あれはワタシが中学1年生の頃。


何がきっかけだったか覚えていないが,けさゑとけんかになった。


多分,けさゑの作ったご飯をあまり食べないとか,部屋を片づけないとか,手伝いをしないとか,


そういったよくあることが原因だったんじゃないかと思う。




最初は口げんかだったが,どんどんヒートアップしていき,


けさゑが


「ぶっさろうぞ!!(甲州弁でぶん殴るぞ,たたくぞの意)」


と言ってワタシの背中をグーで殴った。


”「殴るぞ」と脅すと同時に殴っているんだから「ぶっさらってやる!(殴ってやる)」が正しいのにチキショウ”と思いながらワタシは殴られた。


当時80歳を過ぎていたとは言え,まだまだ畑仕事現役のばーさんである。


草刈り機をしょって,ぶいぃぃ~んとやっていた超現役である。


それはそれは痛かった。


子ども相手に,しかも孫相手にそんな力で殴るかっていう力で殴った。




ワタシもやりかえした。


グーでけさゑの肩を殴った。


80過ぎの老人相手に,しかも孫がそんな力で殴るかっていう力で殴った。


ひとつワタシが優しかったのは,背中や腕や頭ではなく,「肩」という点だ。


肩こりがひどかったけさゑだから,肩なら強く殴っても少し痛いかもしれないが,少し気持ち良いのではないかと考えたのだ。




殴り返したワタシにさらに腹を立てたけさゑは


「このボコ(甲州弁でガキ)は,ホントあったまにくるなぁ!憎たらしいなぁ!」


と孫に言うとは思えない台詞を吐き,


さらに孫にするとは思えない行動に出た。



けんかは台所で行われていたのだが,裏口の戸を締めて止めておく鍵代わりのつっかえ棒があったのだが,


その棒を手に取りワタシをぶん殴った。


しかも「膝の裏」という普段攻撃されることの少ない,なんとも打たれ弱い部分を,だ。


ワタシはせめても「肩」と優しさをみせたというのに・・・。


もちろん,子ども相手に,しかも孫相手にそんな力で殴るかっていう力で殴った。


棒の太さは,爽健美茶の500のペットボトル程の太さで,ほどよく手になじむ太さである。


長さは1メートル程だったか。


材質は木。堅い堅い,中身のつまった木。


そうだ,木製のバットの一番太い部分が1メートルちょい程と思ってもらえればいい。




ひざの裏はしばらくして真っ青に腫れ上がり,


次の日,学校で制服のスカートからその青というか紫のあざが見え隠れ。


先生にも友だちにも心配されたことは言うまでもない。




けんかが終わって,普段通り仲良く話すようになったときに,


「このあざ,考えらんないよ。」


と言うワタシの膝の裏のあざを見て


「うりが憎たらしいこんするから いけんだ。

カッとして ぶっさらっただ。 

あはは。」


と笑い飛ばしたけさゑだった。