米価が下がらない本当の理由──農水省と業界団体、そして「忖度」の構造
相変わらず、米価の高騰が続いています。
2025年4月28日のNHKニュースによれば、米価は前の週に比べて5kgあたり3円上がり、16週連続の値上がりが続いているとのことです。
農水省は、米価高騰を抑えるために備蓄米の放出を決定しましたが、結果として市場価格は一向に下がっていません。
なぜ、こうなってしまったのでしょうか。
コメ価格の高騰に関して、今まで3回にわたってブログを書いてきましたが、4回目の今日は、この問題について深く掘り下げたいと思います。
備蓄米を放出しても、なぜ米価が下がらないのか?
「国が備蓄米を放出すれば、市場にお米が出回り、需給バランスが緩み、価格が下がる──」。これが農水省が描いていた筋書きでした。
しかし、現実は違いました。
NHKの4月28日の報道によると、確かに販売量自体は前年より14.9%増加しているものの、それでも市場全体でみれば「不足感」が解消されていないとのこと。
これはなぜかというと、
- 日本のお米の需給バランスはもともと非常にタイトになっており、ちょっとやそっとの供給増では効果が出にくいこと
- 備蓄米の大半をJAなどの大手団体が落札し、その後市場に十分出回っていないこと
- 卸売業者間での売買解禁により、かえって流通の中間コストが増える可能性が出てきたこと
このような複合的な要因が重なっているからです。
単純に「放出=価格下落」とはならない現実が、ここにあります。
官僚たちは「バカ」なのか?──本当の問題
ここで、多くの方が抱く疑問があります。
「農水省の官僚たちは、需給バランスすらわからないのか?」
答えはNoです。いや、Noであってほしいと思っています。
農水省の官僚たちは、超一流大学を出て、経済学や市場理論もきちんと理解しているエリート集団です。当然、需給バランスを無視して政策を設計するわけがありません。
しかし、問題は別にあります。
それは、官僚たちは理屈を理解しているにもかかわらず、理屈どおりに政策を実行できないということです。
なぜなら、
- JAなどの業界団体の強い影響力
- 政治家(特に与党)との関係
- 官僚組織としての自己保身(将来の天下り先も含む)
これらが複雑に絡み合い、理想的な政策が作れなくなっているのです。
忖度の構造
この問題を一言で表すと、「忖度の構造」に尽きます。
誰かが明確に命令するわけではありません。しかし、官僚たちは空気を読み、
- 業界団体の利益を損なわないように
- 政治家の機嫌を損ねないように
- 自分たちのポジションを守るために
自主的に動いてしまうのです。
これが、かつて流行した「忖度」という言葉の正体です。
そして、この構造のなかでは、どれだけ理屈が正しくても、国民本位の政策は出てきません。
どうすればよいのか?
ひとつの提案として、
- 備蓄米の入札は「最高値落札方式」ではなく「最低価格入札方式」にする
- 落札価格を完全に公開する
- 中間業者の取り分(マージン)にも一定の制約を設ける
があると考えます。
こうした方法を取ることで、透明性を高め、適正な市場価格に近づけることができるはずです。
消費者は、中間業者にも適切な利益が必要なことは理解しています。問題は、その利益が「妥当な範囲かどうか」が見えないことにあります。
最後に
今回の米価高騰問題は、単なる需給バランスの話ではありません。もっと根深い、「日本の農業行政の構造的問題」が浮き彫りになったものだと思います。
私たち消費者一人ひとりが問題意識を持ち、「おかしいことはおかしい」と声を上げ続けることが、少しずつ社会を動かしていくはずです。
これからも、こうした問題について、考え続け、発信していきたいと思います。
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