一秒に一回ほどのペースでレオパに拳を打ち込み続けた。

拳は擦り切れ、HPはのこり2である。

HPが尽きたらこの世界でもやはり死ぬのだろうか。

色々考えていると、やはり疲れていたのだろうか。

俺は意識を手放していた。

 

目覚めたときには真上にあった太陽が、

少し傾き、辺りを綺麗な赤に彩っていた。