今日は・・・、「午前中にお客さんがくるから、事務所にいてくれ」と云って両親はめいめいに出かけていき、俺は留守番を頼まれた。(つつましくも実家が車屋さんを営んでいるので)家からほんの少し離れた店へ朝から赴き、有線から流れるボサノバをBGMに事務所で、そのうち来るであろう客を、ボーッと待っていた。


お店の方も俺が中学校に上がる頃までは、お店であり住まいでもあって。今では、バァちゃんが一人で二階に住んでいる、客が来るまでこれといってすることもなく「いい天気だなぁ~」と、ぼやいていると上からバァちゃんが降りてきて「バァちゃんも昼頃から出かけるからよろしくね」と云い「これ、すっごくいい本だから読んでみなぁ 短編で読みやすいから、いつ途切れても直ぐ読み返せるよ!いい話がいっぱいあるから読んでみぃ!」と云って手渡された本が”心に残る とっておきの話”(潮文社から出版されている)という本で、自分でも家から稲垣足穂の”一千一秒物語”をもってきていたので、「ん?うん・・・読んでみるよ」と素っ気なく返事をして受け取った。


足穂を読み、時折かかってくる電話に対応し、早くこねぇかなぁと思いつつ過ごしていると、しばらくして、お客さんが来た。話しまとめて、お客さんを帰し、ちょっと”ホッ”したところでプカプカしてると・・・昼時になりバァちゃんの迎えが来て、「じゃっ行って来るから御留守番よろしくね」と出かけてしまい、いよいよ一人ぼっちぃなり改めて本に耽ることに、今度はバァちゃんに渡された方を読み始めることにし、何となくサァーっと読んでみると「んん!はぁ!?えぇ!?あぁ・・・」みたいな感じで、実話ということもあって思わずハマっていった・・・いくつかの話を読み終えて「はっ ふぅ~」と息継ぎをしながら天井に眼をやり、不意に涙が零れ落ちそうになる。事務所の窓越しに空を見上げて拡がる感情を黙認しながら又ひとりで「あ~ぁ、そうだよなぁ・・・」など呟いていると、突如、お客さんがご来店!目を紅くした俺は慌てて本を閉じ!「いらっしゃいませ!こんにちは!」と威勢良く駆け寄っていき、少し不思議そうな表情を浮かべたお客さんは「あっすいません、今、大丈夫ですかぁ?あのぅ外の車見たいんですけど・・・」と云い。すかさず俺は「はい!大丈夫ですよ!どの車ですかぁ?」とにこやかに対応する。


何分か、色々な条件を元に話を進めたあと「じゃぁ、また来ます」といった具合に(なかなか直ぐに商談成立という訳にはいかず)お客さんを見送り、再び事務所に戻る「ふぅ・・」っと息を吐きながら椅子に座り、また本を手に取りゆっくりと読み進む・・・読み始め暫くして、空が紅く染まりだした頃、近所の神社から・・・太鼓と笛の音、子供達がお囃子の練習をしていた。優しいボサノバァの音楽と、ほんのりと響いてくるお囃子の音がなんだかとってもいい感じ、思わず俺は「うぅ~ん・・・・ありがとう・・・。」と誰にということもなく呟く。  しいて云うならば”この瞬間にすべてに”「有難う」まさに、”時よ!とまれ”みたいな感覚になった・・・。






そんな、ポカ~ンとしいると程なくして母が帰ってきて今日のお勤め終了・・・・。





長々と最後まで読んでくれた人・・・目チカチカしたでしょ? ありがとうデス。